Report

議会報告:議事録

TOP > 議会報告 > 議事録

190-衆-厚生労働委員会-7号 平成28年03月18日

○大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。
 大臣、お疲れさまでございます。大臣に答弁を求めるのはまだしばらくありますので、息を整えていただければと思います。
 先ほど来お話が出ておりますけれども、我が党の、今は亡き山本孝史先生が、参議院の厚労委員会で自殺対策の推進を求める決議を主導して議決をされ、そして、それを受ける形で自殺対策基本法ができて十年という節目の年を迎えます。本委員会で、きょうしっかりとこの改正案を上げていきたいというふうに思っております。
 そこで、まず自殺対策についてお聞きをしたいというふうに思っています。
 きょう参考人として出席をいただいている清水参考人、これまで十年の歩みの上に、さらに自殺対策を強化、加速させるために、古くなったOSの更新が必要という表現をされていますが、非常にわかりやすい表現だなというふうに思っております。
 民主党政権におきまして、十五年ぶりに自殺者が三万人を下回るという結果を出すことができました。この背景には、清水さんの取り組みというのが非常に大きかったというふうに私は思っております。
 民主党政権では、同じように、例えば貧困対策に関して、湯浅誠さんに内閣府の参与になっていただくということもありました。
 清水さんや湯浅さんのように、現場で問題解決に当たっている社会運動家の皆さんに、政府の中に入っていただいて、実際の政策決定に関与してもらうというのは、私は民主党政権での非常に特徴的なことであったのではないかなというふうに思っております。
 そこで、まず清水参考人にお伺いしたいのは、こういうことをどう評価されているか、そしてまた、実際に政府の中に入って仕事をしてみて感じられたこと、気づいたことというのがあれば御教示をいただきたいというふうに思います。

○清水参考人 主観的な感覚をお話しするよりも、具体的に私が何をしたのかということをお示しした方がいいのではないかと思いまして、本日、資料をお配りいただいています。
 最初のページに「自殺総合対策大綱(見直し後の全体像)」という、パワーポイント、スライドが二ページにわたって印刷されているものになりますけれども、こちらの三枚目、ページ数でいいますと八と書かれているところをごらんいただければと思います。自殺対策百日プランです。
 これは、私が参与に就任してからすぐに作成に取りかからせていただいたものになっています。大臣がトップを務める自殺対策緊急戦略チームの一員として、政務三役、あと、私を含めた参与二人、これがチームのメンバーだったんですが、私がこのたたき台をつくらせていただいて、二〇〇九年のリーマン・ショック後の自殺リスクの増大が懸念される中で、早急に対策を進めるべきということでまとめたのがこの百日プランになっています。
 裏面、ページをめくっていただきますと、九ページ目のところに目次を印刷していただいています。全て印刷するとページ数が多くなりますので、目次のみ印刷していただきました。
 ここには、基本的な方針や具体的な対策、あるいは対策を進めるに当たっての心構えといったものも書かれているわけですが、1「基本的な方針」の2に当たります「三つの基本戦略」、自殺対策を生きる支援として推進するということであったり、あるいは、大きな2の「具体的な対策」の中の、自殺対策強化月間を三月に定めるということ、あるいは、自殺実態に基づいた対策の立案をする、地域のワンストップ総合相談体制のあり方を検討するといったような、つまり、今回の自殺対策基本法の改正につながる理念や戦略、あるいは具体的な施策をこの百日プランとしてまとめることができたというふうに思っています。
 これは、新たに考えてつくったというよりも、現場の活動で常日ごろ感じていたこと、こういうふうにすべきだというふうに思っていたことを素案としてまとめさせていただいて、官僚の方や、あるいは政務の方たちと一緒に煮詰めてつくり上げたのがこの百日プランということになります。
 私がこうした政策づくりにかかわらせていただく中で強く実感したことというのは、今、言うまでもなく社会は多様化していて、そうすると、現場で起きている問題も多様化していく。これまでの制度やこれまでの枠組みではなかなか解決できないような問題も多く起きている。そのときに重要なことは、いかに現場の実態を正確に把握して、その把握した実態に基づいて戦略を立てるか。つまり、現場の把握と政策の立案、これをできる人たちが協力していかなければならない。
 現場に一番近いところで活動しているのは、我々のようなNPOだったりします。ただ、我々には、政策を立案する、そういう力はありません。ですから、現場からはちょっと遠いかもしれませんが、政策を立案するお立場にある政府や国会と、現場に一番近いところにいる民間がしっかりと協力をして、オール・ジャパンで本当に取り組んでいかないと、今の日本のさまざまな社会問題の解決には到底、解決に導くことはできないというふうに思っていますので、そうしたことの重要性を非常に強く実感したところです。

○大西(健)委員 ありがとうございます。
 今まで、専門家の御意見というのは、会議の場に出席をしていただいて意見を聞くだけみたいな話だったんですけれども、より実際に政府の中に入っていただいて、政策立案の実務者である役人の皆さんと、現場で活動してきている皆さんがそうやって連携をしていくということは、私は、非常に今後ますます必要になってくるのではないかなというふうに思っております。
 今回の法改正、さまざまな特徴がありますが、一つは、地域レベルでの実践的な取り組み、これを強化していくということで、市町村にそれぞれ自殺対策計画をつくるように、そしてまた、その財政的な裏づけもするということであります。
 当然のことながら、自殺をめぐる状況というのは、地域それぞれ事情が異なるというふうに思います。
 例えば、私の地元というのはトヨタ系のグループ企業が集積をする地域でありますけれども、例えば製造業のライン業務、これは非常に、トイレに行くにも手を挙げて行かなきゃいけない、あるいは、もう本当にトヨタのラインのスピードというのは速くて、応援で行った人なんというのは、一日働くと、駐車場に行ったら、車の中で休んでからじゃないと車を運転できない、それぐらいげっそりしてしまうというような話もあります。あるいは、昼夜逆転の勤務、夜勤がありますので、これも非常にライフスタイルが乱れるということで、メンタル不調を訴えるという人も非常に多い地域であります。
 そういう意味では、自殺防止のためには、こういうところに特化した取り組みというのは私の地元では非常に有効ではないかなというふうに思います。
 地域の事情に応じたきめ細やかな対策の重要性について、改めて、ほかの事例も含めて御教示をいただければというふうに思います。

○清水参考人 地域の実情に応じたきめ細やかな対策の重要性というのは、これは強調し過ぎることがないというふうに思います。
 先ほどの、お示しした資料の二枚目に、職業別に見る地域の自殺特性並びに年代別に見る地域の自殺特性という資料を添付させていただきました。これは、内閣府が警察の自殺統計を使って毎月公表している市区町村ごとの自殺データを、私たちが集計してつくったグラフになっているわけですが、見ていただくとわかるとおり、地域によってかなり特徴が異なっています。
 例えば、職業別に見る地域の自殺特性の右上、まさに愛知県の豊田市ですけれども、ここの特徴は、被雇用者、つまり勤め人の自殺が多いということですね。円グラフが四つ並んでいるスライドが縦に並んでいるものになりますけれども。あるいは、京都市左京区で見てみますと、ここの特徴は、学生、生徒等の自殺がほかの地域と比べて非常に多い。あるいは、年代別に見たときも、東京都の新宿区でいいますと、二十代、三十代の自殺が全体の約四割を占めている。あるいは、秋田県の由利本荘市にいきますと、逆に七十代以上が四割を占めるといったように、地域によって、年代も職業も、こうしたかなりばらつきがありますので、その特徴をしっかり踏まえて施策を打っていく必要がある。
 その手前のページ、スライド番号でいうと三番となっているところに、自殺の危機経路事例、これも載せています。
 実は、職業や立場によって、抱え込みがちな問題の組み合わせというのも大きく異なっているということがわかっています。ですから、失業者の自殺が多い地域であれば、失業者が抱え込みがちな問題の組み合わせに応じて関係機関が連携を図っていく、あるいは、労働者の自殺が多い地域においては、労働者が抱え込みがちな問題の組み合わせに応じる形で関係機関がやはり連携を図っていくといったような、地域の実情に応じて関係機関が連携をしていく、そういうふうなことをしないと、闇夜に矢を放つような対策になってしまうので、ターゲットをしっかり絞る、そこに集中的に資源を投下し、効率的、効果的に対策を全国で推し進めていくということが重要だと思います。

○大西(健)委員 ありがとうございます。
 今の説明、非常にわかりやすかったと思います。地域によって、年代も職業も非常に違いがあるということでありますから、ターゲットを絞った対策をこれからも講じていく必要があるというふうに思います。
 また、こういうデータが出るようになったのも、この自殺対策基本法ができた、その成果だというふうに思います。ぜひ、これからも、この自殺対策基本法、きょうのこの委員会でしっかり議論して、法改正をして、さらに前に進めていただきたいというふうに思っています。ありがとうございます。
 次に移りたいというふうに思います。
 保育の問題ですけれども、実は私は保育も全く同じじゃないかというふうに思っています。というのは、保育でいうと、フローレンスの駒崎さんみたいな、やはり学者、研究者ではなくて現場で問題解決に当たっている専門家の方がいろいろな政策提言をされています。また、保育をめぐる事情、これも地域によって全然違うんです。
 皆さんのお手元に記事をお配りしていますけれども、右側の新聞記事は、実は、私の地元の刈谷というところで、二〇〇七年から、デンソー、豊田自動織機、トヨタ車体、ジェイテクト、トヨタ紡織の五社が共同出資をして企業内託児所というのを運営しています。
 先ほども言いましたけれども、私の地元はトヨタ関係の自動車産業の企業が集積しておりますので、実は、私の地元はトヨタカレンダーで動いているんです。トヨタカレンダーというのは何かと申しますと、国民の祝日でもトヨタが稼働日だったら町は動いているんです。休みじゃないんです。ですから、そういうところに、保育園もしっかりトヨタカレンダーに対応してくれないとこれは困ってしまうということであります。
 こういう企業内託児所、二〇〇七年からこういう取り組みをやっているんですけれども、こういう託児所だとトヨタカレンダーにも対応していますし、また稼働時間、先ほども言いましたけれども、夜勤があったりとか、そういう時間にも対応している。あるいは、通勤経路や自宅周辺など、都合に合わせて、幾つか託児所があるんですけれども、どこに預けてもよい。あるいは、何かあったとき、社内にあるので、熱が出たとかそういうときにもすぐに迎えに行ける。いろいろ利点が挙げられるというふうに思います。
 左側の記事、これは最近の記事ですけれども、最近でも愛知県では、こういった働く女性の人材確保あるいは離職防止のために、企業内の保育施設を設ける動きが活発にあります。
 もう一つ言えるのは、私の地元というのはやはり車社会で、マイカー通勤の人が多いです。マイカー通勤だと、子供を預ける手間というか子供を預ける負担というのが、企業内保育所だと送迎しなくていいですから、非常に楽にできる。ただ、この点も、逆に、都会だと電車通勤ですから、満員電車に子供を連れてなかなか通勤を一緒にできないということですから、むしろ会社にある託児所よりも自宅に近い託児所の方のニーズが高い。
 つまり、繰り返しになりますけれども、やはりこれは地域によって保育のニーズそのものも私は大きく異なっているというふうに思いますので、保育においても、きめ細やかな、地域の実情に応じた対策が必要だというふうに思っております。
 特に、次のページに資料としてつけておきましたけれども、内閣委員会に今、法案がかかっているということでありますけれども、このたび、政府としても、事業所内の保育施設を有効活用し、それを支援していこうということで、平成二十八年度予算の中にも補助金の予算が計上されています。
 このような取り組みを強力に推し進めていただいて、その企業はもちろんですけれども、関連の下請の中小企業で働いている皆さんも、あるいは地域にもその定員の一部を開放していただくと、これは非常に喜ばれるし、私の地元では効果が非常に高いのではないかというふうに思いますので、ぜひこういう取り組みを厚労省としても強力に推し進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 待機児童解消加速化プランで、今後、女性の就業がさらに進むことを念頭に、五十万人に加速をして上積みしようということでありますけれども、その実現に当たって、保育所等の施設整備費の上積み等のほか、企業における多様な働き方に対応しやすい事業所内保育等の企業主導型保育サービスというのを今回創設いたしたわけでございます。
 もちろん、今まで企業内の保育所は、今先生御指摘のようにあるわけでありますけれども、今回、それを改めて定義し直して創設をして、最大五万人の受け皿を整備するということで進めさせていただこうと思っております。
 この企業主導型保育事業につきましては、設置する企業等におけるさまざまな就労形態がございますので、それに対応して、延長保育とかあるいは休日保育など、仕事に合った多様な保育を必要に応じて実施しやすい仕組みとしたいと考えておりまして、また、複数企業の共同利用、今トヨタの例がございましたけれども、これも共同設置をしているというふうに理解しておりますが、多くの企業が利用しやすい形で実施を可能にしたいというふうに考えております。
 多くの企業に、今回提案をしている事業を積極的に御活用をいただいて、保育の受け皿拡大を図れるように、迅速かつ適切な事業運営、そして周知、広報に努めてまいりたいと思っております。

○大西(健)委員 今回、新たに設置する場合には施設整備にも補助金が出るということでありますが、既に二〇〇七年からやっているように、企業の持ち出しでやっているところについては、ぜひ既存のものについても運営費の補助をしっかりやっていただきたいというふうに思いますし、先ほども言いましたけれども、働く女性の人材確保それから離職防止のためにこれは非常に効果がある。本当に、日本の物づくり、産業を守っていくためにも必要なことだと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいというふうに思います。
 次に、また違う話題ですけれども、資料の三ページの記事をごらんいただきたいんです。
 障害者虐待防止法、これは議員立法でありますけれども、第十六条に、虐待を発見した場合には通報義務というのが定められています。ところが、これに従って通報した職員が施設側に訴えられるというケースが最近起きております。同じく十六条の四項では、通報した施設職員の不利益取り扱いの禁止というのが書かれているんですけれども、これは罰則はありません。こういうことが今鹿児島と埼玉で二例あるということでありますけれども、こういうことが続いていくと、やはり職員が萎縮して内部通報が行われなくなってしまうんじゃないか。
 特に、虐待に遭う人というのは、多くは知的障害の方です。重度の障害の場合には、自分が虐待に遭っているという認識さえなかなか持ちにくい。また、軽度であっても、自分が受けた虐待に対してうまく表現ができないということでありますので、これは内部通報が萎縮してしまうと、こうした虐待が闇の中に葬られていくということになるのではないかというふうに思います。
 何か、厚労省の方も、対応マニュアルを月内に改定して、自治体や運営事業者にそれを通知するということを考えておられるというふうに聞いています。また、報道によると、退職してしまっている場合には、そうやってもう退職している職員の方がいろいろと話しやすいだろうということなので、そういう元職員の聞き取りなんかもしっかりやるようにということで、施設側にそういう通知もするようなことも検討しているというふうに聞いております。
 これはまだ今のところは埼玉と鹿児島ということですけれども、こういうのが広がると、先ほど申し上げましたように、内部通報というのが萎縮する可能性があると思いますので、何らかの対応をとる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 今先生御指摘のように、埼玉あるいは鹿児島などで、障害福祉施設内の虐待について地方自治体に通報した職員に対して損害賠償を請求される事案が起きていることは私どもも承知をしております。
 今御説明いただいたように、障害者虐待防止法におきまして、虐待を発見した場合には通報義務、それから、通報したことを理由に不利益な取り扱いの禁止というのを定めているわけであります。
 この規定どおり通報した者が、通報したことを理由に損害賠償を請求されるというのは、法の趣旨から見てもこれには沿わないというふうに考えておりまして、厚労省としては、地方自治体向けの全国会議、それから障害者福祉施設における虐待防止マニュアルの改正を、今御指摘いただきましたが、行おうということで、それを通じて、虐待を発見した施設の職員が通報をためらうことがないようにしないといけない。
 そしてまた、責任者の方もこの重要性を改めて認識してもらうということが大事であろうと思っておりますので、障害者虐待防止法の趣旨の周知徹底をこうした形で図り、虐待防止に向けた取り組みをしっかりと進めてまいりたいと思っているところでございます。

○大西(健)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 きょうは一般質疑ですので、いろいろなトピックスについて質問しますけれども、次に、資料の四ページをごらんいただきたいんです。
 これは、私の地元の病院のロビーに張ってある張り紙を秘書に写真で撮ってきてもらったんですけれども、表題が、「交通事故で、接骨院等にもかかっている(かかられる予定の)患者さんへ」ということで、当院では、交通事故診療において、同時に接骨院等に行くことは認めていませんというふうに書かれていますね。それから、2の方ですけれども、事故後から接骨院等のみにかかっている場合や、医療機関受診後に長期間にわたって接骨院等にかかっている場合等は、病状の経過が不明となり云々ですけれども、最後のところで、「当院では交通事故における自賠責様式診断書や後遺障害診断書の作成をお断りする場合があります。」という張り紙なんですけれども、ちょっとこれはいささかやり過ぎじゃないのかなというふうに思っています。
 後でいろいろなトラブルになることがあるので、最初の段階でちゃんと医師の所見を受けてくださいねというぐらいなら、私は百歩譲ってそれはありかなというふうに思いますけれども、さすがにこれは、事実上、もう交通事故では接骨院にかかっちゃいけない、かかっちゃったら、その場合には自賠責保険はおりませんよ、あるいは使わせませんよと言うに等しい、そういう内容だというふうに私は思います。
 私は別に柔整師や接骨院の肩を持つということではなくて、交通事故被害者の方が柔整の治療、施術を受けるというその権利、機会を奪うような張り紙であって、これはさすがにちょっと行き過ぎじゃないかというふうに思いますが、大臣、これをごらんになられた感想と、やはりこれはちゃんと指導してもらわなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 御案内のように、自賠責保険というのは私どもの所管ではないわけであります。そういう意味では、現時点において問題の有無についてお答えをすることは、この自賠責関連では差し控えたいところでございますけれども、医療機関がどのような趣旨で御指摘の掲示を行っているかなどの詳細が確認をできた場合には、自賠責保険に関係する国土交通省、そしてまた金融庁とも協力しながら適切に対応をしてまいりたいというふうに考えております。

○大西(健)委員 自賠責保険そのものは、保険ですから金融庁であったりとか、あるいは国交省の話でありますが、これは療養費の問題ですから、柔整を所管する厚労省としても、これはさすがに問題じゃないかという意識はしっかり持っていただきたいというふうに思います。
 私の知り合いの柔整師さんに聞くと、最近は、損害保険会社が、柔整についてはもう自賠責を払わないみたいなことを言ってくるケースも結構ふえているようです。
 また、逆に、自賠責は、限度額を超えなければ、これは保険会社の腹も痛みませんし、患者を抱き込んで、悪徳な柔整師が不正請求を働くということも横行しているのも事実です。これはしっかり業界の方にも自浄作用を働かせていただかなければならないと私は思います。
 この点で、平成二十六年の四月九日の本委員会で、我が党の長妻委員が、自賠責の問題は、今、大臣が言われたように、厚労省と国交省と金融庁にまたがっている問題だから、そのときは自賠責保険の不正請求の観点からですけれども、その三省庁がしっかり連携して、一緒に三省庁の検討委員会を立ち上げるべきじゃないかということを質問で指摘しています。
 当時の田村大臣が、いらっしゃいますけれども、その関連三省庁の連携の形については検討したいとおっしゃっているんですが、その後、その検討は進んでいるんでしょうか。どうなっているのか教えてください。

○太田大臣政務官 お答え申し上げます。
 御指摘の二十六年四月九日の答弁を受けまして、厚生労働省といたしましては、平成二十六年度から、四半期ごとに、交通事故専門などの不適切な柔道整復師の広告に対する指導件数、これを都道府県経由で把握をいたしております。そしてまた、あわせて、適切な指導と報告を都道府県に対してお願いしております。
 また、日本損害保険協会が開催しております保険金不正請求防止対策勉強会にも、先ほど触れられました金融庁、国土交通省等とともにオブザーバーとして参加をいたしておりまして、情報共有と連携をさせていただいております。
 厚生労働省といたしましては、整復師さんたちの施術が適切な形で受けられるようにということで、こうした取り組みを通じながら、関係団体とともに、啓発指導、養成段階での倫理観の醸成など、柔道整復師業界の健全な発展に取り組んでまいりたいと思っております。

○大西(健)委員 当然、不正はしっかり取り締まっていただかなきゃいけないんですが、これは業界の皆さんも問題視を、自覚をしていて、業界の皆さんも、ぜひ三省庁の検討委員会をつくってくれと言っておられます。そこに、何らかの形で、柔整師、当事者の皆さんの意見も入るような形をつくってくれとおっしゃっていますので、先ほどもお話がありましたが、これは国土交通省が主管ということでありますので、きょうは政務官に来ていただいていますので、ぜひ、国土交通省の立場でも、この療養費の自賠責における使用の問題、三省庁でしっかり検討委員会のような形を、長妻委員が言われたように、立ち上げていただきたいと思いますが、その方向性について御答弁いただければと思います。

○宮内大臣政務官 お答えをいたします。
 自賠責保険は、自動車事故被害者の保護を図るために、自動車の所有者から義務的に徴収した保険料を財源としているということを踏まえますと、不正請求の防止等の徹底を図りまして、適正な支払いの確保を図ることが重要だと考えております。
 御指摘の検討会の設置につきましては、一般社団法人日本損害保険協会主催の勉強会に、金融庁、厚生労働省とともに参加をいたしまして、自賠責保険の不正請求防止対策に関し情報共有を図るとともに、啓発活動の推進、調査体制の整備等につきまして検討を行ってきたところでございます。
 今後も、金融庁、厚生労働省等や関係機関との連携のもと、自賠責保険の適正な支払いの確保に努めてまいりたいと思っております。

○大西(健)委員 検討委員会の立ち上げというところまでは言っていただけないんですけれども、連携は強化していると。
 ただ、それは不正請求の面からだけですので、さっき言ったように、逆に、損害保険会社が、療養費を払わないぞ、柔整を使ったものは払わないぞみたいなこともあるわけですので、これは当事者に自浄作用を働かせていただくことが私は必要だと思いますので、柔整師にもやはりそこに何らかの関与をできるような形というのをつくっていただきたいなというふうに私は要請をしておきたいと思います。
 政務官、ありがとうございました。
 残りの時間、労働移動支援助成金と、それを利用した退職強要の問題について質問していきたいというふうに思うんですが、私が最初に予算委員会で取り上げて以降、正直、私、個人的にはよくここまで来たなというふうに思っています。山井先生は満足されておりませんけれども、私は、まあまあ、それなりの評価をしています。ただ、何で初めから、これが言えるんだったらもっと初めからこう答弁すればいいじゃないかと。何回も何回もこれを取り上げて、やっとここまで来たわけです。これはちょっと不信感もあります。
 資料の五ページ目をごらんいただきたいんです。これも、きのうになってやっと我が党の部門会議に提出をされてきましたけれども、線を引いたところですけれども、人材会社に出向し、自分の再就職先を探すことや、自分の出向先を探すことといった業務命令は不適切である旨がわかるような、そういう記載をしたパンフの改定や通知というのを行っていきたいということが厚労省の方から示されました。
 これはもう最初のころからずっと言ってきたことですけれども、再就職先を探すだけじゃなくて、出向先を探すのもだめですよということが示されたということは、私はそれなりの前進だというふうに思っているんです。
 そこで、前回の質問でも取り上げた、次のページの、パソナの子会社、日本雇用創出機構が提供している人材ブリッジバンクというサービス。
 この会社のということではなくて、一般論でお聞きをしたいんですが、一定期間、企業から在職出向というのを受け入れて、そして再就職先や出向先を探させるというのがこういうサービスなんですけれども、こういうサービスは、今のように、出向先を探すのも再就職先を探すのもだめよということになると、こういうサービスそのものがもう認められないということになるというふうに思いますけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。

○塩崎国務大臣 今お示しをいただいた、部門会議に提出させていただいた、今のブリッジバンクの一枚前のところにもございますけれども、これは、まず、通称人材ブリッジバンクと言うんでしょうか、この日本雇用創出機構、これについての個別の事案につきましてはちょっとお答えを差し控えないといけないと思いますけれども、一般論として申し上げると、労働者が個別に同意した上で在籍出向をして転職に向けた支援を受けるというならば、それは同意の上であれば問題はないと思いますけれども、他方で、やはり、労働者保護が我々の使命であれば、これは働く方々が安心して働けるような環境整備という観点が大事なので、そういう意味では、一枚前にお示しをしているように、人事権を濫用して、出向させてみずからの再就職を探すよう命ずるということは不適切だということを、私たちも明確にしなければならないというふうに思います。

○大西(健)委員 せっかくここまで言ったわけですから、本当に、個別のことについてはコメントできないというのはわかりますが、しかし、やはり、この間も言いましたけれども、あたかも公的機関かのような名前で、日本雇用創出機構なんて名前でこんなサービスが堂々と行われているということを今後も厚労省が放置するならば、これは言っておられることとやっておられることが違うんじゃないかということになりますので、私は、ここはしっかりそういうことは言っていただきたいなというふうに思っております。
 それから、資料の次のページですけれども、これは、前回も示されている、十二月二十二日に厚労省が王子を呼んで啓発指導したときの概要メモということなんです。ここでは、3の(1)の一番下のところで、「法令を遵守し、法的に問題のない手続きを踏んだ上で実施していると認識。」という先方の認識が示されているわけですけれども、王子側がテンプに報告するためにつくったメモを私は独自に入手していますけれども、そこには何と書かれているかというと、違法性はないことを御理解いただけたという感触ですと書かれているんですね。
 ですから、これは問題ないと言ったんじゃないのかという話をしたら、先日、岡本委員とのやりとりの中で、王子については二月二十六日にもう一回呼んで厳しく指導したんだという話でした。では、そのときの概要メモを出してくださいということでお願いしたところ、けさの理事会にそれが出てきたということで、先ほど私もいただきました。
 これを見ると、厚労省側の対応として、退職強要が疑われる事案に対する通常の啓発指導に比べ厳しい啓発指導を実施した、国会でも大きく取り上げられており社会問題になっていることを詳しく教示し、会社トップまでしっかり状況を伝えることというようなことを、厳しい指導をしましたよということは書いてあります。
 ただ、私、一つこの中で気になるのは、王子側の説明部分で何と書いてあるかというと、勧奨の過程で新聞が報道したケース、括弧、テンプでの仕事探しが存在するのは事実、これは認めているんです。ただし、テンプへの出向ではなく業務命令による配置転換で行っているものと。つまり、出向ではなくて、人事総務部付にして、そして、実際にはテンプスタッフキャリアコンサルティングに行って仕事を探すというのが実際の業務なんですね。
 だから、そうなると、さっきの、二枚戻っていただいて、さっきやっと出てきた、出向もだめよ、出向させて再就職先を探すこともだめよ、出向させて出向先を探すこともだめよですけれども、これは出向させてということなんです。王子が言っているのは、出向させていません、人事総務部付のままですと。でも、実際には、テンプスタッフキャリアコンサルティングに行って仕事を探させる。
 そうすると、このせっかく出していただいた、出向させて仕事を探させる、出向させて出向先を探させる、これはだめですよと言うけれども、出向させていませんと言うと、これは入らないことになっちゃうんじゃないかと思うんですけれども、そういうことにならないんでしょうか。
 やはり、この間からこの委員会で、例えば井坂委員や初鹿委員も言っていますけれども、そもそも、自分の仕事を探してこいという業務命令自体が労働契約法の趣旨に照らしておかしいということであれば、これは、出向であろうが人事総務部付であろうが、自分の仕事を探してこいなんというのはおかしいので、これもちゃんと含むような形での通知や啓発指導というのを行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 これは何度か御答弁申し上げたとおりでございまして、それは、出向先を探すとか出向して自分の再就職先を探せとか、そんなことも含めて、いずれにしても、人事権を濫用してそのようなことを指示するということは不適切であるということを申し上げてきておりますので、再就職をみずから探せということを人事権を濫用してやるということはやはり適切ではないということは、変わらない私たちの考え方でございます。

○大西(健)委員 私も、だから、人事総務部付であろうが出向させていようが、やはり、自分の仕事を探せとか出向先を探してこいというのは、これは人事権の濫用に当たる可能性が高いというふうに思いますので、こういうところが、要は、抜け穴にならないような形にしっかり見ていただきたいなというふうに思います。そのことは強く要請しておきたいと思います。
 それから、そもそも、私はやはり、この十二月二十二日の王子の啓発指導とか、あと、次のページにつけてある二十四日のテンプを呼んだときの啓発指導とか、この概要を見ていて思うのは、それは、業者を呼んで、こういう話があるんだけれども、あなたたち悪いことしませんでしたかと言ったら、いや、私たちはちゃんとやっていますと言うに決まっていますよ。それで、ああ、そうですか、でも、パンフを見せて、こういうことをやると違法になる可能性があるから気をつけてくださいねと言ったら、はい、わかりましたと言うに決まっているんです。だから、こういう啓発指導をやっていても私は意味がないというふうに思います。
 今回の場合は、これだけ話題になって国会でも取り上げられたから、アンケート調査をしようとか労働者にヒアリングをしようとかいう話になりましたが、全部というとなかなか大変だと思いますし、実際にはなかなかできないと思いますが、やはり、今回はもう十二月末の時点で山井委員を通じてこういう話が入っているわけです。そのときに、一方当事者である企業とか人材会社の話だけ聞いて、ああ、問題はありませんね、ああ、わかりましたで済ますんじゃなくて、その時点でちゃんと労働者側の話を聞くべきだ。
 そうでないと、これは、啓発指導、しっかりやりますと言っても、こんな啓発指導をやっても私は意味がないというふうに思いますので、労働者の話、これをしっかり、できるだけ、全部とは言いませんが、問題のあるケースでは聞くということをこれからはしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 委員おっしゃいますように、今回の件、啓発活動の指導、これがとても大切だというふうに心得ております。
 ということで、啓発活動の実施に当たっては、働く側の方から御相談があれば当然その声を踏まえて対応していきたい、御相談が寄せられた場合は適切に対応するということをさせていただいておりますが、これだけでは、委員会の中の御答弁の中でも不十分という声も十分いただきまして、社会的影響が大きくて特段の対応が必要と認められるような案件につきましては、特に今回のような案件でございますけれども、働く方の個人に対する状況確認等を行うことについても今後検討していきたい、このように考えております。

○大西(健)委員 これも一歩前進の答弁だというふうに思います。
 時間がないので、次の資料、九ページ目ですけれども、これも我が党の部門会議に出てきた資料ですけれども、成熟産業から成長産業へと言えるのかということについて、下にあるような、この間の委員会でも話題になった、どういう産業からどういう産業に移っているのかということについてですけれども、回答の部分で、成熟産業や成長産業については、単純に産業分類からだけでは判断がつきにくいというようなことが書かれています。それから、課長の説明でも、何が成長産業か何が成熟産業かというのは一概には言えないみたいな説明なんですけれども、そんなことを言ったら、私は元も子もないと思いますよ。
 だって、これは成熟産業から成長産業への労働移動を促すという政策であるにもかかわらず、そんなことを言っちゃったら、政策目的がしっかり達成できているかどうかの検証のしようがないじゃないですか。
 このことは、次のページですけれども、実は、これは二十六年度にこの予算が拡充をされたときの委員会等でも既に指摘が行われているんです。
 右側の、我が党の石橋委員の厚労委員会での質問ですけれども、この時点では、実は、雇用形態とか産業別の内訳等再就職の内容が一切把握されていない、それに対して、石橋委員が、政策効果がわからないままに巨額の予算を積み増すのか、おかしいじゃないかということを言っているんです。
 こういう指摘があって産業別の内訳はとるようにしたんですけれども、今もって結局、何が成熟産業で何が成長産業かもわからないので政策効果が検証できないという状態にある、これでいいんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 今お話ございましたように、二十五年度に閣議決定されました日本再興戦略に基づいてこのスキームは拡充をされたわけでございますけれども、今御指摘の、成熟産業から成長産業への失業なき労働移動という達成について、産業別にちゃんとした把握をしないで、成果を見ないでやるのはおかしいじゃないかということを、既に二十六年三月に石橋議員が指摘しているという点についてお話をいただきました。
 前回も少し御説明を申し上げましたけれども、今回、今お配りもいただいておりますけれども、移動元企業の業種は約九割がもともと製造業、移動先が約六割が製造業ということで、かなり製造業のウエートは下がっているわけでありまして、移動先について、例えば、医療、福祉を含むサービス業が約二割、卸、小売が約一割となって、移動の前後で変わっているということでございます。
 経済のサービス化というものが行われているわけでございますから、こういう形になるのはごく自然なことだろうと思いますが、しかし、私が前回申し上げたように、これは産業として全部成熟でだめだということではないわけであって、これは企業単位で見るべきものであるわけでございます。
 ですから、衰退産業から成長産業へというだけではなくて、成熟企業から成長企業へということも十分、例えばこの間申し上げたように、電機産業にしてもそうでしょうし、あらゆる業界でそういうことがあり得るので、大事なことは、労働移動で、失業の期間がない形で労働移動ができるということが大事で、我々としては、その際に、できれば付加価値の高い、競争力のある、収益力も生産性も高い、したがって賃金をより多く払ってもやっていけるというところをこれからどんどんふやしていかなきゃいけないと政策的にも誘導しているわけでありますから、そういうところに引っ張っていきたいと思っているわけであります。広く言えばそういうことだと思っております。
 ただ、そうはいいながら、政策のツールとして助成金を使うならば、政策評価が大事だということはそのとおりで、この間、岡本議員に対しても私は率直に認めたところでございまして、移動前後、どういう形で移っていったのか、それは、単にばくっと産業というよりは、企業としてもどうなのかということは検討して、何を応援するかということをもっと的確に、ピンポイントでわかるようにもしなきゃいけないのかなということで、不断の見直しをしてまいりたいと思っております。

○大西(健)委員 時間ですので終わりますけれども、ちゃんと政策評価をできるようにしてください。
 それから、もう一度最後に同じ会議録を見ていただきたいんですけれども、右上のところに、共産党の高橋委員がこう言っているんです。大企業にも対象を拡大しただけじゃなくて、委託しただけで十万円、これでは、幾ら何でも派遣会社をただもうけさせるだけになっちゃいませんか、大臣と言っているんですよ。あるいは、左側の会議録、これは同じく石橋委員ですけれども、まさに、在職中から転職支援に労働移動支援助成金を活用するという規制改革会議での意見に関して、「これはまさか、さらに普通の正社員まで人材ビジネス会社に預け、どんどん離職、転職させようみたいな、これまさに本当にリストラ支援金みたいなことになったら大変なことだと思いますが、」と指摘しているんですよ。この指摘のとおりに実際なっている。
 つまり、私は、やはり平成二十六年度の拡充が失敗だったということを認めるべきだということを重ねて申し上げて、私の質問を終わります。

○渡辺委員長 次に、高橋千鶴子君。

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 本日は、一般質疑ではありますけれども、自殺対策基本法十年目の改正を目指し、参考人としてNPO法人ライフリンクの清水康之さんに出席いただいております。ありがとうございます。
 先ほど来の答弁を聞いていても、大変勉強になりました。後ほど私からも質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まず、内閣府に伺います。
 昨年九月四日成立の内閣官房・内閣府見直し法に基づき、自殺対策は内閣府から厚労省に移管されました。関係施策は確かに厚労省が一番多いと思うわけであります。とはいえ、各省庁を束ね、機動的な対応が求められると思いますけれども、どういう権限が厚労省にあるのか、伺いたいと思います。

○安田政府参考人 お答え申し上げます。
 内閣府は、現在、内閣府設置法及び自殺対策基本法に基づき、自殺対策に係る関係省庁との調整、総合的な自殺対策の推進等の業務を担っております。
 具体的には、自殺総合対策大綱の策定及び推進に当たっての関係省庁との調整、自殺総合対策会議の庶務、自殺対策白書の作成、自殺予防週間及び自殺対策強化月間における啓発活動の実施等の業務を行ってきたところでございます。
 これらの内閣府において行ってまいりました業務につきましては、本年四月一日の業務移管後、いずれも厚生労働省において実施されることになると承知しております。

○高橋(千)委員 もうちょっと伺いますけれども、とはいえ、これまでは内閣府が、例えば災害対策などでも、関係省庁との連携といいますか、一定束ねる役割があったと思うんですね。それが、厚労省に移っても同じだということでよろしいでしょうか。

○安田政府参考人 そのように承知しております。
 自殺対策に係る総合調整の機能が厚生労働省に移るというふうに承知をしております。

○高橋(千)委員 この法案、私自身は所管しておりませんけれども、説明を受けたときにそういうことを聞きました。本当にそういうふうになるのかなというのが正直ちょっと不安だったものですから、改めて確認をさせていただきました。
 同じ時間に今、復興特別委員会をやっておりますけれども、復興大臣もやはり各省庁に対して勧告する権限があるんですね。法律でそういうふうに書いたんです。だけれども、実際に一度もやったことがないわけなんですね。
 そういう意味で、やはり厚労大臣がどれだけリーダーシップを発揮できるのかということが大変気になっているわけですが、これは塩崎大臣にぜひ決意を伺いたいと思うわけであります。
 厚労省が自殺対策に関係する主な分野にはどんなものがあると考えていらっしゃるでしょうか。厚労省というのは、本当に、人が生きること全部にかかわる、まさに受精卵から御遺骨までというせりふをここでおっしゃった方がいらっしゃいましたけれども、全てにかかわりますから全てと言えるとは思うんですが、でも、ぜひ大臣の認識を伺いたいし、今後、所管するに当たって、特に力を入れたいのはどういうことなのか、伺いたいと思います。

○塩崎国務大臣 自殺は、先ほど来お話が出ていますように、健康問題であったり、あるいは経済、生活問題など、複雑にさまざまな問題が関連をし、生活面あるいは心の健康面を含めた包括的な対応が必要だというふうに思います。
 厚労省に今回移るわけでありますけれども、厚労省では、これまでも自殺対策として、一つは、精神保健医療の充実を行ってきた。あるいは、生活困窮者への支援の充実も新法の施行に伴ってやってまいりました。失業者に対する相談、これは長らくやってまいっているところでございますし、こういった取り組みに係るこれまでの蓄積、知見、それから自治体とのネットワーク、こういうことが生かせる強みで、医療機関にしても、やはり現場を持っている、そういうところが内閣府と少し違うところかなというふうに思います。
 この四月から所管するに当たって、自殺者数については、全体として減少傾向にあるといえども、近年、健康問題を原因とした自殺者の割合はむしろ増加をしているわけでありますから、こういうような状況を踏まえれば、職場における労働者のメンタルヘルス対策、あるいは地域における心の健康づくり推進体制の整備などについても、これまで以上に力を入れて取り組まなければならないと思っております。
 それから、総合調整の話で、厚労省で大丈夫かねというお話をいただいたように聞こえましたが、これは法律で定められた総合調整機能でございますので、自殺総合対策会議において厚生労働大臣が会長を務めることに、官房長官から移るわけでございますから、この場をしっかりと活用して、関係省庁の施策も含めた、つまり、大事なことは、やはり総合的に行う、複雑な問題であるがゆえに総合的に対処しないといけないということでありますので、まさに先生御指摘のとおり、総合調整機能を発揮するということが大事なので、そこにしっかりと力を入れて実施をしてまいりたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 最初におっしゃった精神保健ですとか、生活困窮者対策、あるいは相談活動、いずれも現場を持っていると大臣はおっしゃいました。やはり、もしや自殺を考えている、あるいは、そこに至るかもしれない、そういう方たちに対して直接、接する場所があり、医療機関のような場所があり、かつ、直接、例えば心理療法士ですとか、さまざまな方たちの、いわゆる支え手の側の担当でもある。
 同時に、過労死防止対策推進法もつくりました。国として、例えば、労働時間、働き過ぎですよねと、こういうルールをしっかりつくっていくことによって過労自死を防ぐですとか、そういうことも大きな役割だと私は思うんですね。
 ですから、防ぐことができるという立場に立って、厚労省が本当に役割を果たしてほしい。それと同時に、今大臣が当然やりますとおっしゃいました総合調整機能を大いに発揮していただきたいということをまずお話ししたいと思います。
 世界では、毎年八十万人、四十秒に一人が自殺しているといいます。
 二〇一三年五月の第六十六回WHO総会において、初めてのWHOメンタルヘルスアクションプランが採択されました。二〇二〇年までに各国の自殺死亡率を一〇%減少させることを目標としています。
 ただ、日本は、一〇%なら、もう既に達成したことになるわけですね、ずっと三万人で来たわけですから。だけれども、自殺率の水準が世界の倍ですから、これは、目標もやはり倍、そういう気持ちで取り組んでいく必要があるのかと思います。
 清水さんの資料の中にもありましたけれども、これが二〇一四年のWHOの自殺レポート。タイトルがまさに、「自殺を予防する 世界の優先課題」と書いてありまして、並々ならぬ決意を感じます。
 各国が優先課題として取り組むことを提言し、そして、その調整役は保健大臣と書いておりますので、やはり厚労省が持つのが正しかったのかなと思っております。
 そこで、この中で、日本が、自殺総合対策大綱、つまり、戦略を持って現実に自殺者を減らしたことを好事例としてWHOが紹介し、評価をしております。
 基本法制定までと、そして制定後十年、取り組んでこられた清水さんに、この基本法が果たした意義について伺いたいと思います。

○清水参考人 基本法が果たした意義は、大きく二つあると思います。
 一つは、実務的な面での意義です。
 御承知のとおり、自殺対策基本法には、政府や地方公共団体の責務がうたわれており、それがゆえに、政府のみならず、都道府県や市区町村が、自殺対策を行政の仕事として、予算や人材を確保して推し進めることができる。これは基本法ができる前にはあり得なかったことですので、事業を進める上での根拠になっているということがこの基本法の意義の一つだろうというふうに思います。
 もう一つは、啓発においても決定的な役割を果たしているというふうに思います。
 かつて、自殺は、今よりもずっとタブー視されて、忌み嫌われ、個人の問題として片づけられていたわけですが、法律ができたことによって、大分変わってきました。
 本来の施行の順番としては、自殺が社会問題だという認識が広まって、その中で対策を社会的に進めていこう、法律をつくろうという合意が形成されていくということになるわけですけれども、ただ、逆から見れば、法律ができたということは、社会的な対策が必要だということになり、また、社会的な対策が必要なのは、それは問題が社会問題だからということになるわけなので、ですから、そうして自殺対策基本法の存在自体が、自殺を個人の問題ではなく社会の問題だというふうにしっかりと認識させていく、その啓発的な意味を非常に果たしているんじゃないかというふうに思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 個人の問題ではなく社会の問題にしたということ、この法律ができて、大綱ができて、また自殺対策白書が出されているわけですけれども、この数字をさまざまに分析すると同時に、その数字の背景にあるさまざまな要因をしっかりと可視化していくというんでしょうか、そして、それが対策に結びついていくという意味で、本当に重要な役割を果たしているのではないかと思っております。
 関係者の皆さんには、改めて敬意を表したいと思っております。
 そこで、先ほど紹介したWHOの同レポートでは、主要メッセージ五つを挙げているわけですけれども、その五つ目に、「地域は自殺予防において重要な役割を果たす。」とあります。
 先ほど、言い過ぎることはないとおっしゃっておりました。本当にそのとおりだなと思うし、今回の法改正もそこがポイントだと思います。
 自治体にどのような役割を期待し、しかし、そうはいっても、自治体というのは、一つの窓口がいろいろなことをやっていたりします。その体制の中でどんな支援を国がしていくべきなのか、伺いたいと思います。

○清水参考人 自殺対策は、三つのレベルで考えると理解しやすいんじゃないかと思っています。
 一つのレベルというのは、相談事業などに象徴される対人支援。個人のレベルですね。
 二つ目のレベルというのは、さまざまな関係機関が連携して相談、対応に当たる。これは地域のレベルです。
 最後の三番目のレベルは、いわゆる制度レベル。各地域地域で連携しやすいような枠組みをつくるであるとか、あるいは、さまざまなデータを提供するであるとか、地域がしっかりと対策を進められるような、その枠組み、制度をつくるというのが最後のレベルです。
 市区町村、自治体において重要なのは、まさに対人支援の強化と、あと地域レベルの強化ということになります。個々人への支援を強化するために、人材の育成、研修もしなければならない、あるいは、地域のネットワークを強化するためのそうした連携事業をやっていかなければならないということが、市町村のこれからの重要な役割だと思います。
 あわせて、国の役割としては、地域地域がそうした事業をしやすいような研修プログラムの開発であるとか、地域の自殺の実態を分析して、それを提供するであるとか、あるいは、先進事例を全国から集めて、それを各自治体に提供していくといったような、現場が対人支援をやりやすいような仕組みをちゃんと国がつくっていく、現場本位の制度を、仕組みをしっかりつくっていくということが国の役割になるだろうというふうに思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 現場本位というのがとても大事かなと思っております。どうしても、地方分権だと言いつつも、さまざまな制度の要綱ですとか、かなりがちんとしていて、地方がすごく大変だということもあります。やはり、地方の課題に合わせて支援をしていくということがとても大事なのかなと今伺って思っております。
 そこで、次に、若年者の死亡原因のトップが自殺であるということは、よく知られていることだと思います。平成二十七年版の自殺対策白書では、ここを掘り下げた特集を組んでおります。
 この中で私がとても注目したのは、自傷行為の救急搬送の率は、女性の若年層が多い。三十歳前後の女性では、自殺者の二人に一人が未遂の経験があるということでありました。
 これは資料の一枚目に、白書から抜粋してつけておきましたけれども、左側が男性であって、自殺未遂の経験ありというのが一〇%台なわけですね。ところが、右側の女性は、三〇%から、二十代、三十代、四十代は四〇%台ということで、非常に、自殺未遂歴がある。また、比較的軽傷だったりもする。つまり、リストカットが繰り返し行われているのかなということも想像できるかなと思っております。
 そこで、こうした部分の分析と対策が予防のためにも大変重要だと思うんですけれども、自殺未遂者の相談などにも直接取り組んでこられた清水さんの見解を伺いたいと思います。

○清水参考人 今お示しいただいたデータから読み取るべきことの一つとして、若年世代の女性の自殺未遂歴のある方が非常に多いということは、亡くなる前に医療機関等につながっていた可能性が非常に高いということだと思うんです。
 では、医療機関が自殺未遂者に対してどういう支援を行っているのか、どういう治療を行っているのかというと、多くの場合は、身体的な傷を治療するだけで、大体、病院から帰してしまいます。そうすると、自殺未遂というのは、これは自殺行動を起こした本人からすれば、言ってみれば失敗に終わったわけですので、身体的な治療だけされて病院から出されると、今度は失敗しないと思って確実な方法をとる。結果、自殺で亡くなってしまうということが大いにあり得るわけです。
 ですから、身体的な治療のみならず、精神的な治療も同時に行っていく。そうした医療の中の精神と救急の連携を行いつつ、同時に、その人が自殺せざるを得なかった要因を取り除いていくという意味では、これは医療ではできませんので、地域でやっていかなければならない。ですから、医療と地域がしっかりと連携を果たして未遂者への支援を行っていくということが非常に重要だろうというふうに思っています。
 連携できているかどうかの試金石の一つは、私は、情報の共有ができているかどうかだと思います。かつて、警察の自殺の統計というのは、残念ながら、自殺対策に取り組む内閣府や厚労省には提供されていませんでした。ただ、自殺対策基本法ができた中で、そうしたデータが共有されるようになり、対策に生かされるようになってきた。今では、毎月、市区町村単位の自殺の統計が公表されるようになってきました。
 ただ、未遂者のデータというのは、これは消防庁が自損ということで持っているわけですけれども、残念ながら、今日においては、まだ自殺対策に生かされるような形では情報の共有がなされていないという現実がありますので、ぜひこれは、省庁の壁を越えて、しっかりと連携するということのあかしとして、情報を共有して、未遂者支援に役立てていただきたいというふうに強く思っています。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。大変参考になりました。
 最初にWHOの話もしたわけですけれども、現実に、命を落とさずに済んだ方たち、そこを救うことを糸口として、予防に広げていくことができるのではないかということを非常に考えさせられました。ありがとうございました。
 そこで、次の話題にしたいと思うんです。
 東日本大震災と原発事故から既に五年が過ぎました。被災地では、今なお十七万四千人もが避難生活を送っておられます。死者・行方不明者は一万八千四百五十五人、震災関連死は三千四百七人です。そのうち、福島では、直接死よりも震災関連死が上回っているということも重ねて指摘をされてきたことであります。
 また、阪神・淡路大震災から既に二十年以上たった今も、やはり災害公営住宅などでの孤独死が大きな問題となっております。東日本大震災でも同じような道をたどるのではないか、非常に心配をしているわけですが、この孤独死の定義自体がまだ明確にされておりませんので、今、例えば、ひとり暮らしで仮設住宅で亡くなったという方であれば、昨年は既に五十三名もいらっしゃる、こういう実態もつかむべきだと思っております。
 そこで、震災被災者の自殺はどのようになっているのか、また、どのような原因なのか、伺いたいと思います。

○安田政府参考人 お答えいたします。
 平成二十三年六月から平成二十七年十二月までの間におきます東日本大震災に関連する自殺者数は、百六十二人と把握をしております。
 これらの自殺者の原因、動機別の内訳でございますが、原因、動機に関しましては複数掲上を可能としておりますため、合計は必ずしも自殺者数と一致はいたしませんが、健康問題を原因、動機とする方が七十四人、経済、生活問題が三十七人、家庭問題が三十二人、勤務問題が十六人、男女問題が三人、その他が二十人、不詳が四十三人となっております。

○高橋(千)委員 震災直後から私は発言しておりますけれども、せっかくあの大津波と原発事故から助かった命が、やはりそこからまた失われるようなことがあってはならないと思っております。
 そういう意味で、今、原因を一定の分類で御報告いただきましたけれども、やはりここも予防という観点から、もうこれ以上は犠牲者を出さないという観点から、できることを進めていきたい、このように思っております。
 その一つとして、医療の問題をきょうは伺いたいと思うんです。
 大震災の直後に、被災者の医療費を、国庫負担で減免制度をやってきました。現在、被災地の減免制度と実績はどのようになっていて、来年度以降はどうするのか、伺います。

○唐澤政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、東日本大震災直後から、被災者の方に対しましては、国民健康保険等の窓口負担の減免を決めた市町村に対しまして、減免に要する費用の全額について、国が財政支援を行ってまいりました。これは、震災発生から一年間。
 そして、平成二十四年度以降でございますけれども、こちらでは、まず、東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示区域等の被災者の方、こうした方につきましては、市町村が窓口負担の減免を行う場合、それに要する費用に対しては、原則、国による全額の財政支援を行ってきております。
 また、避難指示区域等以外の地域の被災者の方につきましては、国民健康保険等における窓口負担の免除を保険者の判断により実施することが可能でございます。こうした場合に、免除による財政負担が著しい場合には、減免額の十分の八以内の額を国が特別調整交付金として財政支援する措置を講じているところでございます。
 その金額でございますが、この窓口負担の免除に係る国の財政支援について、被災三県における平成二十六年度の実績、これは約八十億円という金額になっているところでございます。
 こうした措置につきましては、来年度も引き続き実施する予定としておりまして、厚生労働省といたしましては、今後とも、こうした仕組みを通じまして、被災地の支援をしてまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 来年度も、自治体が取り組んだ場合は、国保の減免制度の枠組みではありますけれども、国が八割支援をする、これは変わらないということをまず確認させていただきました。
 これはもう一押ししたいなというのが率直なところなんですね。
 残念ながら、自治体でもう既にやめるところが出てきております。資料の二を見ていただきたいと思います。
 宮城県保険医協会が実施した被災者に対するアンケートであります。回答数は二千五百十九件で、うち、免除の対象になっている方は五五%というところで、免除ありの人と免除なしの方を比較して答えています。そのうち、健康に何らかの不安があるという方は、免除ありは八九・八%、免除なしも八六・二%、いずれも高いです。これはもう想像できる話だと思うんですね。医療機関を現在受診していますかという問いに対して、免除ありの方は九一%、ほとんどの方が利用しています。免除なしは七八・八%と、少し差が出てまいります。
 そこで、次のページをめくっていただきたいんですけれども、受診していない方にその理由を聞いているんですね。免除ありの方は、支払いについての心配がないわけですので、治療の必要がないからというのが四七・三%で一番多いわけですよね。ですが、免除なしの方は、四六・九%が経済的に苦しいからと言っている。これが実態ではないかなと思っております。
 私は、少し大臣に聞いていただきたい。自由記入欄というのがあるんですけれども、そこに本当に切実な声が紹介されております。
 復興住宅に移住する時期に医療費の一部負担金免除がなくなることは生活にかなりの負担がかかることになります、もう少し継続をお願いしますと。つまり、家賃が発生して、それプラス医療費が発生するというのは本当にきついということ、これはかなりの方がおっしゃっているんですね。
 一方では、東日本大震災より医療費一部負担金免除していただき本当に助かりました、これからもと思いますが、一般の方に申しわけなく思っておりますので、仕方ないかなと思っております、ありがとうございました。こういう方もいる。仕方ないかなと、本当は続けてほしいんだけれども、おっしゃっている。
 年金だけの収入では到底現在の医療費は支払いができなくなります、低所得者は診療も受けられなくなります、医療費免除の継続をお願いいたします。
 収入が減って生活が大変になりましたので免除は本当にありがたいです、国民年金では生活していけないです。
 所得が少なく、免除になるので助かっています、働きたいが持病があり、何度も面接したが採用されず困っている、預金を崩している状態、先が不安、何とか国、子供たちに迷惑かけたくないが。こういう声がありました。
 もっともっと紹介したいところですけれども、特徴があるんですね。まず、免除に対して本当に感謝をしているということ、同時に、申しわけないと思っている。自分たちが免除を受けていることで一般の受けられない方たちに対して負担をかけているのではないか、そう思っているんですね。だけれども、家賃も発生するし、年金はますます少なくなるし、払えないのは明らかなんです。
 今でも狭い仮設にいて、本当に狭い仮設でつらい思いをしている、さらにこの医療費の免除の問題でも肩身の狭い思いをしている、この声にちゃんと応えていただきたいと思います。
 大臣に伺いますが、被災地、被災者にとって医療、介護の減免制度がまさに命綱であるということ、その認識がおありでしょうか。

○塩崎国務大臣 先生今御指摘のように、医療、介護の減免制度が、東日本大震災の被災地で、被災された方々の生活のまさに根幹をなしているという意味で重要な役割を担っていることは、よく私もわかっているつもりでございます。
 このため、先ほどからお答えも申し上げておりますけれども、医療保険それから介護保険において窓口負担や保険料を自治体が減免した場合には、この費用について、先ほど来申し上げているとおりの国の財政支援というものを行ってきているわけでありまして、自治体の負担が過度にならないように配慮をしているところでございます。
 こうした措置につきましては、引き続き来年度も予算計上を既にしているわけでございまして、引き続いて実施をしてまいります。
 厚生労働省としては、今後とも、こうした仕組みを通じて被災地の支援を継続してまいりたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 わかっているなら、もう少し頑張ってもらいたい。
 今紹介した方たちも、ずっとと言っているわけじゃない。未来永劫なんて言ってません。せめてやはりまだ仮設にいる間だけでも、あるいは、公営住宅に入って家賃がいきなり出て負担がふえる、それを軽減するだけでも、もう少し何とかならないかということをおっしゃっているんですよね。
 自治体によっては、今おっしゃったように、自治体がやるときには八割まで見ますよと言っているんだけれども、減免制度を来年でやめるというところも出てきています。続けている岩手県でも、大変だという率直な声も聞くわけです。残りの二割がきついんですね。県と市町村で一割ずつ見ているわけですけれども、岩手県はもちろん継続を決めました。宮城県は、三十五市町村中、免除の継続を決めたのは八市町、非常に少なくなっちゃった。やめたのは二十六市町です。
 しかし、実施している市町村も大変厳しい状況なんです。岩手県山田町では、町議会で、無所属の議員さんなんですけれども、国保の財政調整基金はわずか二百八十六万円しか残っていない、調整基金の取り崩しは、二十五年度に一億一千万円、二十六年度に二千百万円という指摘があって、もうない袖は振れないから打ち切りも視野にするべきではないか、こういう質問があって、それでも、町当局はこらえて、二十八年度も延長します、基金や一般会計からの繰り入れで対応すると答えているんですね。
 やはり、通常のスキームでやっても、対象者が多いからこういう事態になるんですよ。そこをやはり、追加支援も求められておりますけれども、もう一歩踏み込んでいただけないでしょうか、大臣。

○唐澤政府参考人 先生御指摘のとおり、被災地はなお厳しい状況にございます。
 私ども、先ほど申しました形で御支援をさせていただいているところでございますけれども、昨年来継続してまいりました国民健康保険制度の改革の中で自治体に対する支援を強化してまいりたいと考えておりますので、具体的にどういう方法でできるかということはございますけれども、財政力の弱い自治体につきましては、きちんと支援を強化できるように検討してまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 財政力の弱い自治体に関しては強化していきたいとおっしゃっておりますので、何か追加的な支援があるのかなということを期待したいと思います。
 そこで、国保法四十四条に、一部負担金の徴収猶予及び減免というものがございます。これが今回の仕組みのもとになっているわけですが、これは、別に被災地だけではなくて、オール・ジャパンで使える制度なわけです。
 私、ずっとこの問題を取り上げてきておりまして、平成二十二年九月十三日に、保険局長通知によって減免の基準が示されて、ここに、基準に沿った条例をつくった自治体に対しては国の特別調整交付金によって上乗せがされるというふうに仕組みがなりました。
 資料をつけておりますけれども、二十二年度は、要するに、これが始まる前は一万四千七百二十五件、六億二千万円の実績でありました。これが、この基準をつくったことによってどのようになったでしょうか。

○唐澤政府参考人 御指摘がございましたように、これは、震災前はなかなか、全ての市町村でなかったわけでございますが、この基準が示されて、条例をつくっていただいた保険者数でございますが、まず、平成二十二年度は千百五でございましたが、二十六年度には千四百十六に増加をしております。
 また、減免の実施件数でございますけれども、二十二年度が一万四千七百二十六件でございましたけれども、二十六年度には十三万二千百三十件に増加をしております。
 減免の総額でございますけれども、二十二年度が約六億二千万円、六・二億円という金額でございましたけれども、二十六年度には約百七億七千万円、百七・七億円という金額になっているところでございます。

○高橋(千)委員 六億の実績だったのが百七億まで広がったと。それだけ助けられた方がいるということですから、これは本当によかったと思います。
 同時に、私は、きちんとこの減免制度が動いていれば、やはり国保というのは保険料が高いし、一部負担も重いという声が本当にどこへ行ってもあるわけですね。ここは本当に大事だと思っているんです。なので、もうちょっとここの対象について、もうそろそろ見直してもいいんじゃないかと思うんです、五年以上たったわけですから。
 減免の対象は、今の基準は入院療養費に限るんですね。これは大変厳し過ぎないか。しかも、自治体に対しては、もちろん基準より広い範囲で条例をつくってもいいですよ、ただし、その分は一切交付金の対象とはなりませんと言っているんです。これも見直すつもりはないでしょうか。

○唐澤政府参考人 これは、先生御指摘いただきましたとおり、今、減免の対象は、入院を対象にしております。それは、私ども、やはり入院した場合に高額な医療費がかかるということを考えまして、入院というものを対象にしているところでございますけれども、最近、外来でも高額な場合もふえてきているのは事実でございますので、これはちょっと、私どもだけというよりも、自治体の、保険者の皆さんの御意見も聞きながら検討させていただきたいと考えております。

○高橋(千)委員 ぜひ御検討を前向きにお願いいたします。
 保険料も、当然、災害や倒産など、急激な所得の減少のときは減免の対象となります。このときに、やはり生活保護基準程度だったら保険料免除、こういうこともあっていいんじゃないかと思うんですが、自治体独自にはやっているところも当然ありますけれども、これについて、いかがでしょうか。

○唐澤政府参考人 保険料でございますが、先生が御指摘のとおりでございまして、保険料については、減額という措置は講じておるんですが、免除というものは、国の制度としては講じていないのが現在のところでございます。
 これは、国民皆保険ということで、皆さんから少しずつでも御負担をいただいて、保険に御参加をいただいて運営をさせていただくということでお願いをしているわけでございますけれども、保険料の免除も設けるべきではないかという御意見も自治体の方からもいただいておりますので、こうした点については、引き続き検討をさせていただきたいと考えております。

○高橋(千)委員 よろしくお願いいたします。
 大臣に、ぜひこの問題で伺いたいと思うんです。
 私は、制度としてなかなか特例がきかなくなった被災者に対しても、あるいは全国の大変負担が重いと思って困っている方に対しても、やはり一定のこういう減免制度があれば本当に助かるということをずっと言い続けてきたんです。
 それで、厚労省の一部負担金減免に対するQアンドAを見ますと、こういう問いがあります。収入が生活保護基準以下であり、かつ、預貯金が生活保護基準の三カ月分以下という世帯は、そもそも生活保護の対象となるのではという質問なんですね。
 答えは、いやいや、生活保護というのは、本人の申請意思とか、資産とか能力の活用、要するに全て活用しなきゃいけない、それから、扶養義務者がいるのではないかとか、そういうことを全部見て、他法他施策の活用などの要件があるということを解説して、「したがって、今回示した基準に該当する場合には、まずは一部負担金減免の手続きを進めることとし、その上で、必要に応じて、生活保護担当など福祉部局と連携するようにしていただきたい。」と言っているんですね。
 もう一つ、似たような問いがあるんです。
 減免の相談を受けたとき、まず生活保護の申請を援助して、却下されたら減免を行ったらいいんじゃないかというふうな問いに対して、これも同じ答えで、いやいや、「まずは一部負担金減免の手続きを」と答えているわけなんですね。
 これは、安易に生活保護に行くなと言っているように見えるんですけれども、やはり、さっき話したような事情のある方たち、減免制度がなくなれば保護以外に行く道がない人も出てくるわけなんですよね。生活保護受給開始の理由のトップは、収入の減少、貯蓄が減ったということがトップですよね。そして、その次がやはり医療なんです。我慢して保護を受けないで、急迫して緊急医療扶助を受ける、こういう方も大変多いです。
 そういうことを考えると、確かに生活保護受給者は年々伸びていますけれども、保護を受けずに頑張ろうとしている人たちに、減免制度がちゃんとあるよということで、さっき言ったように、まずは減免とQアンドAをつくっているんですから、そうやってちゃんと制度を確立して助けてやるということが、回り回って、コスト的にも大変効果的じゃないかと思うんですね。
 これを、大臣、思い切って進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 国民健康保険で健康を守るということを原則としながら、厳しい状況にある被災者の皆様方にどういうサポートが引き続いて必要かということでありますが、基本的には、今先生お読み上げもいただきましたが、国民健康保険を継続していく中で減免制度を御活用いただくということを、私どもとしても、言ってみれば、それがまず一歩、第一歩ということでお続けをいただき、また、先ほど来、支援については継続をしていくという考え方でございますので、そのような形で、できればやはり自立というものが大事でございますので、その点も踏まえた上でやっていきたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 減免制度を御活用いただくとおっしゃいました。だからこそ、活用しやすいものにしてくださいと言っているんです。
 それで、自立と言ったって、結局、そこで減免に至らなければ、条件が外れてしまえば、最初に言ったように、今、大変厳しい条件ですから、あるいは入院しか使えないとか、そういうようになっていますから、やはり、そこを御活用いただくと言う以上は、活用できるように検討してほしいということを言っております。重ねてお願いいたします。
 この間、山田町を初め、被災地を回って聞かされたことの中に、ちょっと共通していることがあったんですね。それは、男性の方が大変深刻であるということ。大変失礼でございますけれども、多くの男性の皆さんに。
 実は、自殺も七対三で男性の方が圧倒的に多いわけです。もちろんこれは、働き手であって、倒産ですとかリストラですとか、いろいろなことを苦にしているということもあると思うんですけれども、ここで私が言いたいのは、それだけではなくて、やはり人との交流の問題なんですよ。
 例えば、女性はお茶飲み会をやりましょうとか、何か小物をつくるから集まりましょうとか、何かと行事に参加をして交流をするんですね。ところが、男性は一人ではまず出てこないということを言われたんです。それから、病院の先生もおっしゃっていました。診察の日がなければ、本当にあと何にも出てこないんですよ、とっても心配ですということをおっしゃっておりました。
 私は、本当にそうだと思うんですね。かつて、老人医療費の無料化で病院がサロン化していると批判が強まって、それからだんだん有料になってきた経過がありました。でも、私は、あの被災地の医療機関というのは、本当に気軽に通えることが、交流の機会をふやし、看護師さんにだったら思いのたけを述べたりするんですね、そういう心を開く機会でもあるんだなということにすごく気がついたんです。
 ですから、今回のことで結局病院にも行かなくなったら、これは本当に危ないなと思いますので、こうしたことも、大臣、ぜひ心にとめていただきたいと思う。
 このことを最後に、私、清水さんにもう一回伺いたいと思うんです。
 ここまで後半の質問を聞いていただきました。ぜひ感想的な意見を伺いたいと思うんですけれども、やはり今の、なかなか表に出てこない方たちの問題、今お話ししました。それから、自殺のトップはやはり依然として健康問題である。不治の病を苦にしてという側面もありますけれども、やはり低所得者対策ができていなくて、高額の医療費が払えないとか、そうしたことも大きく背景としてはあると思うんですね。
 これらを含めて、厚労省に期待する点があれば伺いたいと思います。

○清水参考人 自殺は、人の身体、生命の問題そのものですから、最後は、最終的には、多くの人というか、誰もが健康問題を抱えるようになるわけです。ただ、だからといって、健康問題のみを対象とした支援を強化すればいい、メンタルヘルスを強化すればいいということではなくて、その背景に潜んでいるさまざまな問題に対してやはり当然手を打っていく必要があるんだろうと思います。
 厚労省に移ったことによって、自殺対策、これまで地域づくりとして進めてきたものが、うつ対策に後退したということが言われることのないように、私はしっかりやっていただきたいというふうに思っています。
 健康問題が一番多いのは、これは、要因の数を数えれば、確かにそうなんです。ただ、要因をそういうふうにばらばらにカウントができても、でも、人というのはやはり一つの個体として、ばらばらにできませんから、人は複数の問題を抱え込んで自殺のリスクが高まっていく。ですから、関係者がしっかりと連携をして、包括的な生きる支援として一人の人を支援していく、生きる支援を強化していく、そうしたことを厚労省全体としてぜひやっていただきたい。
 点の取り組みではなくて、プロセスの取り組みとして、線の取り組みとしてやっていきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 大変参考になるまとめをしていただきましたので、前回ちょっと時間が延びたので、きょうはここで終わりたいと思っております。
 清水さんがおっしゃってくださった、うつ対策に後退したと言われないようにというのは、私はすごくこれは自分自身も言いたいことなんです。大変、原因としてあるのは確かなんだけれども、そこに矮小化しちゃったら、やはり違うんだと思うんですね。ですから、本当に、丸ごと、包括的な支援ということを厚労省に期待したいとおっしゃっておりますので、ぜひ大臣にも期待をいたしまして、引き続いて、質問はまた次の機会にしたいと思っております。
 きょうは本当に勉強になりました。ありがとうございました。
 終わります。

○渡辺委員長 清水参考人は御退席いただいて結構です。
 本日は、御出席いただき、ありがとうございました。(拍手)
 次に、井坂信彦君。

○井坂委員 お昼どき、お時間をいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、一般質疑ということで、大きく三点をお伺いしたいと思います。
 一つ目は児童養護施設の問題、そして二つ目が同一労働同一賃金の問題、そして三つ目が、それに絡めてですけれども、いわゆるパート労働者の方の百三十万円の壁と言われる問題についてであります。
 まず、児童養護施設についてお伺いをいたします。
 ことしに入って、実は、地元の地方議員さんと一緒に、厚生労働省の担当の方に、かなりこってりとした陳情というかお願いをさせていただいたことがあります。
 どういうことかというと、保護司をしておられる地元の議員さんなんですけれども、児童養護施設、これは大変一生懸命やってくださっている、ただ、十八歳になると、原則的にはそこを退所しなければいけない、出ていかなければいけない。多くの方は、大学に行くこともなかなか経済的に難しいので、就職をされる。寮のついている会社とか、初めて外で暮らすわけですけれども、就職をする。
 ただ、これは児童養護施設の子に限らずですけれども、今は、会社に入っても、三年で三割の人が会社をやめる、職をかえる、こういう時代です。普通の子であれば、会社をやめて失業状態、失業時代があっても家があるわけでありますが、そういう児童養護施設を退所した子は、会社をやめたら、途端に天涯孤独、住む場所もない、そして、そのための家賃も捻出できない、こういう状態になってしまう。何とか戻ってこられるような環境をつくれないか。
 また、十八歳にこだわらず、特に、やはり最近は、大学に行きたいという子も昔に比べて極めて多いわけです。そういう場合は、二十二歳、特に大学生の場合は、施設を出て、外で自分のお金で家を借りて大学に通うなどというのはおよそ現実的ではありませんから、そういう場合は、施設に何とか残れるような仕組みをつくれないか。
 こういうことで、御本人も大変熱のこもった方だったものですから、こってりした陳情になってしまったわけであります。
 その後、先月末ぐらいですけれども、報道で、児童養護施設で暮らせる期間が二十二歳まで延長という報道がされました。また、その際には、陳情に行った地方議員にもわざわざ厚労省の方から、また今度制度が変わりますよということで、お声がけもいただいたということで、大変喜んでもおりました。まず、この場をかりて、お礼を申し上げたいというふうに思います。
 そこで、本件なんですけれども、報道はこのようにされましたが、実際は、報道ほどすかっとした形にはなっていないというふうにも聞いております。
 すなわち、児童養護施設で二十二歳まで暮らせるのかというと、そういうわけではないんだと。児童養護施設ではなくて、全国百十八カ所ある自立援助ホームというところで、現状二十歳までのところを、大学に入っていれば二十二歳までいられる、こういう仕組み。
 一方で、この児童養護施設は、現状どおり、暮らせる期間は原則十八歳まで、そして、延長は二十歳までできて、二十歳を過ぎても、必要があれば支援はする、こういう仕組みだというふうに伺っております。
 そこで、まず大臣にお伺いいたしますが、この延長、児童養護施設の方、延長を二十歳までというところを、二十歳まで、ただ、大学に入っている子は、やはり大学卒業までは児童養護施設にいてもよい、こういうふうに変更できないか、お伺いをいたします。

○塩崎国務大臣 これは、早晩、法律が出てまいりますから、そこでまた御議論いただくことになろうとは思います。
 今の児童養護施設の入所というのは、原則として十八で措置が一応終わるということになっていて、そういう子供さんを対象としているわけでありますけれども、今でも、実は、都道府県等が必要と判断した場合には、つまり、児相が判断した場合には、二十に達するまでの入所の延長というのが可能となっているわけであります。
 十八歳に達した方に対する継続的な自立支援のあり方、これについて、私どもは、社会保障審議会にお願いをしてつくっていただいた、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会というところで議論をたくさんいただきました。
 その報告書が出てまいりましたが、その報告書では、社会的養護を必要とする子供は、現行の制度のもとで成人年齢に達する二十歳未満を支援の対象とすべきであって、児童養護施設に入所している児童等について、二十歳に達するまでの間、措置延長を積極的に活用するという、措置の世界のままで二十までというのが一つ。
 もう一つは、二十に到達した後も、少なくとも二十二歳に達した日の属する年度末までは、その後の自立生活につなげるために、引き続き必要な支援を受けることができるようにする仕組みを整備しようというその必要性について、訴えていただいています。
 私もいろいろなケースを見てまいりましたが、やはりここのところは、例えばイギリスだと、コネクションズというところが二十五歳までサービス提供、お世話をしているということでもございますが、私どもも、少なくとも二十二歳になるまでは、措置という世界ではないかもわかりませんが、同様のサービスが提供できるように、今度は利用という形でできるようにすべきじゃないかということを考えておりまして、今、自立援助ホームというお話がありましたが、それは必要に応じて、児童相談所が児童養護施設のままでいくべきだと判断をすれば、そういうこともあり得るので、ケース・バイ・ケースでそれは決めていこうということで考えているところでございます。
 いずれにしても、児童福祉法等の改正法案を今通常国会にお出しをいたしますので、社会的養護を必要とする子供たちの自立にとって何が大事か、本当に、社会に出たら何も守ってくれるものがなくなるというのに近いケースがほとんどだろうと私も思っていますので、そういうようなことに配慮をした法改正になればと思って、今日までやってきたところでございます。

○井坂委員 原則は、もちろん、成人になる二十までが措置延長ということでわかるんです。ただ、やはり、大学生になった場合は、十八が原則で二十までしか延長はされない、それが原則ということになってしまうと、大学の三回生になって、今でしたら就職活動とかで急速に忙しくなる、勉強も研究室やらゼミやら忙しくなる、そのときに、いきなり住みなれた施設を出ていかなければいけなくなる。
 必要な支援はしますよ、あるいは、いたければいられますよと柔軟には考えてくださっているとは思うんですけれども、やはり二十で区切るのが現実的な社会人のケースと、それから大学生の場合は、そもそも二十で区切ることがおよそ非現実的だというふうに私は思うんですね。
 ここはぜひ、大学生であるのかそうでないのかということを分けて制度設計をしていただきたいなというふうに思います。
 先日、私、予算委員会で奨学金の話をいたしました。日本は、返さなくてよい給付型の奨学金というものがまだありません。これはOECD加盟の三十四カ国の中では、もう日本とアイスランドだけということになっていて、アイスランドは大学の学費がただみたいな国のようでありますから、事実上、返さなくていい給付型の奨学金がないのは日本だけ、そろそろやりませんかと、財源論も含めて予算委員会で議論をさせていただいたわけであります。
 今、児童養護施設、現状、ここに入っていた子の大学進学率の数字を見ますと、わずか一一%しか大学には進学をしていないということであります。もちろん、学費も含めて経済的な理由が一番大きいというふうに思いますが、もう一つは、先ほど議論をした、原則十八歳までで児童養護施設を退所しなければいけない、措置延長も二十どまりだ、これもやはり大きな理由ではないかというふうに思います。
 措置延長そのものも、実は、十分に活用されているとは言いがたい数字です。措置延長をされる児童は現状一三%だけというふうに伺っております。
 お伺いをいたしますが、なぜ、この措置延長は一三%しか使われていないのか、利用率がこんなに低いのか、お伺いをいたします。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 先ほど大臣からも御説明させていただきましたけれども、児童養護施設への入所措置は、原則として十八歳でございますけれども、都道府県等が必要と判断した場合は二十まで延長することが可能でございます。
 この措置延長については、都道府県等が個々に判断していくわけでありますけれども、実際の運用としては、高卒時点で退所するケースが非常に多いというのが現状でございます。
 井坂委員がおっしゃるように、厚生労働省としても、ここはちょっと問題だなということで、都道府県等が支援を継続する必要があるという判断をすれば措置延長は可能になるという、ここの周知徹底を、もうちょっと浸透させていこうということで力を入れまして、平成二十三年の十二月から、措置延長の積極的な実施について都道府県等に通知を出させていただきまして、積極的な活用をお願いさせていただきました。
 委員の御指摘で、まだ一三%しかとおっしゃいましたが、実は、これによりまして、平成二十二年度の末で九・六%だったんですが、平成二十五年度で一三・四%まで増加してきているということでございます。
 ということで、措置延長の積極的な活用についてはしっかりと自治体に働きかけていきたい、このように考えております。

○井坂委員 ありがとうございます。
 答弁をいただいてあれなんですけれども、委員長、さすがに定足数が満たされていないような気がするので、ちょっと御確認をお願いいたします。

○渡辺委員長 はい。確認をいたします。
 ちょっととめていただけますか。
    〔速記中止〕

○渡辺委員長 速記を起こしてください。
 井坂君。

○井坂委員 失礼しました。ありがとうございます。
 今のお答えなんですけれども、九%から一三%にふえてきている、このことは御努力だというふうに思います。ただ、今、もう大学の進学率が五割になろうというこの時代に、天涯孤独、親御さんのいない施設の子が、経済的な理由、加えて、やはり措置延長、私はまだまだ少ないんじゃないかなというふうに思います。
 いろいろ伺っておりますと、延長がなかなか児童相談所に認めてもらいにくいというようなケースもあるやに伺いますし、また、逆に、延長はしてもらってもやはり原則十八、延びて二十だと、大学の四年間、本当にこれまでどおり気持ちよくそこに居続けられるのかがいま一つ確信が持てない、こういう遠慮をするような気持ちもあるんだというふうに伺っております。
 施設にあきがなければ私もこういう無理は申し上げないんですけれども、現状、児童養護施設は全国で六百一カ所、入っておられるお子さんは二万八千人で、平均四十六人ぐらい入っておられる。ただ、定員は、三万三千人定員があるということですから、まだ、あきは五千人分あるわけですね。満員の施設というのは、六百一カ所中まだわずか五十二カ所、八・七%だけということでありますから、あきがあって、本来は、隠れたニーズがあって、十八を過ぎてもやはりそこに居続けたい、しかも、居続けることで大学にもチャレンジしたい、こういう流れが私はあるというふうに思います。
 お伺いをいたしますが、今申し上げたような延長を頼みにくい雰囲気、あるいは児童相談所の方が本来もっともっと認めてもいいのに何らかの理由で断っている、こういうような実態はないでしょうか。

○塩崎国務大臣 今回の専門委員会で随分議論いたしましたし、我々もいろいろ議論しましたが、実質的に、やはり、措置を二十二まで延ばしたいという声が随分ありました。
 ありましたが、児童福祉法における措置というのは二十までというふうになっているので、では、実質的に、実質的措置と同じようなことで、子供さんが二十になって、子供とはもう言わないでしょうけれども、その方が、児童相談所から見て、やはりこれはなかなか社会にぽんと出ても難しいというケースはまだまだ幾らでもあるだろうということで、必要だと判断をした場合には、今回、児童相談所の専門性もかなり強化をしよう、それから弁護士も関与をするようにしよう、いろいろな形で強化をしてまいりますから、そこがきちっとした判断を、児童心理学等々を含め、それから児童精神医学等々を含め、やっていくということが大事なので。
 私は、大学も一つの大事な要素だと思いますけれども、大学ではなくても、進学していなくても、いろいろな問題を抱えている子供さんがおられたり、親御さんとの関係が難しいというために施設の中に居続けた方がいいという場合もございます。
 そもそも、里親も、考えてみたら、十八で終わりとなっているのも、何かこれはちょっと、親子関係という意味においてはいささかどうかな、そういうことも議論をして、これについてはまだ答えは出ておりませんけれども。
 措置については、少なくとも、本当は私は、二十五でもありじゃないかということはイギリスの例を出して大分申し上げましたが、二十二までは実質的な措置に近いような形で利用ができるという、措置の世界が二十で終わった後は利用という言葉になりますけれども、気持ちは同じように、必要に応じて施設の中でもいられるようにしようということでございます。

○井坂委員 大臣、ありがとうございます。
 大臣がおっしゃった、大学に限らず、社会人となったときでも、やはり継続的な支援が必要だというケースはたくさんあるというふうに思います。
 私が伺った例ですと、ちゃんと十八で施設を出て、一生懸命働いて、ただ、やはり、仕事先でうまくいかなかったときに、案外、もといた施設の方にすっと相談ができるかというと、どうもそれが、遠慮があるのかもしれません、仕組み上はできる仕組みになっているんですけれども、なかなか自分の親に相談するような簡単な形では、いや、会社がうまくいっていないんだ、やめようと思うんだ、でも、やめたら家のことが心配なんだ、こういう切実な相談も、もといた施設にすっと相談できないケースが多い。回り回って保護司をやっている地元の地方議員のところに相談が来たりとか、こういうケースが間々あるようであります。
 そこで、大臣にお伺いをいたしますが、社会人となって施設を出た子に対するアフターフォロー、これは、いきなりフルスペックで何でもできるとは思いませんが、まずは、本当にささやかな第一歩として、施設を出た子にも、月に一度でも、あるいは二月に一度でも、電話をかける。元気でやっているか、仕事はどうや、何かあったらまた施設に寄ってよね、こういう感じでアフターフォローの電話をかけて、それが、安否確認や、あるいは本当に本人が深刻な状態のときには施設に相談に来る、さらには施設のまた一時的な利用をする、こういうことにつながるというふうに思います。いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 本来は、やはり家庭で親子関係があるというのが一番望ましいわけでありますし、その次にあり得べき望ましい姿は、特別養子縁組だったり、里親だったり、その複数形であるファミリーホームだったりということがあって、さらには、それがかなわないというときに小規模の施設、場合によっては、その次に来るのが、今、大舎と呼ばれている施設ということだろうというふうに思います。
 ですから、今回の児童福祉法の改正には、むしろ、親子関係あるいはその準ずるもの、そして、どうしてもというときには小規模な施設ということを考えているわけでありますが、一足飛びにそれをやれと言ってもなかなか難しいので、今お話がありましたように、施設を出る場合にアフターフォローが必要じゃないか、私も全くそのとおりだというふうに思います。
 今、児童養護施設運営指針において、退所後も施設に相談できることを退所者に伝えるということになっておりますし、退所後の状況を把握して記録を整備するということなど、退所後の支援を積極的に行うこととなっているけれども、それがなかなかうまくいっていないんじゃないかということなので、今般、先ほどの専門委員会の報告では、社会的養護が必要な子供については、児童福祉法の児童の年齢を超えた場合も、自立のための支援が必要に応じて継続されることが不可欠であって、そのための仕組みを整備することが必要である、そして、施設退所後においては、それぞれの子供の状況を把握している職員が相談に応じるなどの、特定の者が継続してかかわることを可能にする条件整備が必要との指摘がなされておるわけでございまして、この報告書を踏まえて、これから法律の御審議をいただく中で、そして、その成立を見れば、児童養護施設による積極的な退所者支援というものが今まで以上に図られるようにしていかなければならないし、その手だてを打っていかなければいけないんじゃないか、そういうふうに思っております。

○井坂委員 大臣には、総論では全く同じ考えで御賛同いただいているというふうに思います。
 きょう質問通告をいたしました、まさに具体策として、もちろん、いろいろやろうと思えば予算や人員がかかる話だと思いますが、ただ、もともといた職員さんが月に一本だけいわゆるOB、OGに電話をかける、これは追加の予算が要るほど大層な話じゃないというふうに思うんですね。
 事前に事務方の方とも議論をしたんですけれども、もちろん、事務方の方はよりよいサービスを、ちゃんと予算を要求して、予算をつけて実施したいというふうにお考えで、それは私は全く否定はしません。ただ、その予算がつくまで何もできない、あるいは予算が、もし来年の平成二十九年度の予算に入れ込めなかったら、またあと一年も二年も何もできない、こういうことでは私はいけないというふうに思います。
 電話を一本かける。これは、四十六人平均で子供がいて、毎年多分四、五人子供が卒業していくようなペースなんだろうというふうに思いますけれども、例えば退所後三年は毎月電話をかける。仕事は安定してきたか、職場の人間関係はどうやと。そういうことを、本当に時間がかかることではないというふうに思うんです。これは、できないという理由がないし、予算が必要な話ではないというふうに思いますが、できないでしょうか。

○塩崎国務大臣 これは児童養護施設協議会などともよく相談をして、おっしゃるように、月に一遍電話を入れてフォローを三年間ぐらいするというのは、私はあり得る対処の方法だろうと思いますし、見てみると、やはり出てすぐからが本当に試練が待っているというケースが多いと聞いておるわけでありますので、そういうところについて何ができるか、児童養護施設協議会ともよく話し合ってみたいというふうに思います。

○井坂委員 大臣、ありがとうございます。
 これは、児童福祉法が平成十六年に改正をされまして、この四十一条に、児童養護施設は、保護者のない児童を養護し、「あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする」と。わざわざこの部分がつけ加えられておりますから、退所後の方の相談、援助、それも待ちの姿勢ではなくて、今大臣が前向きに言ってくださったように、ちょっと最初の三年ぐらいは定期的に声をかけてやる、戻りやすい、相談しやすい雰囲気をこちら側からしっかり出すということをぜひお願いしたいと思います。
 続きまして、同一労働同一賃金についてお伺いをいたします。
 これは、昨年の通常国会で、同一労働同一賃金法が成立をいたしました。
 私も筆頭提出者として、この委員会でも、それから参議院でも、与野党の諸先輩方からのさまざまな御質問に答弁をさせていただき、いろいろ考えを深めさせていただきました。
 現在は、日本の法律では、パートそれから契約社員の方は、これはパート法八条、九条、また労働契約法二十条というところに、差別的な取り扱い、それから不合理な待遇格差、これは禁止だというふうに法律に書いてあるんです。ところが、派遣の方だけはこういう条文がなくて、昨年の派遣法改正でようやく、均衡待遇の配慮義務という、いわばパートや契約社員とは、私から見れば二段階ぐらい条文の厳しさが違う、緩やかな条文がようやくつけ加えられたというところであります。
 昨年出した同一労働同一賃金法は、まず、きちんと法律で差別待遇あるいは不合理格差は禁止だと書いてある、パートや契約社員では書いてある。派遣だけおくれているので、派遣も、ここの部分は、三年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずると、これは政府に法律で義務づけをしています。
 ここでお伺いをいたしますが、総理も、第五回の一億総活躍国民会議で、ちゅうちょなく法改正の準備を進める、こういうふうに力強くおっしゃっておられます。この派遣法、派遣労働者にもパート法の八条、九条、あるいは労働契約法の二十条のような、差別的取り扱いや不合理な待遇格差を禁止する条文を加える派遣法の改正を近々行うのかどうか、大臣にお伺いします。

○塩崎国務大臣 今お触れをいただきましたように、二月二十三日の一億総活躍国民会議において総理から、我が国の雇用慣行には留意をしつつ、同時に、ちゅうちょなく法改正の準備を進める等について、厚生労働省と内閣官房で協力して準備を進めるようにという指示をいただいたわけでございます。
 御指摘のように、パートタイム労働法第八条それから第九条、さらに労働契約法の第二十条では、不合理な労働条件の禁止、そして差別的取り扱いの禁止が規定をされているわけでありますけれども、御指摘のとおり、労働者派遣法については、そうした規定が存在をしていません。
 そこで、今お話がありましたように、昨年九月に施行されました、井坂先生御努力をいただいた、職務待遇確保法と我々は呼んでいますが、この第六条において、労働者派遣法について、「派遣先に雇用される労働者との間においてその業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図るものとし、この法律の施行後、三年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずる」ということになっているわけでありますが、同一労働同一賃金の実現に向けて、検討に当たっては、ただいまの職務待遇確保法第六条も踏まえた対応を検討する必要があると認識をしております。
 その具体的な内容につきましては、きょう記者発表もさせていただきましたが、総理の指示に基づいてつくられた同一労働同一賃金の実現に向けた検討会、これを、三月の二十三日に開催を、第一回目を行いたいと思っております。ここで多角的、精力的に検討していただいて、今お話のあった法改正の可能性、それからガイドラインというのもありますけれども、こういったことについて深く議論をしていきたいというふうに思っております。

○井坂委員 ありがとうございます。
 私の考えでは、やはり、派遣法のこの部分の改正をせずに、現状の均衡の配慮義務だけで正社員と派遣労働者の均等・均衡待遇を企業に義務づけることは難しいというふうに思っておりますので、ぜひ法改正をよろしくお願いいたします。
 続きまして、均等待遇と均衡待遇ということで、昨年も与野党で随分議論があったわけです。
 均等待遇というのは、私の理解では、全く同じ仕事をしていれば、きちんと同じ、全く同じ給料を保障しましょうと。均衡待遇というのは、その周辺にあるような概念で、働き方のコースが違うとか、あるいはいろいろな能力が違うとか、ちょっと違う場合は、ちょっとの賃金格差は許しますよ、ただ、ちょっと違うことを理由に、例えば、パートと正社員で働き方が違うからというだけで、ほぼ同じことをやっているのに倍ほど給料が違う、これはだめだと。要は、仕事の違いに比例した賃金の格差までは認めるけれども、それ以上はだめですよ、こういうことだというふうに理解をしております。
 賃金に差をつける合理的な理由があるかないかということが、今後、均衡待遇とそれが言えるのか、それとも不合理な格差ということで違法になってしまうのかの最大のポイントになってまいります。
 今後、政府は、合理的な賃金格差とはどういうものなのかというのをガイドラインを策定するというふうに伺っております。
 このガイドラインの方向性についてお伺いいたしますが、どのような理由があればどの程度の賃金差まで許されますよという、数字もある程度入った定量的なガイドラインになるのか、それとも、不合理はだめですよとか常識外れはだめですよとか、こういういわゆる主観的、定性的な表現にガイドラインがとどまってしまうのか、これは大きな分かれ道だと思いますので、お伺いをいたします。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 ガイドラインの具体的な内容につきましては、先ほど大臣の方から御案内させていただきましたように、三月の二十三日に始まります同一労働同一賃金の実現に向けた検討会、こちらの方に多角的、精力的に議論していただくことになります。ということで、非正規雇用で働く方の処遇改善をさらに徹底的に進めていきたい、このように考えております。
 ということで、今回の同一労働同一賃金の主要な目的は非正規雇用で働く方々の処遇改善であり、不合理に低くなっている方の処遇の改善を図る方向で検討すべきものである、このように考えております。

○井坂委員 このガイドラインが、定量的なものになるのか、それとも主観的、定性的なものになるのかというのは、これは大きな差が出てくるというふうに思います。
 今のところ、お聞きしている範囲では、政府は、例えば資格、それから勤続年数、あるいは学歴、こういったところで賃金に差がつくことは一定の範囲で認めるという方向やに聞いております。
 しかし、大事なのは、あくまで職務に応じた賃金であります。つまり、その職務がどれだけうまくできるのか、熟練度、あるいはその職務に必要な能力、そしてその職務で出した成果あるいは生産性、こういったところが基本であります。ですから、例えば、勤続年数が違えば給料が違っても当たり前だ、これは日本では当たり前の考え方でしたけれども、よくよく考えると、その仕事、その職務に何年ついているかというものが大事であって、全然関係ない仕事を何年やっていようが、その職務についている年数で基本的には比較をしていくということではないかなというふうに思います。
 逆に、単なるその会社にいる年数で賃金の格差を認め始めたら、これは結局、正規労働者は、十年、二十年、三十年、非正規の方は、一年、二年、三年、五年、ここでもう最初から差がついてしまうのは明らかで、ちょっと心配をしておりますのは、ガイドラインをつくって同一労働同一賃金を始めてみたら、結局、何か勤続年数とかそういうところでどんどんどんどん平気で差がつけられて、現状の、パートや契約社員や派遣社員の方と正社員の方の格差とほとんど変わらない結果になってしまった、しかも、それがある種合法的に許されるような状態になってしまった、こういうことを心配するわけであります。
 ガイドラインにきちんと実効性を持たせる、特に職務についてどうなのかということを、きちんと、そこの差しか認めないということについて、ちょっと大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

○塩崎国務大臣 まさに、結論から言いますと、そのことをこの検討会で議論していただかなきゃいけないと思っております。
 例えば、もう釈迦に説法でございますけれども、ヨーロッパでは、EU指令でもって、基本的には同一労働同一賃金とはこういうものだということを書いて、合理的な理由がない限りは同一でなければならないということを、それぞれの国がまた法律にしているわけでございます。
 ガイドラインでどこまで定めるべきか。今、定量的にというお話がありましたが、ガイドラインは、法的な位置づけをすれば法律ではございませんから、数値的なことを入れた場合にどういう効果を持ち得るのかということもよく考えていかなきゃいけませんので、ヨーロッパなどの例もよく検討して、今回のメンバーの中には、ドイツやフランスやイギリスなどにとても詳しい労働法学者の先生方にもお入りをいただいて、そういったことも含めて議論をしていかなきゃいけないというふうに思っております。
 かなりこれは奥行きのある話であり、また広がりのある話でもあろうかというふうに思いますので、今先生が御指摘いただいたように、実質的に、やはり、非正規の方の賃金と正規の方の賃金の格差が理由なく開いたままである今の現状というものは解消していくということが大事なので、その実効性をどう持たせるのかということについての工夫をよく議論していただきたいと思いますし、また、先生方の御意見も引き続き承ってまいりたいというふうに思います。

○井坂委員 ガイドラインに数値が入る、定量的なガイドラインになるということは、私は、ガイドラインはもちろん法律ではないですけれども、ある種の物差しとして重要になってくるというふうに思います。
 その物差しに数値の目盛りが入っているのか入っていないのか、もしガイドラインが余りにも主観的、定性的だと、前回まで議論をしておりました労働移動のときのように、何か法律では濫用だとだめだぐらいしか書いていないと、では何が一体濫用なのかということで、そこを逸脱してくる企業が出てくる、それをとがめるためには結局最後は裁判をやるしかない、こういうことになってきますから、数値、定量的な目盛りが入っているガイドライン、それに照らせば、企業も自分がやっている賃金体系が許されるのか許されないのかが裁判をしなくても大体わかる、労働者も自分の待遇が不合理な範疇に入ってしまうのか、それとも合理的な範疇にとどまっているのかがちゃんとガイドラインを見れば自分でもわかる、こういうことがとても大事だというふうに思います。
 最後、ガイドラインの話ばかりしてきましたが、一方で、職務に応じた賃金ということを真面目に考えれば、職務評価というものも進めていかなければいけないというふうに思います。
 厚生労働省も、職務評価のモデルケース、実施イメージというようなもの、要素別点数法というようなものをつくっております。
 簡単に申し上げますと、仕事ごと、職務ごとにその大変さをちゃんと小分けにしてはかっていく。かわりの人材が見つかりやすい仕事なのか、それとも見つかりにくい仕事なのか、あるいは新しいやり方が求められる、革新性が必要な仕事なのかそうでないのか、専門性が必要なのか、従業員の裁量がたくさんある仕事なのか、言われたとおりやればいい仕事なのか、対人関係が大変なのか、それともほぼ一人でできるような仕事なのか、こういういろいろな要素に小分けして、その仕事がどれだけ重たい仕事なのか、どれだけ大変な仕事なのか、こういうことを数値化して、職務としてそれに見合った賃金を払っていきましょう、こういうのが職務評価の考え方です。
 お伺いをいたしますが、職務評価などのツールを私は広めるべきだと思います。ただ、今政府は、職務評価よりはどちらかというとガイドライン、物差しを一本つくってそちらでやっていこう、これは一長一短あって、私も別に今の政府のガイドライン主体のやり方は否定はいたしません。
 ただ、結局、ガイドラインだろうが職務評価だろうが、実際に現場で起こっている賃金格差が不合理なのかどうなのか、これは最後は裁判になりますけれども、不合理であるということをきちんと説明責任、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、企業側は、これは不合理な格差じゃないんだ、職務評価に基づいてやっている許される格差なんだ、あるいはガイドラインの物差しに基づいてやっている許される格差なんだと立証する責任、説明する責任は、私は、企業側に、使用者側に負わせなければ、この制度全体がほとんど実効性を持たない。何かあると労働者が、結局、労働審判とか裁判に訴えなきゃいけない、でも、そんなことをやっている暇がないから、結局放置をしてしまう。
 実例を挙げれば、パート法の八条、九条、あるいは労働契約法の二十条、今法律で格差は認めませんとはっきり書いてあるパートや契約社員の方でも、では実際にそれで裁判をやった方が何件あるかとお伺いをすると、パートではわずか一件、契約社員の方ではわずか二件。要は、裁判で解決するなどというのはおよそ現実的には行われないということであります。
 ですから、物差しをはっきりさせる、ガイドラインならきちんと数値、定量的なものを入れる、あるいは職務評価をちゃんと導入する。格差が合理的か合理的でないかは企業側、使用者側がきちんと数字で立証する、説明をする。ここを義務づけることが今回の最大のポイントではないかというふうに思いますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

○塩崎国務大臣 先生御指摘のとおり、職務の評価というものが極めて大事だということは、もうそのとおりだと思います。
 これは、例えば公務員制度の改革の中でもこの点はまだ未達と私は思っておりますし、企業はかなりやっていますけれども、しかし、こういうような格差が非正規、正規の間にあるということは、職務の評価は、パートタイム労働者と正社員との間の点数化されているガイドライン、要素別点数法による職務評価のガイドラインというのが二十四年の十一月に制定をされておりますけれども、これを本当に実効あらしめるためにどうするのかということが大事だと思います。
 挙証責任の話がありましたが、パートタイム労働法あるいは労働契約法に関する訴訟において、待遇差の不合理性に関する立証の責任は、労働者側に一方的に負わされているものではなく、今、企業も負っている形となっているわけでありますが、ヨーロッパのケースを見ますと、この合理性については企業が立証責任を負うというふうになっています。
 さあこれを日本でどうするのかということについては、これからこの検討会で議論していただいて、先生のような御意見も踏まえてこれからまた議論をさらに深めていくということが大事で、さっき申し上げたように、かなり、奥行きだけじゃなくて、幅も広い問題を議論することになるんだろうというふうに私は思います。

○井坂委員 時間が参りましたので。
 この同一労働同一賃金、おっしゃるように、本当に議論すべきことは多いと思います。また引き続き、この委員会も通じて、とにかく、実効性のある制度、そして非正規の方がきちんと待遇が改善される制度にしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いをいたします。
 どうもありがとうございました。