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議会報告:議事録

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190-衆-厚生労働委員会-19号 平成28年05月20日

○初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。
 きょうは、まず最初に、先般成立しました児童扶養手当法に関することで一点気になることが耳に入りましたので、お伺いさせていただきたいと思います。
 児童扶養手当は、母子家庭や父子家庭の方に支給される手当でありますが、こういう例があったということです。
 しばしばあるということなんですが、母子家庭ですから、当然お子さんが一人か二人かいるわけですね、母子家庭で一人お子さんがいる、その方が、その状態のときに妊娠をして第二子を出産しました。ただ、相手と結婚をしているわけでも同居をしているわけでもなく、おつき合いをしているという関係で第二子が生まれました。その届け出をした際に、窓口で、子供が生まれるということは事実婚の関係にあるだろうということで、手当が打ち切られる、そして、妊娠をしたときにさかのぼって、今までもらっていた児童扶養手当の返還を求められる、こういうケースがしばしばあるということなんですね。
 確かに、同居をしていなくても養育費のようなものをもらっていたとしたら、それは事実婚ということになるのかもしれませんが、単におつき合いをしているだけであり、また将来結婚をするつもりもない、そういう場合に手当を打ち切るというのは、やはりいかがなものかなと思うんですね。
 中には、これは、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石さんのところに相談に来られた方が実際にいたということですが、出会い系サイトなどで知り合った相手がお父さんであって、過去に自分は何回か中絶をしたことがあるので、医者からも、もう一回中絶するのは体にリスクがあるからと言われて、やむなく産むという選択をして、相手との連絡も全く一切とっていない。この場合も、事実婚だというふうに言われてしまう。
 まず前提として、母子家庭ですからお子さんがいて、さらに生まれたばかりの子供を抱えて、役所に行って、これはおかしいじゃないかというやりとりをする、そんな余裕もないわけですよね。そういう方が大変困っているということなんです。
 場合によっては、相手が例えば妻帯者で、不倫関係にあって子供ができてしまって二人目も産む、そういう状態でもこれは手当を打ち切られるということになっているということなんですが、これはやはり問題じゃないかなと思うんですよ。その家庭の、それぞれの方の状況をきちんと把握して、事実婚でもないのに手当が打ち切られるようなことがないように丁寧な対応をするべきだと思うんですね。
 一人親家庭で、相手と結婚もしないで二人目が生まれる、また三人目が生まれる、そういう状態にいるお母さんたちは、恐らくもっと別の支援も必要なんじゃないかと思うんですよ。それを、手当を打ち切ってもう切り離してしまうというのは、私は、本来、行政のやるべきことじゃないんだと思うんですね。もっときちんと相談に乗って、別の支援策も考えなければいけないのではないかと思います。
 そういうお母さんの手当を打ち切るような措置は、機械的に打ち切るようなことはしないで、きちんとその状況を確認して、必要であるということであれば、手当はそのまま継続して出す、返還も求めない、そういう対応をとる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 児童扶養手当は、離婚による一人親家庭等であって、もう一方の親と生計を同じくしていない児童を対象に手当を支給する制度となっております。
 その際に、お話にありました事実婚については、実は、昭和五十五年の課長通知に基づきまして、このときには、当事者間に社会通念上夫婦としての共同生活と認められる事実関係が存在するかどうかによって判断することとなっております。
 そうはいいましても、おっしゃるように、いろいろなケースが最近出てまいりましたので、この取り扱いにつきましては、平成二十七年の四月に全国の自治体に再通知をさせていただいております。先ほど御指摘いただきましたような、児童扶養手当の受給中に妊娠した場合についても、事実婚に該当するかどうか、これは自治体が判断する必要がありますけれども、その判断に基づいては、個々のケースがいろいろありますので、それをきちっと状況を踏まえて、機械的にそういうふうに判断してしまうのではなくて、受給資格者の生活実態を確認した上で判断し、適切な支給手続をとっていただきたい、このように通知を出させていただいております。
 ということで、今後もさまざまな機会を通じて、生活もいろいろなスタイルに変わってきておりますので、それに対応して、きちっと取り扱いを周知を徹底していきたい、このように考えております。

○初鹿委員 ぜひ丁寧な対応をしていただきたいと思います。
 では、次の質問に移ります。
 皆さん、お手元に資料をお配りしているんですが、四月の二十日の委員会で取り上げました貧困ビジネスについてです。
 その質問の際にも私は申し上げたんですが、今度生活保護の支給日に現地に行って見てくると言いましたが、五月の二日に行ってまいりました。埼玉県の岩槻区の区役所に行きました。
 見てください、一番上の写真。マイクロバスから、青い作業着を着てスキンヘッドの人が一人出てきています。これが職員です。こういう人たちがたくさんいました。この人は非常に大きな声で私のことを恫喝したりしましたけれども。その下の写真、見ていただくとわかりますが、バスからたくさん出てくるんですね。こうやってぞろぞろぞろぞろと施設の入所者を区役所に連れていくんです。
 生活保護の受け取りの窓口は実は四階なんですが、なぜかこの施設の人たちだけは三階の会議室で支給をされる。ドアがあって、その奥が区役所になるんですが、その前の共用部分に三、四人、この作業服を着た職員が立っていて、柱の陰で一人、女性が袋を持っています。その前にこの作業服を着た職員がいて、保護費をもらってきた受給者がずうっとそこに来て、チェックをしながら封筒をそのまま受け取って入れていく。その光景をさいたま市の職員も見ているんです。
 私は、さいたま市の職員に話しかけたんです、こういうのは適切なんですかと。あんた誰ですかみたいなことを言うので、ちゃんと名乗りました。名乗って、これっていいんですかと聞いたら、課長に聞いてくれと言われまして、では課長に聞きに行きますと言って、課長に聞きに行きました。お話をしましたが、一言で言うと、非常に困っています。さいたま市自身も、市長も含めて、非常に問題だと思っているんだけれども、なかなか対応ができないということなんですね。
 ただ、私は、行って思いましたけれども、私が多分何らかの取材に来たか何かだと思ったんでしょう、この青い服を着た職員は、非常に高圧的な態度で、かなり威圧的に、何しに来たんだ、国会議員だからってこんなことをやっていいのかというような感じでどなり散らすんですね。私が課長のところに行って戻ってきたら、警察まで呼ばれていて、私が悪いことをしているかのように言われる。
 要は、職員の方も、怖くて多分断り切れないような状況なんだと思います。これを非常に問題だと思うんです。
 その後、私は、五つ施設があるんですが、全部の施設を回って、入り口で、入所者の人が出てきて、買い物に行ったりして出ていったところを何となくつかまえて、話をしてみました。全ての施設に行きましたが、大体、金銭管理をされていて、一日千円ずつもらうそうです。日曜日はありません。朝と夜は出るけれども、昼はないので、その千円で昼を食べています。そういう状況ですから、日曜日のもためておかなきゃいけないわけですから、仕事を見つけに行こうにも電車賃がないわけですね。電車で行かなきゃいけないような、割と交通の便の悪そうなところに施設があるんです。
 この三番目の写真を見てください。この施設は上下水道がないんです。管が出ていますね。川に垂れ流しをしています。そんな劣悪な環境です。この下の二つの写真もありますが、これは全部違う施設なんですが、佛岳山善弘寺と書いてあります。もともと宗永寺という名前でやっていたんですが、福島県の宗教法人を多分買収したんだと思いますが、今は善弘寺の宿坊という形でこの施設をやっているんですね。
 はっきり言って、この状態を放置していくのはいかがなものかと思うんです。
 例えば、この施設は、第二種福祉事業である無料低額宿泊所という建前で行われているんです。無料低額宿泊所というのは、法律によりますと、「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」と書いてあって、食事の提供や、ましてや金銭管理などというものは想定をされていないわけですね。食事の提供や金銭の管理を行うという施設であるならば、それは本来、生活保護法における救護施設や更生施設に当たるのではないかと思うわけです。
 仮に、これが生活保護法の施設で、第一種の福祉事業だということになれば、社会福祉法人じゃないと民間は設置できないわけですし、認可も必要になってくる。こういう位置づけで考えれば規制の対象になるのではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 私も、初鹿委員の「貧困ビジネスの現場に突撃」というフェイスブックを拝見させていただきました。現場に乗り込んでいらっしゃって、本当に先生が御苦労なさっている姿が切々とここに記されていらっしゃいまして、先生の熱意に満ちたお仕事ぶりに感服いたしました。
 まず、御質問にお答えさせていただきます。
 保護施設は、福祉事務所の措置によりまして、身体や精神に障害のある生活保護受給者等を入所させるものでありまして、この入所者はその生活の大部分を施設の中で営むということでありますので、その性質を踏まえまして、社会福祉法上、第一種社会福祉事業に位置づけまして、これは、より強い公的規制の対象とさせていただいております。
 一方で、今話題になっております無料低額宿泊事業、こちらの方は、生活保護受給者本人が、自由な意思に基づいて、事業者と契約を結んで利用する事業でありますので、これは事業者の自主性や創意工夫を生かした事業運営を重視するものでありまして、食事等の提供もしているということも含めまして、第二種の社会福祉事業として位置づけさせていただいております。
 しかしながら、今、事例で示されたように、第二種社会福祉事業におきましても、その事業の適切な運営を図り、いわゆる貧困ビジネスと指摘を受けるような、利用者への不適切な処遇を是正することはとても重要であると考えておりまして、この無料低額宿泊事業につきましては、その運営に関するガイドラインを昨年の四月に改定させていただきまして、その事業の適正化に取り組んでいるところであります。
 ガイドラインの改正によりまして、都道府県知事が、無料低額宿泊所として調査や事業の制限、停止命令ができること、これを明確化させていただきました。
 以上です。

○初鹿委員 ガイドラインをつくったということなんですが、もっと驚くべきことに、この施設の中の幾つかは届け出をしていないわけですよ。ですから、第二種福祉事業にも当たらないわけです。でも、役所は、そこに入るということで生活保護の申請をしてくると受けざるを得ない。雨露をしのぐ場所がない人たちに帰れというわけにいかないと。
 私は、少なくとも、無届けであるなら、そこで生活保護をかけるということはストップをして、ほかのアパートなり別のところを探してくるように、またはケースワーカーがあっせんをするなりする必要があるんじゃないかと思います。
 無届けのところで生活保護をかけて暮らさせるということを、運用で何とか認めないようにはできないものなんでしょうか。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 無料低額宿泊所の届け出を出していない施設には、現に、生活保護受給者だけではなくて、生活困窮者の方も利用しておりますので、無届けであることをもって一律に生活保護受給者の利用を認めないことは適切ではない、このように考えております。
 ただ、一方で、先ほどお話しさせていただきましたけれども、無料低額宿泊所に該当する事業が適切に行われていない場合もありますので、ガイドラインを昨年の四月に改正させていただきました。
 あと、自立のお話もございました。
 無料低額宿泊所につきましては、自立に向けて生活を立て直すために一時的な利用を想定しております。
 ということで、無料低額宿泊所の届け出を出していない施設に入所しており、そして、今入っているんですけれども居宅生活ができると認められる生活保護受給者に対しては、これは自立をしていただきたいわけでありますから、敷金や引っ越し費用の支給などの支援を行うとか、あと、適切な住まいを確保するために、不動産業者への同行等によって民間アパートへの入居支援を行う、これは居住の安定確保支援事業ということで、平成二十八年度から事業を拡充してきておりまして、今、引き続き、自治体の取り組みに積極的に努めていただけるようにしております。予算規模は、平成二十八年度は五・三億円、前年度は二・七億円ということでございました。
 ということで、今後とも、こうした取り組みにより、生活保護受給者が適切な住環境を整えた住居に居住できるように努めてまいりたい、このように考えております。

○初鹿委員 なかなか難しいということもわかるんですが、やはりこのままの状態というのはよくないと思うんですね。
 もう一つは、金銭管理がされているということですよ。保護費を全額、封も切らずに、だから、みんな、多分自分が幾らもらっているかわからないんですよ。封も切らずに全部集められて、毎日千円、ある施設は五百円というところもあるんですよ。それで自立なんてできるのかということです。
 あと、私が入所者の方々とお話をした限りだと、どうも職員がかなり高圧的なんだと思いますね。職員のことを恐れて、余りしゃべると怒られてしまうということです。ケースワーカーの方が訪問をしてきちんとケースワークをするということは、多分事実上難しくなっているんじゃないかと思います。ですから、なかなか転宅も進まないんだと思います。
 金銭管理ですけれども、中には確かにアルコール依存だとかそういう人で必要な人もいると思いますが、全員一律にやるというのは私はいかがなものかと思うんですよ。
 入所をされている方々の年齢層も、私は結構高いのかと思って行ったら、意外と若いんですよ。三十代、四十代ぐらいが非常に多くて、四十代、五十代前半ぐらいの、どう見ても働けるだろうという、しかも障害があるとは思えないような方がたくさんいました。その人たちまで金銭管理をされるというのは私は問題だと思うんです。
 せめて、金銭管理をするなら、金銭管理の計画書みたいなものと、あと理由書をきちんと添えて、それを認めた上でじゃないとさせないというようにしないといけないんだと思うんですよ。
 これは、民民の契約でお互いが合意をしているからいいなんという話にはならないと思いますが、金銭管理をする場合に金銭管理計画書のようなものの提出を求めるということはできないんでしょうか。

○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
 生活保護受給者が、施設との契約に基づいて、交付を受けた保護費の管理を施設等に委託すること、これはあり得るものと考えております。
 ただ、この場合におきましても、本人の意思に反して強制的に保護費が差し引かれるようなことがあってはならない、このように考えております。
 このため、福祉事務所では、生活保護受給者本人から金銭管理の依頼の事実を書面で確認すること、あと、具体的に金銭管理の方法や、さらに施設から本人への定期的な報告等についての把握に努めております。
 さらに、本人の自立を促す上で、金銭管理支援を受けることの必要性を常に検討し、必要に応じて契約の解除等の助言指導等を行うようにさせていただいております。
 また、生活保護受給者の自立の助長の観点から、特に家計管理の支援が必要と認められるケースにおきましては、福祉事務所が社会福祉協議会やNPO法人に金銭管理支援を委託し、月々の生活保護費を複数回に分割して手渡しするケースもありまして、こういった細やかな取り組みを自治体に促しているという状況でございます。

○初鹿委員 厚労省の立場からするとそう言わざるを得ないんだとは思うんですが、そうはいっても、やはり現場は怖いんですよ、きっと。
 ですから、本当に、法律できちんと規制をして、この事業は許可または認可なりをとらないとできない、そして、きちんとある程度の強制力を持って、違反をしている場合に停止命令が出せるようなことにならないと、なかなか現場は対応し切れないんだと思うんですね。
 ですので、やはり私は、貧困ビジネスのようなものをきちんと規制していく、そういう法律が必要だと思いますが、大臣、ぜひ私は閣法でつくっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○塩崎国務大臣 先ほど、初鹿委員みずから出向いて現場を見ていただいて、問題点をえぐり出していただいているということは、大変私も敬意を表する次第でございます。
 いわゆる貧困ビジネスとして、生活保護受給者を狭い部屋に住まわせて、そして利用料を不当に徴収する、あるいは施設側で本人同意がないままに金銭管理をして直接利用料を天引きするといったようなことは、これは処遇の観点からあり得ない話で、問題があるんだろうというふうに思います。
 無料低額宿泊所、もともとは慈善事業的に始まっていったはずのものでありますけれども、これについての事業運営が適切になされるように、運営ガイドライン、先ほど御答弁申し上げましたように、宿泊所の設備や運営等に関する基準というのを示して、都道府県知事が事業所に対する指導監督を行っている形を明確にしているわけであります。
 またさらに、施設によって金銭管理が行われている場合には、今お話がありました、本人の意思に反して生活保護費から利用料が差し引かれることがないように、福祉事務所が、きちっと本人の同意に基づいて適切に管理をされているかどうかを確認する、これが必須だと思います。それで、本人に対して家計管理に関する支援も行い、先ほどの写真にあったような劣悪な施設に居住する受給者については、より適切な住宅への転居を支援するということが必要なんだろうと思います。
 法律を閣法でつくるべきではないのか、こういうお尋ねでありますが、先ほどとかしき副大臣から答弁申し上げましたように、貧困ビジネス対策については、事業所に対する規制だけではなくて、生活保護受給者が安心して生活できる場の確保とか、あるいはケースワークをもっともっと丁寧にやるとか、そういう支援の方をあわせて充実していく必要があるのではなかろうか。
 こうした観点に立って、これまでの取り組みの効果を検証していくことが大事で、さらに、先ほど申し上げたように、よい施設というのは本来あるはずなんですね、ですけれども、必ずしもよくない施設がばっこしているということが混在しているもので、それをどう、いい施設を応援して、だめな施設、好ましくない施設をディスカレッジするかということをどう上手に有効にやるかということが大事なんだろうということなので、先ほど申し上げたように、いきなり規制だけでいくとなると、いいところまで規制されないようにしなければいけないという問題をどう解決するかということは、なかなか簡単なことではないかもわからないということなので。
 今先生が、まさに自分で行っていただいて、現場の一つのパターンというものをよくごらんになっていただいて、本質を見抜いていただいているんだろうと思いますが、こういう実態を、きちっと自治体の意見も、今の話を聞いておりますと、言えないこともあるようでありますから、そこの本音を聞いて、それで、では一体何を国としてできるのかということを考えていかなきゃいけないのかなということで、改めてこの問題の重要さということを感じさせていただきました。