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190-参-厚生労働委員会-3号 平成28年03月10日

○津田弥太郎君 民主党の津田弥太郎です。
 本日の厚生労働委員会、対政府ということで、実質的な論議は昨年の九月十五日以来、実に六か月ぶり、半年ぶりでございます。この間、厚生労働行政に関わる分野において様々な事件が多発をしたわけであります。昨年中に限っても、マイナンバー関連汚職による厚労省職員の逮捕、化血研の不正製造問題、福島第一原発作業員の労災問題、日本年金機構の空き宿舎問題、GPIFの運用問題、ワタミの過労自殺訴訟問題、数え上げれば切りがないわけであります。また、一億総活躍の緊急対策につきましても、育児、介護、最低賃金など、厚労省が中心になって取り組む課題ばかりであります。
 こうした状況を踏まえ、我々は一致結束して野党は臨時国会の召集を求めましたが、政府は応じなかったわけであります。言うまでもなく、国会は国権の最高機関でありますが、これだけ長い期間、半年間、しかも重要課題が山積する中で国民の声を政府に伝える役割を国会が適切に担えることができなかった、これは大変禍根を残すものだというふうに私は考えるわけであります。私は、総理や他の大臣がどんなに逃げ腰であっても、塩崎厚労大臣は、あなたは国民のために臨時国会の召集を強く主張すべきであったのではないかということを申し上げておきたいというふうに思います。長期間にわたって国会が開かれなかったしわ寄せは、間違いなく厚労分野で最も顕著に生じているわけでございます。
 具体的な課題に対する質問に移らせていただきますが、まずは、今日資料も配付をいたしておりますが、労働移動支援助成金を悪用した企業のリストラ強要の問題であります。
 これ、まさに起こるべくして起こった問題であります。安倍政権において、パソナの会長である政商竹中平蔵の主導の下、本助成金が異常に拡充されてきたわけであります。
 私は、一昨年の本委員会において、あしき人材ビジネスによって労働移動そのものが自己目的化してしまうという懸念を訴えさせていただきました。同じ時期に我が党の石橋議員も、これはリストラ支援助成金ではないか、そのような批判を予算委員会で行っているわけであります。私の質問に対して、当時の田村大臣はこう述べました。我々は不必要なリストラをどんどん企業に勧めるような類いの助成金ではないという認識の下でしっかりと対応してまいりたいという答弁でした。
 しかし、現在問題になっている王子グループとテンプスタッフとの事例においては、厚労省の対応は極めて不十分であったわけであります。昨年段階で厚労省は王子側と協議を行っておりますが、この日以降も王子側は一体何が問題なんだという態度に出ているわけです。これはもう新聞紙上で明らかになっております。
 私は、長年、機械金属関係の労働組合で仕事をしてきました。会社の業績が悪化し、そのために様々な対応をする、しかし、それでもどうしても生首を切らざるを得ない、そういうことはたくさんございました。まさに会社を辞めるのも地獄、会社に残るのも地獄、そういう中で懸命の選択をしてきたわけであります。従業員の生首を切る以上、経営者も自ら、あるいは経営幹部も自ら退任をする、そういうことの中で納得性が生まれてくる、これがこれまでの人員整理の普通の姿でありました。
 しかし、今回の王子の場合、人材ビジネスに丸投げをして、経営者が生首を切る痛みを感じることなく労働移動支援助成金をもらって、まあちょっと言い方は悪いですが、うはうはしている、こんなばかなことは許せないわけであります。
 王子グループは、我が国の代表的な企業の一つであり、当然に日本経団連の一員ではないかと思うわけでありますが、王子ホールディングスの進藤清貴会長は、経団連の中で何か役職に就かれているのではないかと私は思うんですが、三ッ林政務官、いかがですか。

○大臣政務官(三ッ林裕巳君) お尋ねの方の日本経済団体連合会における役職は、同連合会のホームページによれば、雇用政策委員会の委員長と承知しております。

○津田弥太郎君 何と経団連の雇用政策委員会の委員長、これを務める企業がこのような許し難い行為をしている。これ、唖然、茫然、考えられない。模範を示さなければならない雇用政策委員会の委員長が模範ではなくてあしきことをやっている、これ大変大きな問題であります。
 私ども民主党は、王子ホールディングスにおける退職強要の有無の調査を厚労省に求めてきました。今週の月曜日になって割としっかりしたヒアリングを行うことを確約していただきましたが、この点は一定程度評価するものでありますけれども、この調査結果に基づいて王子ホールディングスに対して様々な制裁が行われるのは私は当然だというふうに思うんです。
 これ、三ッ林政務官、本当に有料職業紹介所、テンプスタッフ、このテンプスタッフは有料職業紹介所として三年間有期で許可はあるわけですが、次の満期の期日はいつになっていますか。

○大臣政務官(三ッ林裕巳君) テンプスタッフキャリアコンサルティング株式会社の現在有効な許可の期限は、平成二十八年七月三十一日であります。

○津田弥太郎君 平成二十九年。

○大臣政務官(三ッ林裕巳君) 八年。

○津田弥太郎君 八年。もう間もなくですね。
 実は、二月二十九日の衆議院予算委員会で安倍総理はこのような答弁をされました。再就職支援会社は、リストラにより離職を余儀なくされる方々などの円滑な再就職を支援することが使命でありまして、自ら退職者をつくり出すようなことは趣旨に反するものであります。さらに、再就職会社は、退職強要に加担することは職業紹介事業者の業務として好ましくない、こういうふうに総理は答弁をされておりました。
 私は、趣旨に反するとか好ましくないとか、そんなレベルの話ではないだろうというふうに思っているわけであります。何のために有料職業紹介事業が許可制になっているのか。
 テンプスタッフの許可取消しについては、昨日の衆議院の厚生労働委員会でも初鹿議員が取り上げました。たとえ悪質な有料職業紹介事業所であっても、職業安定法に限定列挙された事由に該当しなければ許可の取消しはできないということでありました。
 許可の取消しが難しいのであれば、三年の許可期限が到来した場合、今年の七月末ということでありますが、次回の更新は行わない。これならば、初鹿議員も指摘をしたように、職業安定法第三十一条の当該事業を適正に遂行することができる能力を有することを満たさないということを根拠にして間違いなく私は可能だというふうに考えるわけです。
 大臣、しっかりした対応をいただくことをここで確約してください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほどお話がございましたように、再就職支援会社というのは、リストラによって離職を余儀なくされる方々などの円滑な再就職、これを支援するということが使命で、積極的に退職者をつくり出すというようなことは趣旨に反するということは総理からも答弁申し上げたとおりでございます。
 このため、再就職支援会社が企業の労働者に対してその自由な意思決定を妨げるような退職強要、これを実施したりすることは許されない。さらには、企業に対して積極的に退職勧奨の実施を提案をしたりすること、これも適切ではないだろうというふうに考えておりまして、そういった旨の通知を発出することを目下検討をしているところでございます。これらの内容の周知を図ることでそのような事案の発生の防止に努めるとともに、それらの行為を把握した場合には適切に行政指導を行わなければならないと考えております。
 個別の企業の許可の更新については、これは個別の事案でございますのでお答えは差し控えたいと思いますけれども、許可の更新については法律に基づく許可基準、これに照らして判断をすることになっております。審査に当たっては、今回の事案も踏まえて許可基準に適合するか否か丁寧に審査をしてまいりたいと考えているところでございます。

○津田弥太郎君 許可を更新しない可能性もあるというお話でございます。
 ちなみに、私ども民主党の調査では、このテンプスタッフは、王子ホールディングスの前にはフジクラ電線、その前にはNECソリューションで同じような退職強要を含めたリストラに参加をしてこの支援金をもらっているという事実が判明しておりますことも申し添えておきたいというふうに思います。
 厚労省は、今回の事件を受けて、王子への調査のほかにも様々な対応策を講じるということを我が党の部門会議では明らかにされているわけであります。その中の一つに、労働移動支援助成金については、再就職支援会社に再就職支援サービスを委託するリストラ企業が、その再就職支援会社から退職コンサルティングを受けていた場合には助成金を不支給とするというものがございました。
 私は、それは一定の評価をしますが、これでは不十分だと考えます。なぜ再就職支援サービスと退職コンサルティングが一致した場合だけ助成金の対象とするんでしょうか。これは、例えばテンプスタッフとパソナが結託をして、片方が退職コンサルティングをしてリストラを積極的に進め、もう片方が再就職支援を行うということが可能になります。あの業界はそのぐらいのことは平気でやる業界です。この場合、テンプスタッフとパソナの両社が意を通じていたことを証明することなど極めて困難であります。
 リストラされる労働者の視点で考えれば、退職コンサルを行う会社と再就職支援を行う会社が同じであるかどうかということはほとんど意味のない話でありまして、不必要な退職者を人材ビジネス会社が積極的につくり出し、その後に業界を挙げて再就職支援で大もうけをすると、こういうビジネスモデルです。こういう人材ビジネス業界の業務拡大に雇用保険財政から支給される労働移動支援助成金が用いられるということを、私は断じて認めるわけにはいかないというふうに考えます。
 大臣、この再就職支援サービスを委託した会社とは別の会社から退職コンサルティングを受けた場合にも助成金の対象外とする、これでよろしいですね。

○国務大臣(塩崎恭久君) 再就職支援会社に再就職支援サービスを委託をして労働移動支援助成金を受給するリストラ企業が同じ再就職支援会社から退職コンサルティングを受けることは、リストラによって離職を余儀なくされた方々の再就職の支援を行う企業を助成するという本助成金の趣旨に沿わないということでありまして、このような場合には労働移動支援助成金を不支給とするように速やかに措置をすることとしたいと、こう我々は考えて、御党でもその旨をお告げをしたということでございます。
 本助成金につきましては、労働移動をする方の希望に沿った円滑な移動ということが実現できることが大事でありまして、制度をより良いものにしていく必要があると考えておりまして、この中身についても不断の検討、改善、要件などについて考えていきたいと思っているところでございます。
 今、津田議員から御指摘をいただいた再就職支援サービスを受託した会社とは別の再就職支援会社から退職コンサルティングを受けた場合の御懸念についてのお話いただいたわけでございますけれども、その確かに懸念は理解を申し上げるところでございます。
 今後、今申し上げたように不断の見直しをしていこうということで、労働移動そのものについては、我々は、やはり付加価値の低いところから高いところに労働移動すること、産業構造が変わること、これは大事なことでありますから応援をしなければいけないと思っておりますけれども、その趣旨に反するような使い方をするようなケースが見られるようでは、これはやっぱり改善をせないかぬということで、この本制度をより良いものにする検討の中で今御指摘をいただいた点については十分に検討をさせていただきたいというふうに思います。

○津田弥太郎君 検討というお話でございますが、必ずペケになるように検討を進めていただきたいと思います。
 次に、資料を配らせて、二枚目、いただいておりますが、ブラック社労士問題について質問をいたします。
 自らのブログに社員をうつ病に罹患させる方法と題する驚くべき文章を載せていた愛知県のブラック社労士に対して、先月、厚労省は社会保険労務士の業務停止三か月の懲戒処分を行いました。
 まず冒頭、どのような理由で当該処分を出されたのか、また、そもそも社労士に求められる社会的役割とはどのようなものなのか、とかしき副大臣、お答えください。

○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
 私もブログの内容を拝見いたしまして、本当に愕然といたしました。
 ということで、御指摘の事案につきましては、労働関係法令を遵守することやメンタルヘルス対策の重要性、これ今、社会的に大変共有される、こういった中におきまして、労働関係の専門家でありながら、それに真っ向から反する内容を公に発信したということで、この責任は大変重大であると、このように考えております。
 ということで、今回の処分は、労働関係の専門家である社会保険労務士に課せられた社会的責任の重要性を重く捉え、社会保険労務士のほか、ほかの他士業、さらに国家公務員の過去の懲戒処分事例の量定と、そして均衡も踏まえた上で三か月の業務停止、これが相当として処分をさせていただきました。参考までに、愛知県の社会保険労務士会は、退会勧告、そして三年の会員権停止の処分を決定いたしております。
 あと、もう一つ、お尋ねのありました社会的役割についてお答えさせていただきます。
 労務管理その他の労働に関する事項の相談、指導が社会保険労務士の業務でありますけれども、この業務に当たりましては、社会保険労務士法におきまして、常に品位を保持し、さらに公正な立場でなければならないと、このように記されております。また、この職責に鑑みてみれば、事業主や働く方に労働、社会保険諸法令の厳守を求めていくとともに、公正な立場で業務に当たることにより、適正で円滑な労使関係の維持を図ることが社会保険労務士の重要な社会的役割であると、このように考えております。

○津田弥太郎君 ありがとうございました。
 当該の社労士は懲戒処分の取消しを求めて名古屋地裁に提訴をしているようであります。私は、訴えられたからといって、間違っても厚労省は弱腰になってはいけない、毅然とした態度で対応していただきたい、そのようにお願いをしておきたいと思います。
 私は、一昨年のこの社労士法改正の際、質問に立ちまして、大幅な業務の拡大を行う場合には、当然にそれに見合う綱紀粛正策もセットで法案に盛り込むべきだというふうに述べさせていただきました。そもそも、社労士法の目的といえば、第一条にあるように、「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。」、こういうふうに常に書いてあるわけであります。今回の愛知県の例なども、労働者の福祉の向上どころか、その真逆のことを、今とかしき副大臣おっしゃいましたが、やっているわけであります。
 また、社会保険労務士法の第一条の二には、社労士の職責として以下のことが明確に定められています。社労士は「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。」、この公正な立場で誠実にという文言が指す意味は、企業内で労使の利害対立がある場合には、お金をもらっているから経営者の利益だけを追求するということではなく、まさに社労士法の第一条にある事業の健全な発達と労働者の福祉の向上、この双方を目指していかなければならないということだと考えるわけであります。
 この点、最近顕著なのが、一〇〇%会社側の立場で、あるいは完全一〇〇%経営者側の立場でということをうたい文句にして企業に売り込みを掛ける社労士が多発していることであります。これは、東京、広島、兵庫、岐阜、愛知、茨城、神奈川など全国に広がりつつあるわけでありますが、こうした状況を放置した場合には、ブラック社労士は、ひたすら労働者の権利を切り下げ、人件費の削減のみを経営者に指南し、その結果、労働者の福祉の向上とは真逆の方向に中小企業の現場が進んでいくのではないかと懸念をするわけであります。
 大臣にお尋ねをします。不適切な情報発信を行うブラック社労士に対して今後どのような対応を取られるおつもりか、お答えください。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほどとかしき副大臣から御答弁申し上げましたように、この社労士については、労働関係の専門家でありまして、この社会保険労務士法の第一条、それから第一条の二、今お取り上げをいただきましたけれども、まさにこれに書いてあること、明記されていることをしっかり遵守するということが極めて大事だというふうに思います。
 厚労省としては、公正さを欠き不適切な情報発信を行う社会保険労務士に対しては、意識改善を促すとともに、悪質なケースについては今回のように懲戒処分を行うなど厳正に対処をしているところでありまして、今後ともしっかり対応してまいりたいというふうに考えております。
 また、社労士の品位の保持などのために社会保険労務士の指導等を行うこととされている全国社会保険労務士会連合会、これに対しても、社会保険労務士法の中で連合会のことを第二十五条の三十四というところで法律に定められておりますけれども、会員の品位を保持する、あるいは会員の指導をすると書いてあるわけでありますので、このような不適切な情報発信の防止を求めるなど、社会保険労務士の業務が適正なものとなるように努めてまいりたいと考えております。

○津田弥太郎君 しっかり取組を進めていただきたいと思います。
 大阪はかなりしっかりした対応が行われているというふうに私も聞いているんですが、ほかの県では必ずしも十分な対応がまだ行われていないというふうに承知をいたしております。私は、社労士の皆さんが間違っても法律を突破するようなことがあってはならないし、倫理を守って適切に職務を行ってほしいと考えます。
 懲戒処分権を持つ厚労省が仮に適切な役割を果たすことが難しいならば、むしろ弁護士会を見習って社労士会の連合会の法的権限を強化する形で綱紀粛正を行うことも私は検討すべきではないかというふうに思うわけであります。是非、大臣、今後の検討課題に加えておいていただければと思います。
 もう一点、ブラック社労士に共通していることは、厚生労働省の作成しているモデル就業規則を全面的に否定していることです。あんな就業規則を使うな。すごいですよ。そういうことをもう堂々と発言しているわけであります。そんなに厚生労働省の作ったモデル就業規則ってひどいのか、私には到底そういうふうには思えないんですが、そういうふうに誹謗中傷をしているわけであります。
 私は、この機会に厚労省としてモデル就業規則の周知徹底を図る、そのことが強く求められているというふうに考えるわけですが、とかしき副大臣、いかがでしょう。

○副大臣(とかしきなおみ君) 御指摘の件、ごもっともでございます。
 厚生労働省が作成しておりますモデル就業規則、これは、就業規則を作成する上で注意すべき事項や、さらに記載例、これを示させていただいておりまして、これを参考にすれば労使関係のトラブル防止に資するということで、就業規則の作成の負担が軽減されるものと、このように考えております。
 厚生労働省といたしましては、企業にこのモデル就業規則を積極的に活用していただきたいというふうに考えておりまして、現在、監督指導の際に必要に応じて企業に紹介するとともに、さらに厚生労働省のホームページで広く周知しているところでございます。
 今日、津田委員の方からも周知にもっと力を入れるようにというふうに御指摘いただきましたので、それで、二つちょっと改善していこうと今考えております。
 まず一つ目は、労働基準法等について使用者の労働者向けに分かりやすく説明したここのポータルサイト、今ホームページ非常に分かりにくいという声がいただいていますので、ポータルサイトの中で、「確かめよう労働条件」、ここに記載して見付けやすくしていこうということがまず一つ目。あと二つ目は、社会保険労務士会にも改めてモデル就業規則の有用性を周知するなど更なる徹底を図っていきたいと、このように考えております。

○津田弥太郎君 しっかりと進めていただきたいと思います。
 次に、最近、総理がよく発言をされる同一労働同一賃金の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 一月二十二日の施政方針演説において、安倍総理はこのように発言を行いました。本年取りまとめるニッポン一億総活躍プランでは、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えであります。すごいです。この発言以降、多くのマスコミで同一労働同一賃金が社説で取り上げられ、また特集記事も組まれることになりました。ここにいる方は御存じですが、昨年の通常国会、労働者派遣法の質疑の際、あれだけ我々が同一労働同一賃金や均等待遇の実現を求めたにもかかわらず、逃げ腰だった政府が一体どのような方針転換を行ったのか、非常に私は関心があるわけでございます。
 しかし、一昨日の塩崎大臣の所信においては、同一労働同一賃金の実現に向け、一億総活躍国民会議での議論も踏まえつつ、諸外国の実態等を把握し、精力的に検討を進めますというふうにおっしゃったわけであって、派遣法の際の答弁から前進していないように見受けられるんですよ。派遣法のときの附帯決議でもこのこと書いているんですよ。だから、全然前進していない。だから、こんな答弁は別に今更言われても困るわけです。
 昨年の通常国会時点と現在とを比較をし、同一労働同一賃金についてどのような方針転換が政府内で行われたのか、この違いについて具体的かつ明確なお答えを大臣いただきたいんですが。

○国務大臣(塩崎恭久君) これまでも、同一労働に対しまして同じ賃金が支払われるという仕組みについては、特に非正規雇用労働者の待遇改善という面で一つの重要な考え方であるというのは、総理からも私からも何度か申し上げてまいったところでございます。同時に、我が国の雇用慣行になじまないのではないかという意見があることも承知をしているわけでありまして、よく出てくるのが、ヨーロッパにおいては、職務の困難度や重要度を基準に賃金を決定するいわゆる職務給が中心であるけれども、我が国においては、単なる職務内容ではなくて、勤続年数とかあるいは職務を遂行する能力を加味をして賃金を決定するいわゆる職能給というのが一般的であるということがよく取り上げられてまいった論点であったと思います。
 こうした中で、安倍総理は、女性や若者などの多様で柔軟な働き方の選択を広げる、このためには非正規雇用労働者の待遇改善を更に徹底していくことが必要であって、ニッポン一億総活躍プランにおいて、働き方改革として同一労働同一賃金の実現に踏み込むということにしたところでございます。
 今後の進め方については、一億総活躍国民会議で御議論いただいた上で、この春に取りまとめる予定でございますニッポン一億総活躍プランにおいて、同一労働同一賃金の実現に向けての方向性を示すということにしているところでございます。これまでも非正規雇用労働者の待遇改善の実現に取り組んでまいったところでございますけれども、我が国の雇用慣行に十分これは留意をしつつ、同時にちゅうちょなく法改正の準備を進める、さらに、あわせて、どのような賃金差が正当でないと認められるのかについては、早期にガイドラインを制定をして事例を示してまいりたいと思っております。
 一億総活躍国民会議における安倍総理の指示に基づいて、今後、厚生労働省と内閣官房で協力をして、法律家などから成る専門的立場の皆様方による検討の場を立ち上げて、諸外国の実態等を踏まえるなど、多角的、精力的に検討してまいりたいと思っております。
 なお、この同一労働同一賃金の主要な目的は、非正規雇用で働く方の待遇改善でありまして、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図る方向で検討すべきものと考えているところでございます。

○津田弥太郎君 ガイドラインごときで物事が変わるわけじゃないんですよ。
 だから、結局、今大臣も本当の意味での中身を明らかにされていないわけです。事務方も実は私に説明できませんでした。どういう中身を持っているんだと聞いても、むしろ、官邸から言われたのでこれから検討したい、こういう話でありまして、この問題は議論を始めるともうすごく時間が掛かりますので、今後の様々な審議の中で明らかにしていきたいと思います。
 話題を変えます。身寄りのない高齢者に対する支援の在り方の問題でございます。
 今日は、内閣府の松本副大臣に御出席をいただいています。お待たせをいたしました。
 松本副大臣、内閣府が所管する公益財団法人日本ライフ協会においてどのような問題が生じ、内閣府はどのような対応を行ったのか。あわせて、今回預貯金を預けた高齢者は、公益法人という国がお墨付きを与えている団体だからよもや間違いはなかろう、そのような思いを抱いたはずであります。しかし、現実は、被害が拡大するまで行政のチェック機能は働かず、その結果、高齢者に少なからぬ被害を生ずることになったわけであります。
 松本副大臣、二点目ですが、監督官庁としてなぜ今回の事件を食い止めることができなかったのか。
 内閣府の公益法人に対するチェックの実態を含めて、二点お答えをください。

○副大臣(松本文明君) 公益財団法人日本ライフ協会が起こした事件でありますが、問題、大きく分けて二点あると思っております。一点は、そのサービスを受ける利用者の方々が預託金をライフ協会に預けるという制度でありますけれども、この預託金の管理をやるに際して、ライフ協会とサービスを受ける利用者と、そこに弁護士さんなどの第三者を加えた三者契約でなければならないというのが公益認定の条件でありました。この三者契約というものを全く無視して、ライフ協会、法人そのものが直接預託金を管理をするという公益認定違反というのが第一点であります。二つ目は、あってはならないことでありますが、この当該預託金を流用して不足額を生じさせている。これが内容であります。
 そして、これを内閣府がどういうふうに対応してきたのかという御質問でありますけれども、内閣府といたしましては、平成二十五年頃からこうした不正が行われていたようでありますが、この兆候を最も早く見付ける方法は、今の制度上、二十六年六月に提出された二十五年度事業報告、これを見て不正の端緒をつかむしか制度上方法がないわけでありますが、内閣府は、二十五年度の事業報告を受けた後、その報告書の中からその端緒をつかんで、これはどういうことになっているのかといったような報告を再三にわたって求め、なおかつ、契約方法ですとかあるいは不足額等々をどういうふうに補填をするつもりなのか、できるのかと、こういったことについて指導を今日まで続けてきたところでありますが、この法人が民事再生法の手続開始の申立てを行ったことから、経理的基礎を失ったものとして公益認定の取消し勧告が行われたところであります。
 以上です。

○津田弥太郎君 内閣府の対応ではこうした事件を食い止めることは制度上苦しかったと、そういうお話であります。
 内閣府というのはそういう役所で、実動部隊を持っておりませんからやむを得ないのかなというところは分からないでもないわけであります。
 このライフ協会の場合、その主な業務は、医療や福祉サービスにおける身元保証、それと死亡後の葬儀、この二つなんですね。
 太田政務官にお尋ねをしたいんですが、この身元保証と死後事務について、それぞれ同じ業務を行っている事業者の実態把握というのはされているんでしょうか。

○大臣政務官(太田房江君) 今御指摘のございました身元保証や死亡後の葬儀などの業務を行っている事業者につきましては、残念ながら網羅的には把握はしておりません。一部の社会福祉協議会が有償サービスとして見守りや預貯金の払戻し、入院、入所時の支援、死後の葬祭時の支援を包括的に提供しているという事例は把握をしております。

○津田弥太郎君 残念ながら、厚労省のみならず、現時点ではいずれの省庁もこの身元保証と死後事務についての実態把握をしていないんです。ぽっかり穴が空いている。
 このうち身元保証については、そもそも、高齢者が病院や施設の入院、入所を希望した際、身元保証人がいないことはサービス提供を拒否する正当な理由には当たらないんです。しかし、実際には二割以上の病院や施設において、保証人がいなければ入院、入所を認めないという対応がされていることは、これは極めて大きな問題ではないかというふうに考えるんです。逆に言えば、保証人を求めることなく事業を適切に行っている病院、施設もあるわけですから、そこを好事例として研究して、現在の状況を早期に改善していただきたいというふうに考えます。
 この点、今週月曜日に厚労省で行われた都道府県等の担当者会議で、指導や監督権限のある自治体に対し、不適切な取扱いを行うことのない対応を求めたというふうに聞いております。一歩前進というふうに受け止めたいと思います。
 しかし、一点疑問に思うのは、身元保証人がいないことをもってサービス提供を拒んではならないという根拠規定の仕組み、これであります。医療については、医師法第十九条において、診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならないと明確に規定をされているわけであります。一方、介護については、指定介護老人福祉施設は、正当な理由なく指定介護福祉施設サービスの提供を拒んではならないと、内容的には医療とほぼ同じ規定があるわけですが、この大きな違いは、老人福祉法の本体に規定されているわけではなく、あくまでも指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準、これは厚労省令でありますが、そこに書かれているだけなんですね。大きな差があるわけです。
 厚労省の担当者の説明では、医療の場合には医師の免許に着目しておるので、介護は施設に着目をしていると。だから、これは介護についての規定を法律に書かない理由には全くなっていない、そんな問題ではないだろうと思うわけです。
 実際に介護の場合も省令を受けて各自治体は条例を制定しているので、効果には変わりはないということでありますけれども、法律に根拠規定があるとないとでは、効果が同じであるはずはないわけです。何より利用者である国民の視点に立ったとき、医療の場合はサービス提供が法律で担保されているのに介護の場合はそうでないということでは、医療と介護の連携という言葉もこれ掛け声倒れに終わるんじゃないか、こういう指摘になるわけです。
 今後、団塊の世代においてもますます医療と介護のニーズが急増するわけであり、次回の関係法律の改正の際、是非介護の分野でも医療同様にサービス提供拒否の規定を法律に盛り込むことを私は強く求めたいと思うんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) やや繰り返しになるかも分かりませんけれども、医療については医療の必要性、それから、適切な医療行為の判断の責任というのは原則として医師免許を有する医師が一律に負うと、こういう仕組みになっているわけでございますが、これが医師法において正当な理由なく診察治療を拒んではならないことの規定になっているわけでございます。
 一方、介護については、介護保険施設等では、入所者に対するサービス提供が適切かつ安全に行われるように一定の水準を担保するために、設備あるいは運営などについての基準が定められているということになっております。この中で、介護保険施設は正当な理由なくサービスの提供は拒否できないことが規定をされておりまして、この基準は介護保険法の委任によって省令のレベルで具体的に規定がなされているところでございます。
 今お話をいただきました医療と介護の違いについてでありますけれども、これについては、医師の資格や業務を規制する医師法と、それから介護保険の制度や給付を規定する介護保険法の、言ってみれば法的な性格とか、あるいは体系の違いから生じてくるものでございまして、規定のレベルは法律、省令で相互に異なってはおりますけれども、規定の趣旨は同じであるというふうに考えているわけで、これについては既に事務方からも御説明をしたとおりであります。
 まずは、その現行規定の適切な運用を確実に周知することが重要であると考えておりますけれども、しかし、今御指摘をいただいているように、この問題がやはり議論の上で必要ということであれば、法的な整理、あるいは介護現場からのニーズなども含めて審議会などで議論をさせてみたいというふうに思います。

○津田弥太郎君 これ、様々な議論が必要だというふうに思います。今、大臣は審議会で議論をしていきたいというふうにお話をいただきました。是非進めていただきたいというふうに思います。
 もう一方の死後事務、これなんですね。身寄りが全くなく、しかも近所付き合いというものもされておらず、文字どおり天涯孤独のお年寄りの方は大都市圏で更に増えていくことになる。独居老人、これ、どんどん増えていく可能性が高いわけであります。こうした中で、当事者にとっては、例えば自宅のアパートで死後長期間放置され、市町村に迷惑を掛けるのではなく、自らが蓄えたお金を生前に預託をして、せめて早期に埋葬をしてもらいたい、これ、素直な気持ちだというふうに思うわけであります。長年必死に生きてこられた方が、そうした安心感さえ持たずに最期の日々を送られるというのは、私は忍びないものではないかというふうに思うわけであります。
 この問題を厚生労働省に尋ねたところ、死後事務に多少関連した業務を一部の社協が行っている、高齢者に対する見守りということでは、介護保険制度の地域支援事業や民生委員による活動もあるということだそうであります。しかし、これでは天涯孤独のお年寄りの方々の願いに十分に応えるものとはなっておりません。
 核家族化が進んで単身の高齢者が急増する中で、今後こうした高齢者支援事業のニーズそのものはますます増加するはずであります。その意味では、こうした事業に何ら規制が掛からないということは私は大きな問題があり、しっかりとした所管省庁を決めていく必要がある。皆さん、実は所管官庁が決まっていないんですよ、この問題の。だから、役所はみんな俺のところじゃない、俺のところじゃないと言って逃げ回っている。ここから始めなきゃいけないんですよ。大変な問題なんです。
 そういう意味で、所管官庁というのは、大臣、申し訳ないけれども、揺り籠から墓場までですよね、揺り籠から墓場まで。これ、扱っているのはやっぱり厚労省以外には私はあり得ないではないかというふうに確信をするわけであります。大臣、官僚たちは嫌がるかもしらぬけれども、やっぱり大臣の決意で、この分野でしっかりとした対応を行う、少なくとも持ち帰ってしっかり検討する。いかがでしょう。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今後更に高齢化は進むわけでありまして、高齢者のみの世帯とかあるいは独居の世帯が増加することは必至というふうに思います。高齢者が地域で安心して日常生活を送れる、そういう環境づくりをするために見守りなどの活動が果たす役割が重要であることは、今、津田議員から御指摘をいただいたとおりだと思います。
 厚労省では、介護保険制度の地域支援事業において、今年度から住民同士による見守りなどの取組を推進する事業をスタートさせたところでありまして、先ほど石井委員からも新オレンジプランの話がありましたが、これはまさに認知症になってもちゃんと見守ることができるコミュニティーをつくろうということであったかというふうに思います。
 それから、今お触れをいただきましたけれども、民生委員が地域住民の生活状況を把握をして、そして見守りを行うということは、自然発生的にもうそういう形が町ぐるみで民生委員を中心にできているところも、私も地元などで感じ取っているところでございますが、いずれにしても、独り暮らしの高齢者も地域で安心して生活できるように取組を推進をしているわけであります。
 今、津田議員から、揺り籠から墓場までということで、その所管をする厚生労働省として、高齢者が地域で安心して生活できる環境づくりに向けて更に積極的に取組を進めていけと、こういうことで検討するようにということでございまして、そもそも取組自体はそういう方向でやっていきたいと思っております。
 こうした今申し上げたような自治体などにおける動きを具体的に見ますと、例えば足立区の社会福祉協議会、あるいは杉並区の社会福祉協議会、それから福岡市の社会福祉協議会などで、六十五歳以上の単身高齢者などを対象に見守りや預貯金の払戻し、それから入院そして施設入所のときの支援、あるいは亡くなられた後の葬祭等の支援を実施するということをやって先駆的な動きをしていただいているわけでありますが。
 こういった自治体等における事業とは別に、民間企業等による葬祭等への備えを支援するサービスもあると思われますし、それから、成年後見制度がございますが、法律自体は民法の範囲内ですが、利用者はこの厚生労働分野の案件がたくさん入っているわけでありまして、こうした事業を所管をするべきという御指摘でございましたら、民間企業等が行う事業については経済産業省あるいは消費者庁などの関係省庁も存在することから、厚生労働省としてさらに何が求められているかについて、関係省庁ともよく情報交換を行いながら、どういう枠組みがあり得るのかということを含めて検討を深めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○津田弥太郎君 終わります。ありがとうございました。

○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。よろしくお願いいたします。
 明日で三・一一東日本大震災から五年となります。被災地では、道路ですとか住宅の建設、こういった生活再建に向けた復興が徐々に進んできてはおりますけれども、いまだ復興と言うには道半ば、引き続きの取組が必要であるかと思っております。
 また、道路、住宅、そうしたハード面はもちろん重要でございますけれども、私たちは人間の復興ということをこれまでも訴えてまいりました。一人一人に寄り添っていく、心の復興を成し遂げていく、このことが重要ではないかと思っております。一人一人に寄り添う心、そうしたところで被災者の皆様の健康を支える、また地域でお仕事がなければなかなか町の復興も進まないわけでございまして、労働環境、こうしたことも重要かと思います。そういう意味で、厚生労働省の復興に果たされる役割ということも重要であると思っております。
 ところで、東日本大震災で大きな被害を受けました岩手県、宮城県で被災者の皆さんの健康に関する調査が行われております。
 厚労省研究班のメンタルヘルス、心の健康の調査によりますと、宮城県では、心理的苦痛を感じている被災者の方の割合というものは減少してまいりまして、一四・三%ということでございます。しかしながら、全国平均の一〇%を上回っている状態でございます。また、要介護認定者、これも五年前の六・三%から一六・二%ということで一〇%も上昇している。この増加率も全国よりも高い状況になっております。
 また、岩手県では、心理的苦痛を感じているという被災者の方の割合、これは全国平均と同じ程度まで回復してきておりますけれども、飲酒量の多い男性の方というのがやや増加傾向にあるそうでございます。また、仮設住宅に今もまだ多くの方が暮らしているわけでございますけれども、その方々の心の健康を見ますと、やはり少し割合が多い、問題のある方の割合が多いと、特に女性に顕著であるという結果が出ているそうであります。
 こうしたことで、まだまだ被災者の皆様のこうした心の健康、体の健康、こういったことを今後も寄り添って支えていっていただきたいと、このように思っておりますけれども、大臣は所信におきましても復興に向けての決意をおっしゃっておりましたけれども、改めましてその御決意を伺いたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 震災被災者の皆様方への対応については、安倍総理からも、一人一人が閣僚は担当大臣だと思ってやれということを聞いているわけであります。
 被災者に対する心のケア、そして避難生活の長期化に伴う健康状態の悪化の防止というのは、今先生御指摘のように大変重要であり、また、特に被災地におけるメンタルヘルスについては、宮城県では心理的苦痛を感じている人の割合が平成二十三年の一八・四%から二十七年に向けて一四・三%に減少はしておりますけれども、こういうような形で少し改善は見られておるわけでありますが、全国的な平均値から見れば、一〇・〇%という平均値でありますので、依然としてこれは高いというふうに我々は認識をしなければいけないんだろうというふうに思っております。特に、独り暮らしの高齢者など孤立しやすい方の健康リスクというものもかねてより指摘をされているわけであります。
 これまで厚労省では、岩手、宮城、福島の三県に活動拠点となります心のケアセンターというのを設置をいたしまして、心のケアに当たる専門職、これは保健師あるいはPSW、臨床心理士等々でありますが、被災者からの相談を受けて訪問支援、専門的医療支援等を行うとともに、このセンターから市町村や保健所への人材派遣、そしてまた保健師に対する研修会を行うなどの後方支援をやってまいりました。長期にわたって仮設住宅で暮らしていらっしゃる方についてのお話も今ございましたが、この健康状態の悪化を防ぐために保健師による戸別訪問をやっておりますけれども、こういう各種健康支援活動、それらを担う人材の確保、こういったことについても市町村に対して支援を続けているところでございます。
 東日本大震災から五年が経過をしているわけでありまして、被災者の心と体の健康状態を回復することは喫緊の課題であることはもう言うまでもないというふうに思います。地域の心のケアの専門家あるいは保健師による顔の見える戸別訪問を含めて、心と体の両面に対して必要な支援を厚生労働省としてもしっかりやっていきたいというふうに思います。

○佐々木さやか君 五年という月日が流れました。風化ということで、被災地の皆さんの苦悩ですとか、また復興への御苦労、こういったことが忘れられてはならないと思います。高齢化という問題も、これは月日がたてばたつほど深刻になっていくわけでございますので、今後とも引き続き被災地の皆様に寄り添った御支援をお願いをしたいと思います。
 次に、今日、午前中も石井委員より議論がございましたけれども、認知症の男性が列車の事故に巻き込まれて命を落とされたという事件をめぐりまして、最高裁判所が三月一日に判断を出しました。これは、鉄道会社が家族に対して監督義務を怠ったなどとして損害賠償を求めていた事件でございます。最高裁は、同居していた高齢の妻、また別居をしていた長男のいずれの責任も否定する判決を出しました。
 一審の地方裁判所では、妻と長男の両方に対して責任を認めておりました。それから、二審の高等裁判所では、同居の妻に対して責任を認めて賠償を命じておりました。しかしながら、こういった判決につきましては、家族に対して、認知症の高齢者を二十四時間見守らなきゃいけないのかとか、そうした過大な負担を課すものではないかとか、それから、家族の監督義務を余り厳しく問うと介護の担い手がいなくなるのではないか、こういったような懸念の声もあったわけでございまして、私としましては、この最高裁の今回の判断というのは、家族の監督責任を否定しているわけですけれども、介護の実態に基づいた正当な結論だったのではないかなというふうに思っております。
 こうした認知症の高齢者の方の徘回ですとか事故に巻き込まれてしまう、こういったことを防ぐためには家族だけではなかなか難しいのが現状であります。認知症を患っていても地域で安心して暮らすことができる、また外出もすることができる、こういう地域の体制をつくっていかなければならないと思います。また、鉄道事業者の皆さんも、ホーム下などの危険な場所に立ち入ることができないようにするとか、それから、例えば駅の職員の方も認知症について理解を深めていただくとか、こうした対応を協力をいただけるようにお願いしたいと思います。
 この判決の内容については、大臣も御存じのことと思いますけれども、最高裁は、同居の家族だからというだけで当然に認知症高齢者への監督義務を肯定するものではありませんでした。ですから、地域で介護を支えていこうとする政府の取組とも方向を同じくするものではないかなと感じておりますが、こうした事故を防ぐためにも、地域の見守りのネットワークの構築ですとか、それから、認知症高齢者の方、その御家族が安心をして暮らせる、そうした体制の整備を急いでいく必要があるかと思います。
 大臣のこの判決についての御所見も、もしあれば併せて伺いたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今朝ほど石井委員に対してもお答えを申し上げましたけれども、今回の判決につきましては、認知症の方が第三者に損害を与えてしまった場合の介護家族の監督義務の有無の判断に際して総合考慮すべき事項が六つ指摘をされたという、初めてこのような形で最高裁、司法の場から考え方が示されたということで、私は一つ大きな前進ではないかというふうに思います。
 しかし、その中身を見てみれば、例えば介護者、介護を受ける方の生活の状況とか心身の状況と書いてありますから、これはもう本当にいろいろな幅がある。それから、看護、介護の実態というのもそれぞれありますし、もちろん親族関係の有無、濃淡、この濃淡の中には、今回のように近くに住んでいるか住んでいないか、お嫁さんがどういうお世話をしているか、いろんなことがあって、そういうことを考えてみると、やはりこれらについてよく考慮をした上で個別に考えていくというのがこの監督義務の有無なんだろうというふうに思います。
 それで、今先生から御指摘にありました見守りネットワークのことについては、かねてより新オレンジプランでも去年の一月から、認知症になられても、どんなコミュニティーでもちゃんとそこで暮らしていけるようにするために皆で見守り合う、そういう仕組みをやはりつくって、ネットワークをつくっていかないといけないということで、そういうことを是非進めていこうということで、私ども新オレンジプランを作っているわけでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、大牟田では、本当に、十二回、もう既に訓練を一年に一遍ずつやってこられたと言っておられましたし、それも三千人規模で市民が参加をする、たしか十二万ぐらいの都市でありますけれども、そういうことで、市民全体で認知症になって行方不明になられた方を探し出すという仕組みをつくっていらっしゃって練習をしているということは大変すばらしいことだと思いますので、そういうネットワークを私どもとしても横展開して、いろいろなところでそれぞれの地域に合った形でやっていただければというふうに思っています。
 今後、様々なテーマが残っていると思います。これを私どもとしても、先ほど申し上げたように、新オレンジプランを作った省庁間のネットワークで、私たちはそこでいろいろな問題について、先ほど石井先生から少しお叱りもいただきましたが、ペースアップして、この最高裁の判決を受けて、今どういうふうなことが国民にとって懸念材料としてまだまだ残っているのか、そして我々としてやるべきことがどこまで進んでいるのかということも踏まえるとともに、課題は何なのかということをまず出していくということが大事なので、実態調査を含めてしっかりやって、そして国民的な議論をリードしていきたいというふうに考えております。

○佐々木さやか君 今大臣に御説明していただいたとおり、最高裁は、判断基準についていろいろな要素を挙げて、それを総合的に考慮していくと、こういう判断基準を示しました。ですから、今回のケースでは御家族の責任は否定されたわけですけれども、場合によっては認められるということもあるかと思います。
 また、逆に、家族の責任が否定された、それによって誰も賠償義務を負わないということになった場合に、損害を受けた側の補償はどうしていくのかと、こういう問題もあるわけでございます。この点に関しましては、我が党も実はPTを、プロジェクトチームを立ち上げさせていただきまして、事故を未然に防止する体制づくりとともに、認知症高齢者やその御家族を社会全体で支える仕組みについて、これからどういうことが必要なのかということを検討してまいりたいと思います。
 ですので、大臣がおっしゃるとおり、これからしっかりと検討していくべきだと思っているんですけれども、しかしながら、今、現状でもできることというのも何かあると思うんですね。例えば、恐らくですけれども、この最高裁の判決をきっかけに、じゃ、うちの場合はどうなんだろうとか、もし事故が起こったらどうなるんだろうというふうに不安に思っていらっしゃる方というのもいると思うんですね。そういう方が、取りあえず地域の、例えば包括支援センターに問合せをしてみたりとか、また行政の窓口などに相談に来たと、こういう場合には、できれば、個々の状況によりますからというふうにちょっと冷たいような対応ではなくて、しっかりと話をよく聞いて、そして必要な情報があれば教えてさしあげるとか、そういう丁寧な対応を是非お願いしたいというふうに思っております。
 また、先ほどの損害の補償という観点で申し上げますと、こうした事故の損害というのは、今ある民間の個人賠償責任保険、これでカバーできる場合もあるというふうに聞きました。もちろんこれで足りない場合もあるかもしれませんけれども、ただ、こういう個人賠償責任保険というものがあるんだということ自体知らない方というのも結構いらっしゃるんじゃないかなと思うんですね。
 ですから、これを機会に、認知症の方、またその御家族が巻き込まれる可能性が、巻き込まれ得る事故について、その危険性とか注意しなきゃいけないこととか、こういったことを家族の方や関係者の方に正しい知識を持っていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。
 ですから、こういった事故とか、そうしたことの危険性とか、日頃準備できること、こういった知識についても、例えば様々な介護の支援制度と併せてハンドブックのようなものにするとか、その後ろの方のページにちょっと説明を、アドバイスを書いていただくとか、そういった形で、例えば地域の包括支援センターで配るとか、厚労省としてもできることについては情報提供や啓発活動というものに取り組んでいただいてはどうかと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。

○政府参考人(三浦公嗣君) 認知症の方や御家族に地域の支援があるという安心感を持っていただくということが極めて重要でございまして、認知症に関する正しい知識と理解を持った認知症サポーターや、認知症の方や家族、医療、介護の専門職、地域住民が集まって皆様でいろいろ情報交換をするなどするいわゆる認知症カフェなどの取組を通じて、認知症への理解について、介護をされている家族を含めて社会全体で進めていく、このような形、いろいろ方法はあると思いますが、普及啓発を図っていくということが極めて重要であろうというふうに思っております。
 また、今回の判決受けまして、認知症の方の事故に対する賠償の問題につきましては、民間保険の活用を含めて様々な対応の選択肢が指摘されているものと承知しているところでございます。こうした観点から、社会として備えるためにどのような対応が必要かということにつきまして、民間保険の活用も含めて、広く様々な立場から議論をしていただくということが重要だと考えております。
 先ほど大臣から紹介ございました関係省庁の連絡会議などを活用しながら、私どもとしては議論が深まるようにしていきたいと考えているところでございます。

○佐々木さやか君 是非、今でも、できる範囲でも結構ですので、情報提供ということにも取り組んでいっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次のテーマに移りたいと思いますけれども、女性の活躍ということで、先日、三月一日に、妊娠等を理由とする不利益取扱い、いわゆるマタニティーハラスメントです、マタニティーハラスメント及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査、この結果が出ました。
 この調査に関しましては、我が党の古屋範子衆議院議員が、このマタニティーハラスメントの実態調査、これについて、派遣労働者の方が受けやすい状況にあるのではないかという問題を昨年の衆議院の厚生労働委員会で指摘をしておりまして、今回の調査というのは、恐らくそうした問題意識も持ちながら、雇用形態別に詳細に調査をするなど行われたものというふうに認識をしております。
 その結果として、様々な問題点が浮き彫りになってきたと思います。まず、このマタハラの経験率、どれぐらいの方が受けているのかという点につきましては、調査の結果、働いているときに妊娠、出産、未就学児の育児を経験した方のうちマタハラを受けた経験のある方は二一・四%と、企業規模が大きいほど経験率が高いという傾向にございます。
 今申し上げた派遣労働者ということについて見ますと、これはかなり突出していると言えるのではないかと思いますが、四五・三%の方が経験をしていると。じゃ、どういう態様のマタニティーハラスメントの被害なのかといいますと、休むなんて迷惑だとか辞めたらなどというふうに言われる、こういう被害が一番多いわけでございますけれども、しかしながら、解雇ですとか雇い止めといった重大な事案、これも結構ありまして、合わせると、解雇、雇い止めで三四・六%なんですね。ですから、マタハラの被害のうち約三分の一以上が解雇、雇い止めといった重大な不利益になっております。
 これを派遣労働者について見ますと、更に被害は重大でございまして、妊娠をした時点で派遣契約を打ち切られたり、ほかの労働者への交代を求められたと、こういう方が二五%近くいらっしゃいます。さらに、育児休業を申し出た時点、また子供の看護休暇を申し出た時点、こういったところで契約の打切りに遭ったり、こうした方を含めますと、何と四九・四%ということで、約半数の方が契約の打切り、ほかの労働者への交代というものを求められていると。ですから、派遣労働者の方というのは、四五・三%の方がマタハラを経験して、かつその内容も、約半分が先ほど申し上げたような重大な不利益ということになっております。
 これでは、とても育児と仕事を両立をして女性が活躍できるとは言えないわけでございまして、そこで、大臣にお聞きしたいんですが、今回の調査結果を受けて、マタニティーハラスメントの防止対策、どのように取り組んでいかれるのか。特に先ほど申し上げたように派遣労働者の方が被害に遭いやすいという状況にありますので、是非力を入れて取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
 佐々木委員おっしゃるとおり、こういったマタハラ、非常に現場ではいろいろ問題になっております。妊娠、出産、育児休暇等を理由とする事業主による解雇や雇い止めなどによる不利益取扱いは既に男女雇用均等法で禁止されておりますが、依然として雇用均等室に寄せられる相談件数は多くなっております。昨年、平成二十六年度ですと三千五百九十一件ということで、これも年々増加の傾向でございます。ということで、更なる法の徹底周知と厳正なる履行確保が重要であると、このように考えております。
 このために、来年度、二十八年度、ちょっと力を入れていこうということになりまして、約一・九億円予算案に入れさせていただいておりますけれども、全国マタハラ未然防止対策事業を盛り込んでおりまして、事業主や人事担当者向けの説明会など集中的な広報を行い、企業における意識啓発や取組の推進を図るように頑張ってまいる予定でございます。具体的には、ハラスメント特別相談室の相談窓口の設置とマタハラ未然防止対策キャラバンを実施する予定でございます。また、法に違反する事業主に対しましては、都道府県の労働局において厳正な是正指導を行ってまいりたいと、このように考えております。
 また、事業主による不利益取扱いのみならず、近年は上司や同僚からの嫌がらせ、これも問題となっておりまして、これらを防止する措置の事業主への義務付け、これを盛り込んだ法案を今国会にも提出させていただいております。
 さらに、先ほどからお話に出ております派遣で働く方々に対しての環境整備をするために、今回、法改正の中で、まずは上司、同僚からの嫌がらせを防止する措置を派遣先にも義務付けるようにいたしますとともに、今度は育児・介護休業法に基づきまして、育児休業法の取扱い等を理由とする不利益取扱い禁止を派遣先にも適用するということを盛り込んでおります。こうした措置の確実な履行確保等を通じて、今後も妊娠、出産、育児等を経ても継続就業しやすい環境の整備に厚労省としても全力を挙げて取り組んでいきたいと、このように考えております。

○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 企業での防止対策が進むように、また派遣労働者という観点からも力を入れていただけるということであります。是非よろしくお願い申し上げます。
 先ほど副大臣が言及されておりましたが、マタニティーハラスメントが上司だけでなくて同僚の方とか、また男性だけではなくて女性からも行われているということが分かったそうでございます。これはどうしてかということはいろいろと分析してみなきゃいけないと思いますけれども、私が考えていることの一つとしては、やはり妊娠、また出産によって従業員の方がこれまでと全く同じようには働けなくなる、お休みを取らなきゃいけない、早めに帰らなきゃいけないと、そうした場合に、周りの同じ職場の同僚の方としては、やはりその分自分がカバーしなきゃいけないんじゃないか、自分がその分しわ寄せを受けるんじゃないかと、こういう気持ちがもしかしたら休むなんて迷惑だというような言葉につながってしまうのかもしれないなと思います。
 ですから、こういったことがないように、妊娠や出産をする女性社員の方はもちろんですけれども、その周りにいる同じ職場の従業員の皆さんをどうサポートしていくかということもマタハラ防止対策としては私は重要ではないかと思っております。これが実際にやはり効果的なんではないかということも、今回の実は実態調査ではデータが出ております。
 ですから、先ほど副大臣が様々な防止対策、企業で行われるように取り組んでいくとおっしゃっておりましたけれども、妊娠、出産をする女性従業員の方の周りの従業員への業務上の応援、サポート、こういう効果的な対策が実施されるように是非していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(香取照幸君) 御答弁申し上げます。
 今さっき先生御指摘ありました、昨年行われました労働政策研究・研修機構のマタハラ、セクハラの実態調査の中で、各企業において様々な不利益取扱いの防止策を講じていただいているわけですけれども、この中で、今まさに御指摘ありましたように、職場においてそういった妊婦さん等に対する業務上の応援を講じているという御回答をされた企業が実は一番不利益取扱いの経験の率が下がっていると、つまり効果があったということが分かっております。
 具体的には、例えば業務分担の見直しを行いますですとか代替措置を講じますですとか、個別具体に当該妊婦さんの仕事あるいはその周りの方々の仕事の負担を軽減するような対策を講じていると。周りの方に対しても様々な配慮をするというのが、実はこういった不利益取扱いの防止に非常に効果があるということは統計上も明らかということでございます。
 今回、御審議をお願いしております改正法案の中で、今副大臣から申し上げましたように、上司、同僚からの嫌がらせについても新たな措置を講ずるということになっておりまして、法律が成立した後、具体的に企業にどのような対策を講じていただくかということについては指針の中で具体的にその内容を定めるということにしておりますので、この調査結果なんかも踏まえまして、できるだけ実効ある取扱いが、各企業の取組が進みますように、これは審議会での御議論を踏まえて定めるわけでございますけれども、毎年審議会の議論をいただきまして、具体的な指針を定めて、各企業に対する指導方、努力してまいりたいと考えております。

○佐々木さやか君 是非よろしくお願いいたします。
 それから、今回の調査ではセクシュアルハラスメントについても調査がなされておりますので、この点についても申し上げたいと思います。
 セクシュアルハラスメントについては経験率が二八・七%ということでありまして、このセクハラの問題が社会に認識されてからしばらくたつわけでございますが、今も約三人に一人が経験をしている状態になっております。この場合ですと、雇用形態別で見ますと千人以上の企業の正社員の方が一番セクハラを経験している率が高いということになっておりまして、正社員に対してさえ十分なセクハラ防止対策が取られていないのではないかと懸念しております。
 この防止対策に、じゃ、取り組んでいるかどうかということを見ますと、取り組んでいますという企業は五九・二%で、約六割が取り組んでいるわけですけれども、逆に申し上げると、何もほかの企業は、残りの企業は対策を取っていないということで、これは非常に問題であるというふうに思っております。
 実際にも、やはりこのセクハラというのは相談の件数も多いというふうに聞いておりますし、調停などになるケースも多いそうであります。想像以上に職場でのセクハラというものは多いのではないかと思います。
 マタハラの防止とともに、やはり女性の活躍という観点からはセクハラの防止措置というものもしっかりとなされるように、政府としても取組を推進していっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(香取照幸君) 今御指摘ありましたように、セクハラに関しては、もう既に男女雇用機会均等法で全ての事業主に対して防止措置を行うことが義務付けられているわけでございますが、実際に調査をいたしますと、お話ありましたように、千人以上の企業ですとほぼ一〇〇%、百人以上ですと九三%程度は何らかの対策が講じられているわけでございますが、やはり九十九人以下の小さい企業ですと五割強ぐらいしか取組がなされていないということで、特に小規模な企業について取組を促していくということが必要なのではないかと思っております。
 小さい企業の場合ですと、何といいますか、従業員の数も少ないので、実は経営者といいますか社長さんといいますか、やはり経営層の方がきちんと理解していただければかなり対策が進むわけですけれども、そこが十分でありませんと、やはりいろんな問題が生じるということでございます。
 セクハラについては、従来から、防止対策を講じていない事業主に対しましてはきちんと対策を講じていただくようにということで、各都道府県労働局を通じまして指導、勧告を行っております。対策を講じていただけないということになりますと、最終的には企業名の公表ということも行うということで、これはかなり強力な御指導を申し上げているところでございます。
 今般、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたが、全国マタハラ未然防止対策事業というのを今回、来年度の事業で予定してございますが、特に中小企業につきましては、マタハラ、セクハラ併せまして、この防止措置について強い周知徹底の努力をしていきたいと考えております。
 また、本年四月から、各労働局の組織の見直しを行っておりまして、新たに雇用環境・均等部というのを各労働局に設置をいたしまして、セクハラあるいはマタハラ含めまして、一連のハラスメントあるいは雇用環境の改善につきまして一体的な相談と紛争解決の体制というものをつくりましたので、こういった組織を、その役割を十分に果たせるように、私どもとしても各労働局に御指導申し上げまして、総合的なハラスメント対策を実施してまいりたいと考えております。

○佐々木さやか君 よろしくお願いいたします。
 それで、そうしたセクハラを防止をして、また、マタハラを防止をして、女性の方が結婚、妊娠、出産を経ても働きやすいという社会をつくっていかなければならないわけですけれども、そうはいっても、一旦退職をすることになってしまったと、そういう場合には、希望すればまた働けるように再就職などの支援をしていくということも重要であると思います。
 この点、こうした女性の再就職、転職などの支援の一つとして、マザーズハローワーク、マザーズコーナー、これ我が党も、子育てしながら働きたいと、こういう女性の皆さんのお声を受けまして推進をしてまいりました。このマザーズハローワークといいますのは、きめ細やかな対応のために各利用者の方ごとに担当者を付ける、また、施設内にはキッズコーナーがあって子連れでも相談しやすい、こういう環境が整っております。また、パソコン講習などのキャリアアップ支援ですとか、保育情報の提供ですとか、こういった総合的な支援になっているんですね。
 このマザーズハローワーク、現在も全国で二十一か所ということでございますけれども、ただ、全国二十一か所というと、ちょっと多いとは言えないんではないかなと。ハローワーク自体は全国で五百四十四か所、平成二十六年度であるそうであります。是非ともこのマザーズハローワーク、そこでの支援も併せて拡充をしていっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(とかしきなおみ君) お答えさせていただきます。
 子育て中の女性の方々の希望に応じて働くことができる環境の整備は大変重要なことと、このように考えております。
 これまで、マザーズハローワーク事業としまして、全国百八十四か所の拠点で、子供連れで来所しやすい環境を整備して、担当者によるきめ細やかな職業相談や職業紹介を実施させていただいております。この百八十四か所の内訳は、二十一か所、マザーズハローワーク、これはハローワークとまた別の場所に設けていたりということです。あとは、ハローワークの中に設けるということで、百六十三か所、マザーズコーナーというもの、これ合わせて全国で百八十四か所、マザーズハローワーク事業ということで実施させていただいております。
 ということで、その利用者数なんですけれども、マザーズハローワーク事業の新規求職者数は、平成二十六年は二十一万九千八十五人、そして二十七年、これ十二月末の数字でございますけれども、今までに十六万千二百四十一人ということで、前年比千八百十人増ということで、利用が非常に伸びてきている状況であります。私も、マザーズハローワークの方は名古屋の方で視察をさせていただきまして、子連れのお母さんが子供を預けて、何か割と利用しやすいということですごく喜んでいらっしゃる姿も拝見させていただきました。
 ということで、平成二十八年度におきましては、事業拠点をおっしゃるようにちょっと増やしていこうということで、五か所でございますけれども拡大していこうと考えております。また、全国二十一か所ありますマザーズハローワークに訓練担当の専門相談員を新たに配置していこうと、このように考えております。
 ということで、マザーズハローワーク事業の拡充を図る予定でございまして、今後も子育て中の女性のニーズにしっかりと対応していきたいと、このように考えております。

○佐々木さやか君 次の質問なんですが、これ是非大臣にお答えいただければと思うんですけれども、今申し上げたマザーズハローワーク、子育て中のお母さん方にも大変好評なんですね。しかしながら、一点改善をしていただきたい点がございます。このマザーズハローワーク、いろいろと相談ができるわけですけれども、雇用保険の手続ができないんですね。
 雇用保険の手続ができないとなると、どういうことになるか。例えば、子供が小さくて今の職場じゃなかなか働き続けられない、転職をしようということで、一旦辞めてマザーズハローワークに相談に行ったと。その場合に、転職のための相談はできるけれども、雇用保険の受給手続はできませんので普通のハローワークに行ってくださいと言われてしまうんですね。このマザーズハローワーク、先ほど申し上げたように全国で二十一か所、例えば神奈川県でいいますと横浜と相模原に一か所ずつなんですけれども、子供を預かってくれる、相談もしやすいということで、おうちの近くのハローワークではなくて、わざわざちょっと遠いけれどもマザーズハローワークに行ったと。しかしながら、そこでは雇用保険の手続ができませんと。
 この雇用保険の手続というのは、まず会社を通じて受け取る離職票を持ってハローワークに行って一回手続をすると。それだけでは終わらなくて、その後も四週間に一回、失業の認定というものを受けるためにハローワークに通わないといけないんですね。四週間に一回マザーズハローワークに行って職業相談、転職のための仕事探しの相談をしているんだけれども、それとは別に四週間に一回普通のハローワークに行って、そこで雇用保険の手続をしなきゃいけないと。
 これは、やはり利用者の方からすると不便でありますし、是非この雇用保険の手続についてもマザーズハローワークでできるように改善をしていただきたいと思うんです。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 全国二十一か所のマザーズハローワーク、加えてマザーズコーナーというのがありますが、子育て中の女性などを対象にきめ細やかな職業相談、職業紹介に特化した業務を実施をする施設としてやってきているわけでありますけれども、今御指摘のように、雇用保険の各種受給手続はまた別にハローワーク本体に行かなきゃいかぬということで極めて不便じゃないか。私も現場を見に行ったことがありますが、やはり子供さんを連れて来られている方がいて、そこからまたもう一回行けと言われても、これはなかなか大変ということで御指摘をいただいたというふうに思います。
 今後は、来年度早々に、各地域の現場のニーズを把握をした上で、マザーズハローワークにおける雇用保険の各種受給手続の実施について前向きに検討してまいりたいというふうに思います。

○佐々木さやか君 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
 まず、調査を来年度早々の時期にやってくださるということで、ありがとうございます。また、来年度の予算の範囲内でも、例えば、マザーズハローワークによっては、来年度の予算の範囲内でシステムの導入ですとか職員の方の配置ですとか改善ができることがあるかもしれませんから、できるところから早めに改善をお願いしたいと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。
 では次に、子供の虐待防止、児童虐待の防止というところで残りの時間、御質問をしたいと思います。ちょっと時間が限られておりますので全部は質問ができませんけれども。
 児童虐待の防止ということは非常に重要な問題であります。児童虐待のうち、やはり小学校入学前の子供さんというのが一番多く割合を占めているんですけれども、中学校生また高校生などの十代後半の子供たち、これも二二%程度を平成二十六年度は占めておりまして、その被害は深刻であると思います。こういう十代後半の子供をどう保護するか、どのように自立支援を行っていくかという問題点があると思います。
 そうした中で、主に十代後半の子供たちを緊急的に保護する施設としてその役割が期待されている子どもシェルターという施設があるんですね。この子どもシェルターは、子供の人権救済活動を行う弁護士さんを中心にして平成十六年に最初に東京に開設をされました。その後、これまでに十三か所ほど全国に開設をされております。
 この子どもシェルターの特徴としては、一人一人の子供に弁護士が付いて法的な観点からの支援、それから家族や学校などとの、関係機関との関係調整を行っております。ですから、弁護士による法的支援と児童福祉関係者や市民による福祉的な支援、これが両輪として行われていると。児童相談所などの関係施設とも連携しながら支援が行われております。
 シェルターという名前のとおり、緊急の保護ということを主な目的にしているんですね。御存じのとおり、子供の緊急保護、一時的な保護ということについては児童相談所の一時保護という制度があるわけですけれども、この一時保護というのは、対象になるのは十八歳未満ですね。また、一時保護所は定員がオーバーして受け入れているような状態がありまして、個室も多くないですし、外出が禁止されて通学もままならないと、こういう状態にあります。ですから、子供たちの緊急的な避難場所、また十代後半の、児童相談所による一時保護の対象にならないような子供たちを受け入れて保護する場所として、この子どもシェルターというのは重要な役割を果たしているというふうに考えております。
 ところが、このシェルターが閉鎖に追い込まれるところが出てきているんですね。その大きな原因というのは運営費の確保が困難であるということです。弁護士費用については、ボランティアですとか、それから弁護士会が資金を出して子供たちの負担にならないようにしておりますので、主にスタッフの人件費とか子供たちの生活費とか、そういう施設の運営費の確保が困難になっていると、こういう状況にあるそうです。
 こうした施設の子どもシェルターの運営の支援というのは私は重要なことだと思うんですけれども、国からの公的な支援というものはどのようになっているんでしょうか。

○政府参考人(香取照幸君) 御質問の子どもシェルターでございますが、これは、今先生お話ありましたように、虐待を受けたお子さんたちの緊急的な避難先ということで、お住まい、住居で子供を保護して相談と援助を行うということで、これは、お話ありましたように、民間の活動が中心になって生まれてきたものでございます。
 子どもシェルターについては、全国ネットワーク組織があるということで、こちらに伺いますと、現在こちらに加盟しているシェルター十一か所あるということで、一か所休止中ですが、十か所は稼働しているということでございます。
 この子どもシェルターにつきましては、私どもでは平成二十三年度から、自立援助ホームの体系の中でその要件を満たすようなものについては運営費の補助を行うということで、施設に勤務しておられます職員の方に対する人件費、それから入所しております児童の方に対する生活費の補助を対象としております。現在十か所、このネットワークに加盟しておられるところで稼働しているシェルターありますが、この十か所は全て今運営費補助の対象になっているということでございます。
 あと、実際の補助の形なんですけれども、お話ありましたように、緊急的に避難をするということになりますので一時的な利用が多いということで、頻繁に入退所が繰り返されるということがございます。それから、他方で、難しい問題を抱えているお子さんがいますと結構長期に入られるということになりますので、新規入所がなかなか難しくなるといったことがございます。
 自立援助ホームは、基本的には入所実績に応じて支払をするという形になっておるわけでございますが、こういった子どもシェルターの特性に応じまして、いわゆる定員払いのような形で、入所実績によらないで補助額を算定するという特例を設けまして、今この形で柔軟な取扱いを行えるようにということで助成を私どもの方でさせていただいているということでございます。

○佐々木さやか君 そうした柔軟な運用改善を行っていただいたということでございますけれども、こうした運用が自治体の方に徹底されていないという声もございます。ですので、是非とも周知徹底をしていただきたいと思っております。
 もう時間が参りましたので、今日ちょっと通告をしながら質問ができない点もございましたけれども、また別の機会に議論を深めさせていただきたいと思います。
 以上で終わります。