189-衆-法務委員会-41号 平成27年12月04日
○山尾委員 民主党の山尾志桜里です。
岩城大臣並びに盛山副大臣、そして田所政務官と、きょうはとかしき副大臣にもおいでいただきました。ありがとうございます。
それでは、早速質問に入りたいのですが、岩城大臣のきょうの御答弁、本当に丁寧な物腰で御答弁をいただいていまして、私としては、しっかり岩城大臣の所信演説を聞いた上でそれに対する質問をさせていただいて、そして一般質疑なり個別のテーマなりに入る、やはりそういう手順をしっかり踏んでいきたいものだというふうに改めて思いました。
そういう手順が踏めていないのも、突き詰めて言えば、一番責任が重たいのは安倍総理大臣だと思います。安倍総理が、臨時国会を憲法上開くべきであるのに開かない。ただ、岩城大臣も内閣の一員でありますので、やはりこれは聞かせていただきたいというふうに思います。
私たちは、十月二十一日に、衆議院百二十五名、参議院八十四名、それぞれ当然四分の一以上をもって臨時国会の召集を要求しましたが、開かれておりません。憲法五十三条には、いずれかの総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないと書いてあります。
岩城大臣にお伺いをいたします。
このたび臨時国会を開かないことは憲法五十三条に違反すると思いますか、違反しないと思っていらっしゃいますか。
○岩城国務大臣 端的にお答えをさせていただきます。
憲法五十三条の解釈についてということでありますけれども、憲法に関する一般的解釈にかかわるものでありますので、これは、政府部内におきまして憲法に関する一般的解釈について全面的に責任を負うべき地位にあるのは法務大臣ではなく内閣とされていることに鑑み、私のお答えは差し控えさせていただきます。
○山尾委員 上川前大臣も、憲法の解釈は私の所管ではないということで、常に憲法の解釈から逃げておられました。大変残念なことだというふうに思います。
岩城大臣は、十月七日、初登庁後の記者会見においてこのように述べておられます。「法務省は、法秩序の維持、国民の権利の擁護を通して、国民生活の安全・安心を守るための法的基盤を整備するという重要な使命を帯びています。その大臣を拝命し、とても身の引き締まる思いです。」
法秩序を維持する職務の法務大臣が内閣の一員として臨時国会を開かないことを是とするならば、憲法五十三条との関係で法秩序が壊れていないことをぜひ説明していただきたいと思いますが、もう一度いかがですか。
○岩城国務大臣 重ねてのおただしになりますけれども、憲法に関する一般的解釈につきまして、私からお答えを差し上げることは差し控えさせていただきます。
ただ、内閣としての判断ということであります。それにつきまして、既に内閣官房長官等がさまざまな場面で御説明しているとおりであります。
○山尾委員 大変残念です。
憲法の一般的な解釈をお伺いしているわけではありません。実際に憲法五十三条の明文に反している。今この状態が、臨時国会が開かれていない、今のまさに現実に起きている個別の状況について憲法の明文に違反しているように読めるのだがどうでしょうか、こういう質問でございました。
それでは、もう一つお伺いをしたいと思います。これは所管ではないというふうにはお答えしないと思いますが、公平を期して言うならば、通告をしておりません。
大臣は、やはり初登庁後の十月七日の記者会見で、刑事訴訟法、まさにこの法務委員会の所管について記者さんからこんなふうに質問されておられます。「不法な盗聴をしないという担保がどこにあるとお考えか、」こう聞かれて、このときは大臣は、「私も十分に承知していない部分がありますので、よく担当者から説明を聞き、ヒアリングをした上で、しっかりと考えていきたいと思っています。」こう答えられました。
この日は初登庁の日でありますから、翌々日の九日、再度記者さんから同じテーマについて、「担当者からお話を聞くことはできましたでしょうか。それを踏まえ、現在のお考えを」と大臣は再び尋ねられました。それに対して大臣は、「残念ながらまだ担当者からヒアリングをする時間がとれないので、なるべく早い時期に直接ヒアリングをし、それからお答えさせていただきたいということでお願いしたいと思います。」このようにお答えになっております。
最初の質問の十月七日からほぼ二カ月がたとうとしております。大臣、この問題についてヒアリングをされたでしょうか。そして、それに対して、通告していませんので根っこの部分の短い御回答で結構です、御回答いただけますでしょうか。
○岩城国務大臣 おただしの件につきましては、その後、ヒアリングを当然のことながら受けております。
その上でお答えをさせていただきますが、担保の問題等もお話がありましたけれども、この点につきましても含めまして適切に運営されていってほしい、そういう思いのもとに、これから自分自身、大臣として取り組んでいきたいと思っております。
○山尾委員 中身については先ほど井出委員からもやりとりもありましたし、しっかり時間をかけて、まだ成立していない法律でありますので、これからもまたということになるんでしょうけれども、ただ、私自身の感覚で申し上げますと、この刑事訴訟法の傍受についての、不法な盗聴にはならないかという質問というのは、本当に、この法務委員会における最大の法案に対する国民の率直な懸念を伝える超基本的な質問だと思います。
例えば、農林水産大臣が新しく大臣になられて、TPPによって農家は打撃を受けないのですかと聞かれて、大臣になったばかりなので追って答えますというふうにはならないんでしょうし、例えば厚労大臣が、今回かわっていませんけれども、仮に新しくなったとして、今国会の派遣法で本当に非正規から正規への転換は進むのですかと聞かれて、新しくなったばかりなので後にしてくださいということにはならないんだと思います。
やはり刑事訴訟法については、この法務委員会ではみんなで、本当に根幹にかかわる刑事司法の大きな改革、それを改悪ではなくていいものにしたいという思いでやってきましたし、これからもさまざまな話が出てくると思いますので、改めて、先ほど申し上げた傍受のことも含めまして、ぜひ次回以降は大臣なりのいろいろな御所見をお伺いしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、きょうのテーマですけれども、司法面接を含む多機関連携ということについてお伺いをしたいと思います。これは、重徳委員もこの委員会で随分と御発言をされましたし、我が党の後藤祐一議員も極めて一生懸命取り組んでいるものであります。
皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいていると思います。この司法面接を含む子供の犯罪被害者のための多機関連携について、十月二十八日に、第一歩としては本当に大事な通知が三通出されました。それぞれ、最高検、警察庁、そして厚生労働省からの通知であります。
これもちょっと岩城大臣の言葉をお聞きしたいなと思うのは、なぜ、こういった子供の犯罪被害者に対しては、幾つかの複数の機関が、プレーヤーが連携をすることが必要だねというふうに考えられるようになったのか、その理由といいますか、背景というようなものをもしお聞かせいただけるのならばというふうに思います。
私自身が考えるのは、まず、それは何のことをイメージすればいいのかということから多くの方はスタートされると思います。司法面接とか多機関連携と言っても余りぴんときません。それをいわば五W一Hみたいな形で私なりに説明するならば、まず、ホワイというところでいうと、子供の負担軽減とその被害供述の信用性をしっかりと支えるために。ホエン、いつということでいうと、これは、子供が犯罪の被害に遭ったときに。誰が、フーということでいえば、子供を支える立場の多数の機関が。ホエアというところでいえば、できれば一つの屋根の下で。ホワット、何をということでいえば、とにかく子供の利益を中心に連携をして、子供をいろいろな機関にたらい回しにせずに支え切ること。ハウ、どのようにといえば、その中核を担う制度の一つとして司法面接というのが位置づけられるのかなというふうに感じております。
その上で、ちょっと冒頭、大臣、こういった制度がなぜ今改めて求められるようになったのか、その理由や背景について一言コメントをいただけますでしょうか。
○岩城国務大臣 このことにつきましては、まさに委員がお話しなさったとおりだと思います。子供さんの負担を軽減する、そして、同じような質問というか、何度も一人のお子さんに聞かすこと、そういった機会を多くすること自体が非常に大変なことになるわけでありますので。
そこで、これまでも検察当局におきましては、児童の事情聴取に当たり、事案の性質に応じて警察と連携するなど、児童の負担軽減等に努めてきたものであります。ただ、児童の負担軽減及び児童の供述の信用性確保、こういった観点から、警察及び児童相談所とのさらなる連携強化が必要であり、より一層の工夫、改善を加えつつ、児童への配慮を行っていく必要があることから、今般の通知を発出するに至ったものである、そのように考えております。
○山尾委員 まず、最初の理解を一にしていただいてありがとうございます。
私自身が検察官をやっていたときに、恥を忍んで申し上げますと、やはり、極めて重大な性犯罪を受けた子供も含めて、犯罪被害を受けた子供から直接被害状況を聞くということを私もやっておりました。そのときに私の頭の中に一番あった思いは何かといいますと、私の手元には警察官が既に聞き取った供述調書があります。その上で私が検事として重ねて話を聞きますが、とにかく目の前のお子さんが警察の調書と違う話をしないでほしいと念じて話を聞いておりました。
それはなぜかと申しますと、話が変わってしまうと、当然、その子供の供述の信用性が裁判で低く扱われてしまうからです。本来であれば、その子にとって一番負担のない方法でどうやって聞けるんだろうか、まずそれが一義にあるべきであるし、違う話をしないでほしいなんということを、中心に、頭に据えて聞くべき場面ではないのだけれども、そういう状況でありました。それは、こういうできるだけ一回で聞き取ろうという制度はもちろんありませんでしたし、一方で、私自身、子供から被害状況を聞き取るための専門の学びというものも特別には受けていなかったからということもあると思います。
そういう中で、やはり今回の通知の第一歩を、本当にぜひ、子供の利益を中心とした、いわゆる画期的な制度へと育てていきたいなというふうに思っているのです。
この法務委員会で視察に行かせていただきました。この子供の司法面接を中心とする多機関連携を進めているのは、アメリカそしてイスラエル、もちろんほかもあるんでしょうけれども、よく言われるのはこの二カ国です。私たちが法務委員として行かせていただいたのはイスラエルでありました。
イスラエルも、ホワイ、理由のところはほぼ同じです。
ではまた、どういうときというところからいきますと、十四歳未満の子供を中心に、そういった子供が犯罪の被害に遭ったとき。
そして、誰がということを見ますと、司法面接官。これは、警察官ではなくて、今は、厚生労働省の職員、イスラエルでいう福祉省の職員が特別の研修を受けて、司法面接官として百人規模で用意をされています。それで、司法面接官、警察官、小児科医、ドクター、ソーシャルワーカー、そして子供の心理的な負担をよりほぐすためのハウスマザーと言われる方々がいらっしゃいました。
ホエア、どこにいるかというと、診察室も面接室も一つ屋根の下にある、いわゆる子供の権利擁護センターというような場所で、これは六つあるとおっしゃっていました。二つ建設中なので、八つになるとおっしゃっていました。
ちなみに、イスラエルの人口が八百三十四万人ですので、人口百万人当たりに約一つぐらいの計算で今整備されようとしている。これが本当に最も適正規模かどうかは全くわかりませんが、同じ感覚でいえば、例えば日本でいえば百二十カ所ぐらいあるというイメージになるんだろうと思います。
何をするのかというと、やはり福祉、医療、捜査、こういった立場の大人が連携をして、ハウ、司法面接を含めて子供の権利を守る。
このやり方というのは、私が学んでいる限りは、アメリカで行われているやり方と大きな柱は一緒です、プロトコル、聞き方が違ったりしますけれども。
あとは、日本では、いわゆるワンストップとして子供のこういう被害を守っている神奈川の子どもの権利擁護センターもあります。これはNPOがやっています。ここもおおむね同じようなシステムで、今、一生懸命民間でやってくださっています。
そういう中でこういう通知が出て、私はとてもうれしいんですが、ちょっと残念なのは、まず、これは、厚労省のホームページ、そして警察のホームページ、これには三通知ともちゃんと公開してあるんですが、法務省あるいは最高検、どこを見ても、こういうことを始めるよという通知がホームページに載っていないのですけれども、これには何か載せられない理由があるのでしょうか。大臣でも事務方でも結構です。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、最高検から発出された通知につきましては、警察庁及び厚生労働省のウエブサイトには掲載されておりますけれども、それ以外のところには掲載されていないという状況がございます。
この点につきましては、法務省と最高検察庁の関係という問題から、最高検察庁が出したものについてストレートで法務省のウエブサイトに載せるということがなされていなかったわけでございますけれども、いずれにしても、今後、その掲載については検討してまいりたいと思います。
○山尾委員 ぜひお願いします。
最高検で出した通知が厚労省に載っているわけですから、法務省に載っていても全く問題ないというふうに思いますので、これはぜひ掲載していただきたいと思います。
それで、では、中身に入っていくんですけれども、ホワイ、理由のところはお伺いをしましたので、これから先、こういう制度を始めようの第一歩の中で、では、この通知を見ると、ホエン、どういうときにこういった司法面接を含めた多機関連携をしようとしているのか、これをまずは事務方の方にお伺いをしていきたいと思います。
まず、厚労省にお伺いをしますね。
厚労省の通知を見ますと、これは、四枚めくっていただいて、ページ数でいくと右下番号五になります。この通知を三つ通して見ると、要するに、最初のきっかけを児童相談所が把握した場合は連携の必要があるかどうかを児童相談所が判断する、最初のきっかけを警察が把握した場合は警察が連携の必要性を判断する、何かこんなふうになっているようなのです。
児童相談所で最初のきっかけを把握した、間々あることだと思います。では、どういうときに児童相談所は、これは警察そして検察と連携が必要だなというふうに判断をするのかということが載っているのですが、下線の部分です。「刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例など、児童相談所において、子どもの特性を踏まえた面接・聴取方法等について、三機関で協議することが必要と判断した事例」。
これは、児童相談所あるいは厚労省にお伺いをいたします。児童相談所が、刑事事件として立件が想定されるか否かを判断できるのでしょうか。
○吉本政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま御紹介のありました通知のとおり、通知におきましては、刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例など、子供の特性を踏まえた面接、聴取手法について協議することが必要と判断した事例というふうにさせていただいております。
具体的には、まず、児童相談所の方に通告等がございましたときは、初期調査というふうに申しまして、通告要件となった子供の何らかの発言あるいは寄せられた情報として、性暴力被害等を受けている可能性があるかどうか、あるいは何らかの危険が発生しているかどうかといった、いわゆる最低限のそうした把握をいたしまして、その結果、児童相談所内で、今申しましたような、協議にかける事案かどうかということを検討し、所長が最終的には判断するといったような手続でやらせていただいております。
ここで言う「刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例」というのは一つの例示でございまして、個々の児童相談所において適切に判断してまいりたいというふうに考えております。
○山尾委員 吉本審議官におかれましては、愛知県で東海初の女性の副知事ということで、つい先般まで県でもお世話になりました。この司法面接の事案についてもぜひしっかりお世話になりたいと思うんですけれども、とはいえ、今言っていただいたような内容というのは、いわゆる刑事事件として立件をするかどうかという判断要素とは随分違う切り口なんですね。
そして、恐らく、証拠の十分性だとかあるいは犯人性の問題だとかいうことは、児童相談所の方というのは当然研修も受けていないと思いますし、今の段階で受けているべき必要は、今の段階まででは少なくともそうなかったんだろうというふうに思います。なので、適切に判断しますとおっしゃられましたけれども、制度上というか職務上、なかなかそう適切には判断できないんだろうというふうに思うんです。
例示なんですけれども、こういう紙において例示というのは現場でそれなりの重たい意味を持つということも皆さん御承知のとおりでありまして、もう一つ言いたいのは、やはりこれは、子供に面接をしてしまってからでは遅いんですね。やはり、最初に子供に事情を聞く前に判断をすることが極めて重要。一度でもその子供にいわゆる被害の内容についての聞き取りをスタートしたところから子供の記憶というのはいわゆる汚染が始まっていくという言葉を使う人もいます。なので、その入り口前のところで余り絞りをかけ過ぎると、この制度趣旨が生かされないでしまう事案というのが随分出てくると思うんですね。
そういう意味で、副大臣、例ではあるんだけれども、重篤というふうに、例として挙げられているのがかなり絞られているように読めますし、そしてまた、当然、児相の人がなかなか判断しにくい立件要素が入っている。ちょっとそこの部分は、もう少し幅広に、そしてもう少し児相の職員さんが判断できるような間口で捉えていただいた方がやはりいいと思うのですが、副大臣、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
山尾委員のおっしゃることはとてもよくわかります。
ただ、児童相談所にいらした場合、私たち児相としましては、どう対応していいのか、要は、被害状況はどの程度なのか、そして、保護した方がいいのかしない方がいいのか、こういうことを本人からある程度聞き取りをしないと、やはり周りの方だけの情報ではそれが把握できない場合もありますので、これは、ですから、全てそういう被害状況を、まずは、どの程度の危険が発生しているのかということを、状況を判断しなくてはいけないということで、先ほどお話がありましたように、初期被害調査面接というのをさせていただきます。
その後、先ほど言いましたように、児童相談所長が、子供の発言を踏まえて児童相談所内の会議等で検討した結果、やはりこれは三者機関で協議する必要ありというふうになった場合に適切に判断していこうということで、今回、例示という形にさせていただきました。
○山尾委員 ちょっとこれは確認ですけれども、では、この制度がスタートしても、厚労省は、子供本人から初期被害調査という形で聞き取ることを大前提とした上で、その後に三者の連携が必要かどうかを判断する、副大臣のおっしゃることはそう聞こえたんですが、そういうことでよろしいんですか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
子供に聞き取りをするのを前提にしているわけではなくて、被害の事実を詳細に把握するための手段の一つとして、お子さんに聞くというのも一つの方法としてあるということであります。
○山尾委員 被害事実を詳細に判断するのは、恐らくこの後のことなんだろうと思います。事務方の皆さん、うんうんと言っていただいているように私には見えるのですが、被害事実を最初の入り口で単一の機関が詳細に判断しようとするから、子供が、結局その後は、別の機関でもさらに詳しく別の切り口で聞かれる、さらに検察に行って別の切り口で詳しく聞かれる。今までそうだったから、子供から被害事実を詳細に聞くのはできるだけ一回にするために、詳しく聞く前に、事前にそれぞれの機関がそれなりに判断をして、まず連携しましょうと。連携した上で、では、子供から被害事実を詳細に聞くのは検事がいいのかな、警察官がいいのかな、児相の職員がいいのかな、はたまた、もしかしたらこれからは、司法面接官というような、何らかのきちっとした研修を受けた別の単独の専門官ということもあり得るのかな、そういうことでやっていこうというのが多分この多機関連携、そしてその中核に当たる司法面接だというふうに思います。なので、ちょっとその点はぜひ御理解をいただきたいと思います。
ちょっと警察の方に伺いますけれども、警察の通知を見ますと、警察の方では、これは右下三ページ、警察が把握をした場合。警察が把握をした場合には、このように書いてあります。「刑事事件としての立件が見込まれ、かつ要保護児童として児童相談所の関与が必要と認められるものについて、」と。ここには重篤な虐待というような例示にはなっていないんですけれども、これはなぜでしょうか。
○露木政府参考人 重篤な虐待が含まれることはもちろんでありますけれども、刑事事件としての立件が見込まれるものであれば、当然私どもとしては捜査をしなければならないという立場でございますので、そういう限定をしていないという趣旨でございます。
○山尾委員 ありがとうございます。
今の観点からも、重篤な虐待に限らず、もしそれが重篤ではなくても、やはりその子はその後、状況によっては警察、検察という司法のルートに乗っていく可能性がある。そうであれば、できるだけ最初から一回で聞くべき必要性があるかないかということは、それが重篤かどうかということとは直接つながりがないんですね。
なので、ちょっとその点を踏まえて、ぜひこの例示がひとり歩きをすることがないような構えを厚労省としてとっていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 ありがとうございます。
おっしゃるように、例示が束縛するようなことはないようにということは考えておきたいと思いますし、児童相談所の目的は、法的手続をとることが目的ではなく、その児童を保護していくかどうか、そこの立場で、やはり面談を行ったりとか、考え対応させていただくという、それが趣旨で対応させていただいておりますので、警察と検察の立場と児童相談所の立場は、少し違う立場で対応させていただくのは御理解いただけたらありがたいかなというふうに思います。
以上です。
○山尾委員 ここでちょっとテーマをかえようと思ったんですが、もう一度言いますけれども、今ある問題というのは、児童相談所は子供の保護ということがやはり一番のメーンにある、警察は捜査である、検察は有罪をとることも含めたやはりそれの立場がある。ただ、それぞれ立場が違うので、それを大人の都合で切り分けていたことによって、子供が何回も供述を強いられたりだとか、物理的にも場所を何回もたらい回しにされたりだとかがあったので、そういうそれぞれの目的は別だけれども、むしろ全員が子供の利益という同じ目的を共有して最初から連携しましょうねということだと思いますので、ぜひ今までの部分を副大臣の力でさらに乗り越えていただきたいなというふうに思います。
次に、面接を誰がやるのかということがとても重要なことになってまいります。
まず、ちょっと前提で法務省にお伺いをしたいのですが、この制度がスタートするに当たり、「三機関のうちの代表者が児童から聴取する取組の実施も含め、」検討するとあるんですけれども、三機関のうち誰かがやるということも当然あるでしょう、でも、三機関ではない中立の第三者がやり得る余地もあるでしょう、私はそう読んでいるんですけれども、そういった理解でよろしいですか。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、個別の事件でどのような聴取をするのかということについてをこの三機関で協議しよう、連携しようということでございますので、その過程の中でどういう形で誰に協力をいただくかということは、また協議の中の検討事項となってこようかと思います。
○山尾委員 ありがとうございます。
私も、今余り主体を定めるのは時期尚早だというふうに思っています。これからスタートするに当たって、しっかりケースを積み上げていただいて分析していただいて、どういう場合に誰が面接官をやるのがいいのかということを私たちも含めて一緒に検討していきたいなというふうに思っています。
とはいえ、当面は、日本に司法面接官なるものが制度上位置づけられていない今、場合によっては、やはり検察官や警察官や児童相談所の職員が聞き取るということが出てくるんだろうと思います。
では、これもやはり法務省にお伺いをします。
子供の被害者からの聞き取りをする検事が、少なくとも子供から聞き取ることについての専門的な研修を最低限これだけは受けていますというラインが今あるのでしょうか。
○林政府参考人 この司法面接的な手法による事情聴取、取り調べ、参考人の取り調べ、こういったことにつきましては、もちろん古くから取り組んでいたわけではございませんが、最近になりましては、法務・検察におきましてさまざまな研修等を打っております。それは、各自、経験年数に応じて各種研修をしておりまして、まずは、初任の検事には初任の研修の中で必ずそういったことを講義しますし、また、三年後ぐらいの一般研修というのがございますが、そういったところでも研修をしております。
その上で、既にこの司法面接的手法による事情聴取というのはこの通知を出す前から各地で行われてはおりまして、そういった場合にはどのようにしているかといいますと、実際にそれを担当する検察官が、自分が代表者として事情を聞くことになったときには、改めてまた、その分野の、これに非常に詳しい専門家がございますので、事情聴取に先立ちまして、その聴取の際の手法について専門家に聞いた上で事情聴取に臨むというふうな形で今対応しておるところでございます。
○山尾委員 さまざまな段階で研修はしているということなんだと思うんですけれども、実は、これはことしの五月十九日の毎日新聞なのですが、やはり、司法面接、ある地検で被害児童に配慮した質問の聴取方法を学ぶという記事が出ております。それで、ある検事の感想で、「これまで子供から聴取する機会は多かったが、質問方法などを具体的に教わったことはなかった。今後実践していきたい」、こんなふうに述べておられて、これは率直な感想だと思うんですね。
なので、今回のスタートを本当に子供のための画期的な制度に飛躍させていくために、この研修を含めてたくさんの課題があります。きょう、質問したいことのまだ三分の一ぐらいしか終わっていないのですが、まずはこうやって共有させていただいて、感謝をしたいというふうに思っております。
そして、最後に、臨時国会が開かれないということであれば、残念ながら、年内、この法務委員会がきょうで最後になるやもしれません。本当に、今国会、ことし、この司法面接も法務委員長に実際大変御尽力をいただいたと私は認識しておりますし、刑訴の議事の進め方、あるいは法務委員会の大変充実した視察、大変感謝をしております。
ぜひ、この長い国会を含めて、委員長から、これからの法務行政、そして議論のあり方について一言お言葉もいただきたいと思うのですが、委員長、よろしいでしょうか。
○山尾委員 民主党の山尾志桜里です。
岩城大臣並びに盛山副大臣、そして田所政務官と、きょうはとかしき副大臣にもおいでいただきました。ありがとうございます。
それでは、早速質問に入りたいのですが、岩城大臣のきょうの御答弁、本当に丁寧な物腰で御答弁をいただいていまして、私としては、しっかり岩城大臣の所信演説を聞いた上でそれに対する質問をさせていただいて、そして一般質疑なり個別のテーマなりに入る、やはりそういう手順をしっかり踏んでいきたいものだというふうに改めて思いました。
そういう手順が踏めていないのも、突き詰めて言えば、一番責任が重たいのは安倍総理大臣だと思います。安倍総理が、臨時国会を憲法上開くべきであるのに開かない。ただ、岩城大臣も内閣の一員でありますので、やはりこれは聞かせていただきたいというふうに思います。
私たちは、十月二十一日に、衆議院百二十五名、参議院八十四名、それぞれ当然四分の一以上をもって臨時国会の召集を要求しましたが、開かれておりません。憲法五十三条には、いずれかの総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないと書いてあります。
岩城大臣にお伺いをいたします。
このたび臨時国会を開かないことは憲法五十三条に違反すると思いますか、違反しないと思っていらっしゃいますか。
○岩城国務大臣 端的にお答えをさせていただきます。
憲法五十三条の解釈についてということでありますけれども、憲法に関する一般的解釈にかかわるものでありますので、これは、政府部内におきまして憲法に関する一般的解釈について全面的に責任を負うべき地位にあるのは法務大臣ではなく内閣とされていることに鑑み、私のお答えは差し控えさせていただきます。
○山尾委員 上川前大臣も、憲法の解釈は私の所管ではないということで、常に憲法の解釈から逃げておられました。大変残念なことだというふうに思います。
岩城大臣は、十月七日、初登庁後の記者会見においてこのように述べておられます。「法務省は、法秩序の維持、国民の権利の擁護を通して、国民生活の安全・安心を守るための法的基盤を整備するという重要な使命を帯びています。その大臣を拝命し、とても身の引き締まる思いです。」
法秩序を維持する職務の法務大臣が内閣の一員として臨時国会を開かないことを是とするならば、憲法五十三条との関係で法秩序が壊れていないことをぜひ説明していただきたいと思いますが、もう一度いかがですか。
○岩城国務大臣 重ねてのおただしになりますけれども、憲法に関する一般的解釈につきまして、私からお答えを差し上げることは差し控えさせていただきます。
ただ、内閣としての判断ということであります。それにつきまして、既に内閣官房長官等がさまざまな場面で御説明しているとおりであります。
○山尾委員 大変残念です。
憲法の一般的な解釈をお伺いしているわけではありません。実際に憲法五十三条の明文に反している。今この状態が、臨時国会が開かれていない、今のまさに現実に起きている個別の状況について憲法の明文に違反しているように読めるのだがどうでしょうか、こういう質問でございました。
それでは、もう一つお伺いをしたいと思います。これは所管ではないというふうにはお答えしないと思いますが、公平を期して言うならば、通告をしておりません。
大臣は、やはり初登庁後の十月七日の記者会見で、刑事訴訟法、まさにこの法務委員会の所管について記者さんからこんなふうに質問されておられます。「不法な盗聴をしないという担保がどこにあるとお考えか、」こう聞かれて、このときは大臣は、「私も十分に承知していない部分がありますので、よく担当者から説明を聞き、ヒアリングをした上で、しっかりと考えていきたいと思っています。」こう答えられました。
この日は初登庁の日でありますから、翌々日の九日、再度記者さんから同じテーマについて、「担当者からお話を聞くことはできましたでしょうか。それを踏まえ、現在のお考えを」と大臣は再び尋ねられました。それに対して大臣は、「残念ながらまだ担当者からヒアリングをする時間がとれないので、なるべく早い時期に直接ヒアリングをし、それからお答えさせていただきたいということでお願いしたいと思います。」このようにお答えになっております。
最初の質問の十月七日からほぼ二カ月がたとうとしております。大臣、この問題についてヒアリングをされたでしょうか。そして、それに対して、通告していませんので根っこの部分の短い御回答で結構です、御回答いただけますでしょうか。
○岩城国務大臣 おただしの件につきましては、その後、ヒアリングを当然のことながら受けております。
その上でお答えをさせていただきますが、担保の問題等もお話がありましたけれども、この点につきましても含めまして適切に運営されていってほしい、そういう思いのもとに、これから自分自身、大臣として取り組んでいきたいと思っております。
○山尾委員 中身については先ほど井出委員からもやりとりもありましたし、しっかり時間をかけて、まだ成立していない法律でありますので、これからもまたということになるんでしょうけれども、ただ、私自身の感覚で申し上げますと、この刑事訴訟法の傍受についての、不法な盗聴にはならないかという質問というのは、本当に、この法務委員会における最大の法案に対する国民の率直な懸念を伝える超基本的な質問だと思います。
例えば、農林水産大臣が新しく大臣になられて、TPPによって農家は打撃を受けないのですかと聞かれて、大臣になったばかりなので追って答えますというふうにはならないんでしょうし、例えば厚労大臣が、今回かわっていませんけれども、仮に新しくなったとして、今国会の派遣法で本当に非正規から正規への転換は進むのですかと聞かれて、新しくなったばかりなので後にしてくださいということにはならないんだと思います。
やはり刑事訴訟法については、この法務委員会ではみんなで、本当に根幹にかかわる刑事司法の大きな改革、それを改悪ではなくていいものにしたいという思いでやってきましたし、これからもさまざまな話が出てくると思いますので、改めて、先ほど申し上げた傍受のことも含めまして、ぜひ次回以降は大臣なりのいろいろな御所見をお伺いしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、きょうのテーマですけれども、司法面接を含む多機関連携ということについてお伺いをしたいと思います。これは、重徳委員もこの委員会で随分と御発言をされましたし、我が党の後藤祐一議員も極めて一生懸命取り組んでいるものであります。
皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいていると思います。この司法面接を含む子供の犯罪被害者のための多機関連携について、十月二十八日に、第一歩としては本当に大事な通知が三通出されました。それぞれ、最高検、警察庁、そして厚生労働省からの通知であります。
これもちょっと岩城大臣の言葉をお聞きしたいなと思うのは、なぜ、こういった子供の犯罪被害者に対しては、幾つかの複数の機関が、プレーヤーが連携をすることが必要だねというふうに考えられるようになったのか、その理由といいますか、背景というようなものをもしお聞かせいただけるのならばというふうに思います。
私自身が考えるのは、まず、それは何のことをイメージすればいいのかということから多くの方はスタートされると思います。司法面接とか多機関連携と言っても余りぴんときません。それをいわば五W一Hみたいな形で私なりに説明するならば、まず、ホワイというところでいうと、子供の負担軽減とその被害供述の信用性をしっかりと支えるために。ホエン、いつということでいうと、これは、子供が犯罪の被害に遭ったときに。誰が、フーということでいえば、子供を支える立場の多数の機関が。ホエアというところでいえば、できれば一つの屋根の下で。ホワット、何をということでいえば、とにかく子供の利益を中心に連携をして、子供をいろいろな機関にたらい回しにせずに支え切ること。ハウ、どのようにといえば、その中核を担う制度の一つとして司法面接というのが位置づけられるのかなというふうに感じております。
その上で、ちょっと冒頭、大臣、こういった制度がなぜ今改めて求められるようになったのか、その理由や背景について一言コメントをいただけますでしょうか。
○岩城国務大臣 このことにつきましては、まさに委員がお話しなさったとおりだと思います。子供さんの負担を軽減する、そして、同じような質問というか、何度も一人のお子さんに聞かすこと、そういった機会を多くすること自体が非常に大変なことになるわけでありますので。
そこで、これまでも検察当局におきましては、児童の事情聴取に当たり、事案の性質に応じて警察と連携するなど、児童の負担軽減等に努めてきたものであります。ただ、児童の負担軽減及び児童の供述の信用性確保、こういった観点から、警察及び児童相談所とのさらなる連携強化が必要であり、より一層の工夫、改善を加えつつ、児童への配慮を行っていく必要があることから、今般の通知を発出するに至ったものである、そのように考えております。
○山尾委員 まず、最初の理解を一にしていただいてありがとうございます。
私自身が検察官をやっていたときに、恥を忍んで申し上げますと、やはり、極めて重大な性犯罪を受けた子供も含めて、犯罪被害を受けた子供から直接被害状況を聞くということを私もやっておりました。そのときに私の頭の中に一番あった思いは何かといいますと、私の手元には警察官が既に聞き取った供述調書があります。その上で私が検事として重ねて話を聞きますが、とにかく目の前のお子さんが警察の調書と違う話をしないでほしいと念じて話を聞いておりました。
それはなぜかと申しますと、話が変わってしまうと、当然、その子供の供述の信用性が裁判で低く扱われてしまうからです。本来であれば、その子にとって一番負担のない方法でどうやって聞けるんだろうか、まずそれが一義にあるべきであるし、違う話をしないでほしいなんということを、中心に、頭に据えて聞くべき場面ではないのだけれども、そういう状況でありました。それは、こういうできるだけ一回で聞き取ろうという制度はもちろんありませんでしたし、一方で、私自身、子供から被害状況を聞き取るための専門の学びというものも特別には受けていなかったからということもあると思います。
そういう中で、やはり今回の通知の第一歩を、本当にぜひ、子供の利益を中心とした、いわゆる画期的な制度へと育てていきたいなというふうに思っているのです。
この法務委員会で視察に行かせていただきました。この子供の司法面接を中心とする多機関連携を進めているのは、アメリカそしてイスラエル、もちろんほかもあるんでしょうけれども、よく言われるのはこの二カ国です。私たちが法務委員として行かせていただいたのはイスラエルでありました。
イスラエルも、ホワイ、理由のところはほぼ同じです。
ではまた、どういうときというところからいきますと、十四歳未満の子供を中心に、そういった子供が犯罪の被害に遭ったとき。
そして、誰がということを見ますと、司法面接官。これは、警察官ではなくて、今は、厚生労働省の職員、イスラエルでいう福祉省の職員が特別の研修を受けて、司法面接官として百人規模で用意をされています。それで、司法面接官、警察官、小児科医、ドクター、ソーシャルワーカー、そして子供の心理的な負担をよりほぐすためのハウスマザーと言われる方々がいらっしゃいました。
ホエア、どこにいるかというと、診察室も面接室も一つ屋根の下にある、いわゆる子供の権利擁護センターというような場所で、これは六つあるとおっしゃっていました。二つ建設中なので、八つになるとおっしゃっていました。
ちなみに、イスラエルの人口が八百三十四万人ですので、人口百万人当たりに約一つぐらいの計算で今整備されようとしている。これが本当に最も適正規模かどうかは全くわかりませんが、同じ感覚でいえば、例えば日本でいえば百二十カ所ぐらいあるというイメージになるんだろうと思います。
何をするのかというと、やはり福祉、医療、捜査、こういった立場の大人が連携をして、ハウ、司法面接を含めて子供の権利を守る。
このやり方というのは、私が学んでいる限りは、アメリカで行われているやり方と大きな柱は一緒です、プロトコル、聞き方が違ったりしますけれども。
あとは、日本では、いわゆるワンストップとして子供のこういう被害を守っている神奈川の子どもの権利擁護センターもあります。これはNPOがやっています。ここもおおむね同じようなシステムで、今、一生懸命民間でやってくださっています。
そういう中でこういう通知が出て、私はとてもうれしいんですが、ちょっと残念なのは、まず、これは、厚労省のホームページ、そして警察のホームページ、これには三通知ともちゃんと公開してあるんですが、法務省あるいは最高検、どこを見ても、こういうことを始めるよという通知がホームページに載っていないのですけれども、これには何か載せられない理由があるのでしょうか。大臣でも事務方でも結構です。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、最高検から発出された通知につきましては、警察庁及び厚生労働省のウエブサイトには掲載されておりますけれども、それ以外のところには掲載されていないという状況がございます。
この点につきましては、法務省と最高検察庁の関係という問題から、最高検察庁が出したものについてストレートで法務省のウエブサイトに載せるということがなされていなかったわけでございますけれども、いずれにしても、今後、その掲載については検討してまいりたいと思います。
○山尾委員 ぜひお願いします。
最高検で出した通知が厚労省に載っているわけですから、法務省に載っていても全く問題ないというふうに思いますので、これはぜひ掲載していただきたいと思います。
それで、では、中身に入っていくんですけれども、ホワイ、理由のところはお伺いをしましたので、これから先、こういう制度を始めようの第一歩の中で、では、この通知を見ると、ホエン、どういうときにこういった司法面接を含めた多機関連携をしようとしているのか、これをまずは事務方の方にお伺いをしていきたいと思います。
まず、厚労省にお伺いをしますね。
厚労省の通知を見ますと、これは、四枚めくっていただいて、ページ数でいくと右下番号五になります。この通知を三つ通して見ると、要するに、最初のきっかけを児童相談所が把握した場合は連携の必要があるかどうかを児童相談所が判断する、最初のきっかけを警察が把握した場合は警察が連携の必要性を判断する、何かこんなふうになっているようなのです。
児童相談所で最初のきっかけを把握した、間々あることだと思います。では、どういうときに児童相談所は、これは警察そして検察と連携が必要だなというふうに判断をするのかということが載っているのですが、下線の部分です。「刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例など、児童相談所において、子どもの特性を踏まえた面接・聴取方法等について、三機関で協議することが必要と判断した事例」。
これは、児童相談所あるいは厚労省にお伺いをいたします。児童相談所が、刑事事件として立件が想定されるか否かを判断できるのでしょうか。
○吉本政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま御紹介のありました通知のとおり、通知におきましては、刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例など、子供の特性を踏まえた面接、聴取手法について協議することが必要と判断した事例というふうにさせていただいております。
具体的には、まず、児童相談所の方に通告等がございましたときは、初期調査というふうに申しまして、通告要件となった子供の何らかの発言あるいは寄せられた情報として、性暴力被害等を受けている可能性があるかどうか、あるいは何らかの危険が発生しているかどうかといった、いわゆる最低限のそうした把握をいたしまして、その結果、児童相談所内で、今申しましたような、協議にかける事案かどうかということを検討し、所長が最終的には判断するといったような手続でやらせていただいております。
ここで言う「刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例」というのは一つの例示でございまして、個々の児童相談所において適切に判断してまいりたいというふうに考えております。
○山尾委員 吉本審議官におかれましては、愛知県で東海初の女性の副知事ということで、つい先般まで県でもお世話になりました。この司法面接の事案についてもぜひしっかりお世話になりたいと思うんですけれども、とはいえ、今言っていただいたような内容というのは、いわゆる刑事事件として立件をするかどうかという判断要素とは随分違う切り口なんですね。
そして、恐らく、証拠の十分性だとかあるいは犯人性の問題だとかいうことは、児童相談所の方というのは当然研修も受けていないと思いますし、今の段階で受けているべき必要は、今の段階まででは少なくともそうなかったんだろうというふうに思います。なので、適切に判断しますとおっしゃられましたけれども、制度上というか職務上、なかなかそう適切には判断できないんだろうというふうに思うんです。
例示なんですけれども、こういう紙において例示というのは現場でそれなりの重たい意味を持つということも皆さん御承知のとおりでありまして、もう一つ言いたいのは、やはりこれは、子供に面接をしてしまってからでは遅いんですね。やはり、最初に子供に事情を聞く前に判断をすることが極めて重要。一度でもその子供にいわゆる被害の内容についての聞き取りをスタートしたところから子供の記憶というのはいわゆる汚染が始まっていくという言葉を使う人もいます。なので、その入り口前のところで余り絞りをかけ過ぎると、この制度趣旨が生かされないでしまう事案というのが随分出てくると思うんですね。
そういう意味で、副大臣、例ではあるんだけれども、重篤というふうに、例として挙げられているのがかなり絞られているように読めますし、そしてまた、当然、児相の人がなかなか判断しにくい立件要素が入っている。ちょっとそこの部分は、もう少し幅広に、そしてもう少し児相の職員さんが判断できるような間口で捉えていただいた方がやはりいいと思うのですが、副大臣、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
山尾委員のおっしゃることはとてもよくわかります。
ただ、児童相談所にいらした場合、私たち児相としましては、どう対応していいのか、要は、被害状況はどの程度なのか、そして、保護した方がいいのかしない方がいいのか、こういうことを本人からある程度聞き取りをしないと、やはり周りの方だけの情報ではそれが把握できない場合もありますので、これは、ですから、全てそういう被害状況を、まずは、どの程度の危険が発生しているのかということを、状況を判断しなくてはいけないということで、先ほどお話がありましたように、初期被害調査面接というのをさせていただきます。
その後、先ほど言いましたように、児童相談所長が、子供の発言を踏まえて児童相談所内の会議等で検討した結果、やはりこれは三者機関で協議する必要ありというふうになった場合に適切に判断していこうということで、今回、例示という形にさせていただきました。
○山尾委員 ちょっとこれは確認ですけれども、では、この制度がスタートしても、厚労省は、子供本人から初期被害調査という形で聞き取ることを大前提とした上で、その後に三者の連携が必要かどうかを判断する、副大臣のおっしゃることはそう聞こえたんですが、そういうことでよろしいんですか。
○とかしき副大臣 お答えさせていただきます。
子供に聞き取りをするのを前提にしているわけではなくて、被害の事実を詳細に把握するための手段の一つとして、お子さんに聞くというのも一つの方法としてあるということであります。
○山尾委員 被害事実を詳細に判断するのは、恐らくこの後のことなんだろうと思います。事務方の皆さん、うんうんと言っていただいているように私には見えるのですが、被害事実を最初の入り口で単一の機関が詳細に判断しようとするから、子供が、結局その後は、別の機関でもさらに詳しく別の切り口で聞かれる、さらに検察に行って別の切り口で詳しく聞かれる。今までそうだったから、子供から被害事実を詳細に聞くのはできるだけ一回にするために、詳しく聞く前に、事前にそれぞれの機関がそれなりに判断をして、まず連携しましょうと。連携した上で、では、子供から被害事実を詳細に聞くのは検事がいいのかな、警察官がいいのかな、児相の職員がいいのかな、はたまた、もしかしたらこれからは、司法面接官というような、何らかのきちっとした研修を受けた別の単独の専門官ということもあり得るのかな、そういうことでやっていこうというのが多分この多機関連携、そしてその中核に当たる司法面接だというふうに思います。なので、ちょっとその点はぜひ御理解をいただきたいと思います。
ちょっと警察の方に伺いますけれども、警察の通知を見ますと、警察の方では、これは右下三ページ、警察が把握をした場合。警察が把握をした場合には、このように書いてあります。「刑事事件としての立件が見込まれ、かつ要保護児童として児童相談所の関与が必要と認められるものについて、」と。ここには重篤な虐待というような例示にはなっていないんですけれども、これはなぜでしょうか。
○露木政府参考人 重篤な虐待が含まれることはもちろんでありますけれども、刑事事件としての立件が見込まれるものであれば、当然私どもとしては捜査をしなければならないという立場でございますので、そういう限定をしていないという趣旨でございます。
○山尾委員 ありがとうございます。
今の観点からも、重篤な虐待に限らず、もしそれが重篤ではなくても、やはりその子はその後、状況によっては警察、検察という司法のルートに乗っていく可能性がある。そうであれば、できるだけ最初から一回で聞くべき必要性があるかないかということは、それが重篤かどうかということとは直接つながりがないんですね。
なので、ちょっとその点を踏まえて、ぜひこの例示がひとり歩きをすることがないような構えを厚労省としてとっていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
○とかしき副大臣 ありがとうございます。
おっしゃるように、例示が束縛するようなことはないようにということは考えておきたいと思いますし、児童相談所の目的は、法的手続をとることが目的ではなく、その児童を保護していくかどうか、そこの立場で、やはり面談を行ったりとか、考え対応させていただくという、それが趣旨で対応させていただいておりますので、警察と検察の立場と児童相談所の立場は、少し違う立場で対応させていただくのは御理解いただけたらありがたいかなというふうに思います。
以上です。
○山尾委員 ここでちょっとテーマをかえようと思ったんですが、もう一度言いますけれども、今ある問題というのは、児童相談所は子供の保護ということがやはり一番のメーンにある、警察は捜査である、検察は有罪をとることも含めたやはりそれの立場がある。ただ、それぞれ立場が違うので、それを大人の都合で切り分けていたことによって、子供が何回も供述を強いられたりだとか、物理的にも場所を何回もたらい回しにされたりだとかがあったので、そういうそれぞれの目的は別だけれども、むしろ全員が子供の利益という同じ目的を共有して最初から連携しましょうねということだと思いますので、ぜひ今までの部分を副大臣の力でさらに乗り越えていただきたいなというふうに思います。
次に、面接を誰がやるのかということがとても重要なことになってまいります。
まず、ちょっと前提で法務省にお伺いをしたいのですが、この制度がスタートするに当たり、「三機関のうちの代表者が児童から聴取する取組の実施も含め、」検討するとあるんですけれども、三機関のうち誰かがやるということも当然あるでしょう、でも、三機関ではない中立の第三者がやり得る余地もあるでしょう、私はそう読んでいるんですけれども、そういった理解でよろしいですか。
○林政府参考人 委員御指摘のとおり、個別の事件でどのような聴取をするのかということについてをこの三機関で協議しよう、連携しようということでございますので、その過程の中でどういう形で誰に協力をいただくかということは、また協議の中の検討事項となってこようかと思います。
○山尾委員 ありがとうございます。
私も、今余り主体を定めるのは時期尚早だというふうに思っています。これからスタートするに当たって、しっかりケースを積み上げていただいて分析していただいて、どういう場合に誰が面接官をやるのがいいのかということを私たちも含めて一緒に検討していきたいなというふうに思っています。
とはいえ、当面は、日本に司法面接官なるものが制度上位置づけられていない今、場合によっては、やはり検察官や警察官や児童相談所の職員が聞き取るということが出てくるんだろうと思います。
では、これもやはり法務省にお伺いをします。
子供の被害者からの聞き取りをする検事が、少なくとも子供から聞き取ることについての専門的な研修を最低限これだけは受けていますというラインが今あるのでしょうか。
○林政府参考人 この司法面接的な手法による事情聴取、取り調べ、参考人の取り調べ、こういったことにつきましては、もちろん古くから取り組んでいたわけではございませんが、最近になりましては、法務・検察におきましてさまざまな研修等を打っております。それは、各自、経験年数に応じて各種研修をしておりまして、まずは、初任の検事には初任の研修の中で必ずそういったことを講義しますし、また、三年後ぐらいの一般研修というのがございますが、そういったところでも研修をしております。
その上で、既にこの司法面接的手法による事情聴取というのはこの通知を出す前から各地で行われてはおりまして、そういった場合にはどのようにしているかといいますと、実際にそれを担当する検察官が、自分が代表者として事情を聞くことになったときには、改めてまた、その分野の、これに非常に詳しい専門家がございますので、事情聴取に先立ちまして、その聴取の際の手法について専門家に聞いた上で事情聴取に臨むというふうな形で今対応しておるところでございます。
○山尾委員 さまざまな段階で研修はしているということなんだと思うんですけれども、実は、これはことしの五月十九日の毎日新聞なのですが、やはり、司法面接、ある地検で被害児童に配慮した質問の聴取方法を学ぶという記事が出ております。それで、ある検事の感想で、「これまで子供から聴取する機会は多かったが、質問方法などを具体的に教わったことはなかった。今後実践していきたい」、こんなふうに述べておられて、これは率直な感想だと思うんですね。
なので、今回のスタートを本当に子供のための画期的な制度に飛躍させていくために、この研修を含めてたくさんの課題があります。きょう、質問したいことのまだ三分の一ぐらいしか終わっていないのですが、まずはこうやって共有させていただいて、感謝をしたいというふうに思っております。
そして、最後に、臨時国会が開かれないということであれば、残念ながら、年内、この法務委員会がきょうで最後になるやもしれません。本当に、今国会、ことし、この司法面接も法務委員長に実際大変御尽力をいただいたと私は認識しておりますし、刑訴の議事の進め方、あるいは法務委員会の大変充実した視察、大変感謝をしております。
ぜひ、この長い国会を含めて、委員長から、これからの法務行政、そして議論のあり方について一言お言葉もいただきたいと思うのですが、委員長、よろしいでしょうか。